Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

『挫折』に弱い僕

僕はずばり、挫折した人が好きだ。好きだというと語弊があるかもしれない。挫折した人を目の前にすると、心が揺れて、無条件で応援したくなる。

最近、ある人が挫折をした。

その人は、これまでずっと順風満帆に人生を送ってきた。それなりに苦労はしたらしいが、出口なしの八方塞の状態に立たされたことはなかった。未来が閉ざされ、今の状況を生きることもできず、これまで培ってきたものすべてがガラリと崩れていく、そういう経験をしてこなかった。・・・とりあえずその場をしのいできた。激しい努力をすることなく、するりと人生の壁を難なく潜り抜けてきた。ちょっとした興味と些細な好奇心だけで楽しく生きてこられた。周りの人間に合わせて、それなりの笑顔を浮かべて、その場しのぎの対応をすれば、なんとかその場をやり過ごすことができた。周囲の環境も良かった。時代も、「ゆとり」の恩恵を与えてくれた。

だが、その人は、不意にも、そうした生き方すべてが通用しないような状況に置かれてしまった。自分の生き方の甘さ、もろさが一気に露呈してしまった。今までの人生すべてが否定されてしまったに等しいほどの事態だ。そして、これまで描いていた夢がすべて崩れてしまうほどの状況に立たされたのだ。

その人は、その危機の最中、そのままなんとかやり過ごすか、それとも、そのまま崩れ落ちてしまうか、という二者択一を迫られた。なんとか頑張ればその場をやり過ごすことはできそうだ。しかし、「それでいいのか?」というもう一つの声(良心の声)も聞こえてきた。その人の置かれた状況は、なんとかやり過ごすには(いろんな意味で)ハードルが高すぎた。

そして、その人は、苦悩し、涙し、葛藤し、追い込まれていった。散々悩んだ挙句、その人は、自ら、自分の人生にリセットボタンを押すべく、挫折の道を選んだ。その場にいた僕は、ただただその人の姿を見ることしかできなかった(いや、その姿を直視することはできなかった)。

しかし、苦しみぬいた後の決断、手にしかけた夢を自ら手放すという決断、その決断をした後のその人は、すがすがしい表情を浮かべていた。もちろん心情的には全然すがすがしいわけではない。心中は決して穏やかではない。きっと夜、悔しくて、きっと眠れないだろう。自分を責めるだろう。「なぜもう少し耐えられなかったのか?」、と自問するだろう。苦しみから解放されたと同時に、重い十字架を背負わされたような・・・

けれど、その人は、これまでの人生で初めて、自分の意思で自分の人生の選択を行った。これまでなあなあで済ませていたことをしっかりと悩み、苦悩し、考え抜いた。失うものは多かったが、また、それ以上に得るものもあった。その人は言った。「人生でこんなに迷い、苦しんだのは初めてですよ。でも、また、自分の人生で、自分の意思で何かを決心することも初めてでした」、と。

何かを失うことは、すべてを失うことではない。
何かを失うことで、別の何かが得られる、ということもあるのだ。

僕は、やっぱり挫折した人間が好きだ。挫折は、人を弱くさせる。そして、その人自身を完全に否定する。しかし、逆説的ではあるが、それによって、人は強くなり、そして、自身を肯定する可能性を手にするのだ。そういう人間には、目に見えない深いやさしさがある。無力さを知っているがゆえのやさしさがある。つぶれたことのない人間のやさしさには、説得力がない。崩れたことのない人間の言葉には、重みがない。どれだけ利口になって計算高くなって人をまるめこめたとしても、人からの信用を得ることはない。

逆に、挫折した人間は、そういう説得力や重みをもった言動を行う可能性を手にしているのだ(とはいえ、そのまま屈折していく人も少なくないのだろうが・・・)。自身の挫折をその後の人生にどう反映させるか。この問いは、挫折後に考えなければならない絶対条件であろう。はい上がるのか。朽ち果てるのか。

僕はその人を心から応援したいと思う。新たな出発を歓迎したい。一つのことに躓いたからといって、すべてに躓いたわけではない。何度躓いても、また何度でもまた始めることはできるのだから。これまでの生きかたとは違う別の生きかたを見せてほしいと願う。

コメント一覧

さと
脱退のシーンは、なんだか想像するだけで悲しいです。ユキヒロはどんな気持ちでいたのかなぁとか考えると・・・
でも当時のユキヒロを見ていたなんて本当に羨ましいです!!

