6月3日。
ウクライナ侵攻が始まって、今日で100日が経ったという。
この100日で、いったい何人の命が奪われたんだろう。
いったいどれだけの人が涙を流したのだろう。
いったいどれだけの人の涙が枯れたのだろう。
どれだけの人が故郷を、家を、家族を失ったのだろう。
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2020年2月頃から「コロナ(Covid-19)」が大問題となり、すぐに世界中に広まった。
2020年から2022年にかけて、世界は「コロナ一色」となった。
コロナの脅威が弱まってきた頃に、ウクライナ侵攻が開始された。
最初は、誰もここまで長引くとは思わなかっただろう。
けれど、この100日間で、世界中が混乱し始めている。
食糧危機が叫ばれ始めている。
今はまだ、僕ら日本人も笑ってられるけど、今後どうなるかは分からない。
石油もガスも小麦も何もかもが、今、価格高騰となっている。
平和の象徴とされる「ラーメン」さえ、食べられなくなる日が来るかもしれないんだ。
この絵本は、とても素晴らしく、学生たちにも紹介しているけど…
この本では、まだ日本は平和だ、という前提で描かれている。
でも、海外に食料を依存している日本は、世界が混乱すれば、直撃する。
この「ぼく」も、ラーメンが食べられなくなるのだ。
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今回のウクライナ戦争の根本の根本に、ロシア正教内部の分裂があった。
2022年3月20日のロイター通信の記事によると…
「ロシア正教会のキリル総主教が、ロシアによるウクライナ侵攻に高らかな祝福を与えたことで、世界中の正教会は分裂の危機に陥り、専門家から見ても前代未聞の反乱が正教会内部で生じている」
「ウクライナは、ロシア正教会にとって文句なしに重要な存在だ。ウクライナはロシア文明のゆりかごだとされており、10世紀には、ビザンチン東方正教会の布教により異教徒だったボロディーミル大公を改宗させた地だからである」
「キリル総主教は、ウクライナを自らの精神的管轄領域の不可分な一部だと主張している。すでに、トルコのイスタンブールを拠点とするエキュメニカル総主教のバルトロメオ師との関係は決裂した。バルトロメオ師は、正教会の世界における同格の存在の中で真っ先に反旗を翻し、ウクライナ正教会の自治を支持したからだ」
今回のウクライナとロシアの衝突は、僕ら日本人や他のアジア人には分かり得ない事情がある、ということは、この100日間でよく分かった。
日本の一部の論者は、「ロシアは、ウクライナだけじゃなくて、日本にも攻め込んでくる」と恐怖を煽って、防衛費を上げろと叫んでいるけど、それはかなり飛躍した話だと思う。
ロシアがウクライナに侵攻した理由は、僕ら日本人にはとうてい理解し得ない、と言うべきだろう。
もちろん、欧米VS中露のイデオロギー対立も無関係ではないだろう。「新冷戦時代」と声高に叫ぶ論者もいっぱいいる。僕も最初はそういう話かと思っていた。ウクライナがロシアとの関係を断ち、欧米との関係を強化することへの報復だと思っていた。
でも、そんな(ある意味で)分かりやすい話ではなかった。
数日前、5月28日の東京新聞社のサイトで、次のような記事がupされた。
ウクライナメディアによると、キリスト教東方正教会のロシア正教系のウクライナ正教会が27日、ロシアのウクライナ侵攻を非難し、ロシア正教会との関係断絶を宣言した。
ロシア正教会の最高位キリル総主教はプーチン大統領との関係が深く、ウクライナ侵攻も擁護。ウクライナ正教会側は、こうした姿勢を批判した上で、ロシアとウクライナに対し交渉による停戦を呼びかけた。
ウクライナのキリスト教は、カトリックと正教会に大きく分かれる。正教会も、ロシア正教会に融和的な宗派とウクライナ独自の宗派などがある。今回断絶を宣言したのは、これまでロシア正教会に融和的だった宗派。
これを読む限り、ウクライナのロシア正教に融和的だった宗派さえもが、ロシア正教会との関係の「断絶」を宣言した、ということが分かる。
簡単に言えば、「ウクライナ正教会」VS「ロシア正教会」の対立~断絶が顕在化された、ということだ。
日本のメディアではほとんど扱われない話だけれど、実際にはこの宗教的な断絶が、この戦争の背後の背後にある、と考えてよいのではないか?!
