先日、銀薔薇(SILVER ROSE)の「ラビリンス」をご紹介したが、その銀薔薇とほぼ同時期に超活躍していたバンドが、ジルドレイ(Gilles de Rais)だ。ジルドレイなくして、ヴィジュアル系は語れない。
ジルドレイの初作品は、「DAMNED PICTURES」(MOON DROPS)という作品で、かなりゴシックよりなサウンドであった。「妖美・華麗なゴシックサウンド」というのが当時のフレコミだった。
だが、彼らはその後エクスタシーレコードに所属を移し、92年、上の『殺意』というアルバムをリリースした。このアルバムが大ヒットし、93年にメジャーデビュー。94年には彼らの傑作「CRACK A BOY」をリリース。95年に解散。まさにヴィジュアル系誕生の一時代をかけぬけたバンドだった。
殺意は、その当時大人気だったZI:KILLのCLOSE DANCEをモチーフにしていたのは、上のジャケットからも推測できる。michiko kawataさんという方が書いている絵は、CLOSE DANSEのジャケットと系統としてかなり近い。この手のジャケットは後にも先にもこの二作品のみだ。
ジルドレイの魅力は、なんといってもJOEのダークな声と、安定感のあるたしかな演奏力にある。メンバー全員メタル出身ということもあって、当時としては破格の演奏力を誇っていた。とにかく巧かった。そして、曲が速かった。勢いがあるっていうか、パワフルっていうか。ジキルよりもパンク&ハードコアの要素が強かったかなと思う。Damned Picturesはかなりゴシック&ポジパン寄りだったけど、殺意はまさにヴィジュアル系!って感じの仕上がりになっていた。
今、この作品を聴くと、現在のヴィジュアル系バンドの曲がいかにテンポが遅いかが分かるだろう。とにかくスピーディーだ。スピーディーで激しくて、で、安定感がある。歌詞は、結構現在でも通じるようなちょっといっちゃった感じ。「迫害された頭の中 拘束されない心の底 心身分裂症の声で 裁かれる前に裁きかえす」って・・・ 「アルジャーノに花束を」の影響かしらって感じだが、今でも通じるんじゃないかな。
あと当時のアルバムは、お約束事として、1曲目が1、2分程度の短くて激しい曲!っていうのがあった。BUCK-TICKのICONOCLASM、ZI:KILLのTERO、LUNA SEAのFATEなど。本作のSUISIDEはまさに、TEROとFATEに並ぶショートタイムファーストソングの代表傑作と言えるだろう。
本作の最大の見せ場は、崩れ落ちる前に・・・~巴里祭~FOLLOW MEの三連発だろう。当時のジルドレイの勢いとセンスが圧縮されているように思う(崩れ落ちる前に・・・はBOOWYのマリオネットそっくり~!)。最後のPEOPLE OR PEOPLEのダークなベースラインは今聴いてもたまらない。ぞくっとする。
若いヴィジュアル系ファンの人には聴いてもらいたい一枚であります。