デランジェ!ダイイン!おぉ~私絶対ファンになってましたよ(笑)

フラメンコいいですよね~ひとつひとつの動きの意味やスペインの文化の話もしてくれて楽しかったです♪2日間のワークショップだったんですけど、2日目にはギターの生演奏で踊ったんですよ♪全然ついていけませんでしたけど(^^;
ハウスは、足のステップが主な動きのダンスで、基本的にハウスの音で踊ります(と私は捉えています・・)。TRFのSAMが踊っているのがハウスです!難しいんですけど、できるとかっこいいんですよー!

小さい頃母の影響で古い洋楽はよく聞いてましたけど、あまりロックっぽいものはなかったように思います。自分で意識してロックを聴いたこともなかったですし・・むしろ自分はロック、というかバンドとか嫌いなんだろうなぁと思っていました(笑)
なので、ほんとまだまだ知らないことだらけです。ジャンルもよくわかってないですし・・只今猛勉強中でございます(笑)
kei
yukihiroって、ホント、心が優しい人なのかもしれないですね~~ 過去を良く捉えられるお方なんですね。。。 僕はyukihiro、ジキル脱退のシーンをじかに目撃したのですが、、、あの時は本当にショックでした。彼のドラムはホント類稀の心地よい音でしたからね~~

その当時のバンドは、バリバリV系でしたよ♪ デランジェっぽかったかな~(今思えば)。あと、よく人からはdie in criesみたいと言われておりました(苦笑) ヴィジュアル的には初期クレイズに近い格好をしてましたね~~(あ~懐かしい~~)

フラメンコダンス?!?!?おおお!! 僕、フラメンコ大好きなんです。実際にスペインで見たこともあります! なんか哀愁のあるダンスでひきつけられましたよ~~ ハウスの音楽に合わせたダンス??ハウスダンスっていうのがあるんですか???

さとさん、昨年の10月まで、本当の本当にロックは聴いていなかったんですか???
さと
ユキヒロはジキルもダイインもすごくいいバンドだったと言ってました。素直に嬉しいですよね。

おぉぉ~凄いバンドだったんですね!でも人間関係はほんとに難しいですね。学生だと進路も大きな悩みですもんね。んん~でももったいない!音楽はどんなジャンルのバンドだったんですか?

ダンスは~結構いろいろやりました。最初はロック(LOCK)というダンスに興味があったんですけど、どんどんジャンルが広がってジャズやハウス、創作ダンスもやりました(笑)個人的にフラメンコやってみたり(基礎を習っただけですけど)。今はハウスが一番すきです。
ということなので私、高校生の頃はバンドに一切興味なかったんですよ!高校というか、正確に言うと去年の10月まで(笑)
kei
やっぱりその脱退理由ですか・・でも、yukihiroが言っているんだから間違いないですね。。。バンドもやっぱり人間関係(長年やっていたのでよく分かります)。合う合わないっていうのもありますよね。

僕も19歳の頃、すっごいいいバンドを組んだんです。ファーストライブでワンマンできて、一発目からヘドバンがあって。。。メンバーも(ボクを除いて)超イケメンぞろい。ボーカルは超二枚目でMCも超うまい。ベースは一郎、成一兄さん系の美顔。ドラムはジキルのエビちゃん系。(ボクはさておき、苦笑)。

でも、ベースが色んな事情で脱退してしまい、新しいベースが入ったんだけど、僕が苦手だと言って去ってしまい・・・ ドラムも就職活動に追われて脱退、、、その後もメンバーが入れ替わり立ち代りで・・ ホント後悔しています。。。

ダンサーですか?!?!?(超ビックリ) どんなダンスですか?J-POPのバックダンサー? 社交ダンス? バレエ系?? いや~、ビックリです。。
さと
私もこの記事を読んで、よく考えている内容だったので、思わず・・

脱退の理由は・・私ももともとその噂を知っていて、でもあまり信じていなかったんですが・・どうも本当みたいです。
「確かTUSKが辞めるって言い出したんですよ。でもTUSK辞めちゃったらZI:KILLなくなっちゃうし、どうしたらバンドに残ってくれるんだ、ってなったら、俺がいなきゃ残るっていうから・・・・・・そんじゃ俺辞めるわって」
ユキヒロ自身が雑誌で話していました。音楽性のズレが原因だったようです。いい音楽を作りたいと思うが故・・しょうがないことですよね。

中学の先生ですか~今の中学生は、なかなか手強そうですね(汗)でも、教える・伝える立場を目指していたのは変わらなかったんですね。夢に向けて行動を起こすのは、凄く大変で勇気がいることですよね。大切な夢ほど、挫折したときのダメージは大きいですもんね。・・・やっぱり「その人」のように次に繋げられる人は凄い!