そうすると、ますます僕ら日本人には語り得ない問題がこの戦争にはある、ということになる。
「ロシアは今後、日本にも攻め込んでくる」とか、「次は北海道を狙っている」とか、そういう日本人の不安を煽るような有識者(もどき?)の言説には十分気を付けた方がいいとも思う。
もしプーチンやその取り巻きが、このロシア正教会の問題からウクライナ侵攻を開始しているとすれば、僕らが想定する話とは全く違うストーリーがある、ということになる。
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宗教上の対立による民族浄化は、ユダヤ人大虐殺を行ったかつてのナチスドイツのホロコーストともつながってくる。「ユダヤ教徒」を絶滅させるというヒトラーの信念(妄想的信念)を考えれば、宗教対立は、その民族のすべての抹殺へと向かっていってしまうのだ。
もちろん、今回のウクライナ侵攻は、それだけが理由ではないだろう。
けれど、根源的で根本的な理由となると、僕には「宗教対立」しか思い浮かばないのだ。
事実、2019年の時点で、このウクライナ正教会とロシア正教会の対立は深刻化していた。
「2019年に起きた海外の宗教関係の出来事を下記4項目に分けてみていく。…ウクライナでは、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発したロシア正教会とウクライナ正教会の対立が、東方正教会内の分裂状況をもたらした」
この正教会内部の対立と欧米VS中露の政治的イデオロギー対立が重なって、この今の戦争が起こっていると考えれば、今起こっていることの多くが(わずかながらも)理解可能となる。
更にその1年前の2018年のNational Geographicの記事では、
ロシアとウクライナの信徒を合計すると、世界のその他の正教会の信徒全員を合わせた数を超える。現在、モスクワ総主教庁が抱える1億3600万人の信徒の4分の1はウクライナ人が占め、また1万8000カ所ある教会区の3分の1はウクライナにある。ウクライナ正教会の分離は、1000年におよぶ正教会の歴史上「最悪の危機」になると見られている。
また今回の決定により、ロシアとウクライナの対立はさらに深まるだろう。どちらも教会の危機を政争に利用しているというのが一般的な見方だ。2014年にロシアがクリミア半島を強制的に併合したこと、また現在まで続くロシアによるウクライナ東部への軍事介入により、両国の関係は近年、特に悪化している。
とある。
ここにあるように、この正教会内部の対立が政治的に利用されている側面は否めない。
ただ、利用されているとしても、この正教会内部の対立がある限り、外部の人間はなかなか口をはさむことができなくなるのだ。
欧米がなぜ、今回の戦争に消極的なのか。世界が冷たい目をロシアに向けているのに、それを無視してまでウクライナ侵攻を執拗に続けるのか。
単に「領土」の問題ではないし、ウクライナの「欧米化」の問題でもない。
ウクライナが、ウクライナの人々が、「ロシア正教」を否定することが、ロシア側には耐えがたい、ということなのだ(と考えると、色々と合点がいく)。
この解釈が合っているのかどうかは分からない。僕の思い過ごしかもしれないし、勝手な見立てかもしれない。(そうあってほしいとも少しは思う)
ただ、世界中を敵に回してでも、100日もの間、戦争を続けていくのには、それ相当の「理由」や「動機」がなければならないはずだ。
その動機がもし「正教会内部の対立・分裂」だとすると、日本も欧米もやはり口出しできないことになる。
この機会に「正教会」の歴史について学んでみるというのも、悪くないかもしれない。
僕ら日本人にできることは、一刻も早くこの戦争が終わることを願い続けることだろう。
願うこと以外にできることはない、、、か。。
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東方正教会とは?!
「東方正教会は元来、古代教会の継続であり、原始キリスト教の精神に忠実である。東方正教は西のキリスト教に比べて、義よりも愛、十字架よりも復活、罪よりも救いを重んずるといわれる。神人一体であり、神人懸隔ではない。西のキリスト教が聖と俗を区別し、精神を物質の優位に置き、政教分離の傾向があるのに対して、東方正教は聖俗一致、霊肉一致、政教一致が特徴である。また、カトリックが煉獄(れんごく)を認め、マリアの無原罪説をいうのに対して、正教では煉獄を認めず、マリアの無原罪説をいわない」
「カトリック神学が思弁的、体系的で、神について知的に学ぶのに対し、正教では信仰体験即神学である。キリスト教文化のなかに生きて神を体験的に身をもって学ぶのが東方正教神学である。そして正教では、神学は論文としてよりも、聖歌、イコン、教会規則、主教たちの書簡や説教の形で提出される。静寂主義(ヘシカスムHesychasm)は、アトス山出身の聖パラマス(1296―1359)が唱えた。静寂のなかで「イエスの祈り」を唱え、神を瞑想(めいそう)する修道法で、ビザンティン神学を代表する」
この動画もすごく分かりやすいです!
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こういう本を読むことで、見えてくることもあります。