私は目指していること・・・ん~実はちょっとダンサーとか・・(笑)高校の部活で踊っていた程度なんですが。あまりにも現実味がなさすぎて、本気では考えられません!ただ趣味として続けたいという気持ちはあります。すご~く小さな会場でもいいから観客の前で踊りたい、というのがささやかな夢かもしれないです(^^;と思っていたのに、バンドの方々にどっぷりハマってしまったので(しかも80~90年代の笑)全然踊ってないですねぇ・・・
kei
またまたのレスありがとうございます!(この記事は心を込めて書いたのでレスをいただけるととっても嬉しいです!)

「その人」、ホントいい方向に進んでもらえたら、と祈っています。若いときの傷はそれほど深くないですからね、、、

あと・・ですね~~ ユキヒロ、ジキル脱退の理由って?!?! メンバーの一人が、「yukihiroが辞めないなら俺が辞める」っていったことですか??(これはあくまでも噂なんですが) いずれにしても、辞めないでいてくれて本当によかったです。

僕も人間ですし、これから来るであろう不安はいっぱいありますよ~~ 親が死んだ時、ちゃんとしていられるだろうか?とか。自分が重い病に罹ってしまったことが分かった時、きちんと生きられるだろうか?とか。。。本当の窮地って、人生の節目節目に幾つもあると思うんですよね~~ その時、自分はしっかりしていられるのだろうか?って。。。

今の仕事は、、、どうなんでしょう?! 僕はホントは中学校の先生になりたかったんですよね。。。大学三年くらいまでは目指していたんですが、、、僕らの頃って「就職超氷河期」と言われていて、全然教師の採用がなかったんですよね。。で、もともと本を読んだり何かを書くことが好きだったので、大学の先生も悪くないかな?!と思って、大学院に進学しました。

だから、最初から目指していたってわけじゃないんですよね。。。ただ、若い人たちに力を与えたいっていう気持ちは変わらないですね~~ 祐スピリットを学生たちに日々伝えています(笑)

さとさんは何を目指しているんですか?あるいは、何を目指していましたか??
さと
同じぐらいなんですか!凄い方ですね。これからの人生にプラスになるといいですね。

大学中退してたんですか!?でもしてなければ学生でありながらジキルの活動してたことになりますね(笑)私はユキヒロを全然知らなかった頃、「ラッキーな人だなぁ」って思ってたんです。ラルクに入れて運良かったなって。でも全然そんなんじゃなくて、本当に「挫折」を味わってきた人だったんですね。ジキルの脱退は・・理由を知ったときは凄くショックでしたけど・・・
確かにドラムを続けているのは凄いことですね!ジキルを辞めた時、音楽を辞めることも考えたみたいですね。続けていてくれて本当によかった(涙)


keiさんも悩みますか?なんだか嬉しいです。「若いからね」って片付けられちゃうと凄く悔しいので。

いや~でもkeiさんのブログを読んで凄いな~ってよく思っていますよ。keiさんは今のお仕事、ずっと目指してたんですか?


kei
こちらへのコメントありがとうございます!

「その人」、さとさんと同じくらいの年の人なんですよ! 見た目はいたって普通の子です。「なんで自分が・・・」って思ったらしいです。

yukihiroもある意味挫折の人かなって思います。今でこそラルクで活躍していますが・・・ ジキルの前にたしか大学中退?!でしたっけ? で、ジキルの脱退、これもすごい葛藤があったと思われます。ダイインの解散・・・ 決して順風満帆ではなかったですよね。でも、すごいのが、ドラムを辞めなかったこと。彼の世代で、まだ現役トップランナーで活躍している人ってほとんどいませんからね。

「私って何しているんだろう」・・・

若さゆえの悩みかもしれませんが、人間にとってとても大切な(かつ深刻な)悩みだと思います。

僕も恥を隠さず言えば、32になって、「何してんだろう・・」って思っています。「こんなんでいいのかな~」って。

で、ちょっと考えたら、別のこと考えて、忘れちゃうんですよね。。。

面白いですね~ 人間って。。。
さと
こちらにもコメントさせていただきます。

私は、まだ20年しか生きていませんが、「その人」と同じようにここまで人生を歩んできました。なんとなくうまくやってきたなぁと。なので、本当に窮地に立たされた時に、自分がどうなってしまうのだろうと、不安になります。挫折してそのままズルズルいってしまいそうな・・・


私はラルクやジキルやルナシー、あの時代の人達の生き様を知ってから悩むことが増えました。特にユキヒロ先生なんですが(結局それ笑)自分のやりたいことを貫き通してきた人を知り、私は何してるんだろう?と。若さ故の悩みなんでしょうけど(^^;
こんなことを考えていながら、結局いつも通りのほほ~んと過ごしているんですけどね(笑)
話がそれてしまいました。すいません!
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