ナイトメアの最新アルバムが5月にリリースされた。ある意味、ナイトメアの今後を左右する重要なアルバムになっていると見ていいだろう。アニメのタイアップ曲である程度のブレイクを果たし、多くの新規のファンを手に入れた。そのファンたちの心を奥底からつかむかどうかはこのアルバムにかかっている(と言えるだろう)。
01.パンドラ
かなり妖しげな曲。最初の出だしで、「え?ほんとにナイトメア?」と思ってしまったほどに雰囲気がいつもと違う・・・ サビはナイトメア王道かな。今回のアルバムではyomiは裏声を多用している。この曲でも妖しさと淫靡さを表現するために裏声を使っている。楽曲的には結構起伏が激しい曲かな。ギターの音は相変わらずって感じ。ギターの音がさらにソリッドになっているくらいかな。
02.DIRTY
シングル曲。この曲をこうやって二曲目で聴くと、今回のアルバムのコンセプトがうっすらと見えてくる。これまでのナイトメアのイメージをしっかり保持しながらも、ちょっとアダルティーになっていこうとする姿勢が見える。ギターソロは圧巻だなぁ。この曲ってどれくらい売れたんだろう? 内容的にはかなりいいと思うんだけど・・・
03.the LAST SHOW
今回のアルバムの中でも一番個性的な一曲?! 超切なくてかっこいいサビで始まる。イントロでは、ホーンの音とスッタスッタスッタというシャッフルビートがすごく心地よい。快速ビートだ。この曲も勢いはあるんだけど、ちょっとアダルティーな印象を受ける。サビ後~ギターソロのブレイクがこの曲の聴きどころ。ギターとホーンの掛け合いが面白い。僕的にはこの曲大好き。こういう曲に弱いんだなぁ。切なくて妖しくてアダルティーでテンポが速くて毒々しくて。「衝撃的なラストシーン」ってところのメロディーがグッとくる。
04.TrickSTAR
これまたカッコイイじゃないか。この曲はドラムしか聴いていないなぁ。カッコイイ。曲もすごく熱くてクールでカッコイイ。いつかの黒夢の雰囲気をもちつつも、彼らの大好きなLUNA SEAのかっこよさも感じさせつつも、ネオV系サウンドになっている。サビのメロディーはちょっと斬新的かも。サビ後の妖しいブレイクがちょっとたまらない。時計の秒針の音が・・・
05.メビウスの憂鬱
これもシングル曲ってことでいいのかな。DIRTYの二曲目。ちょっとありきたりなメロディーだけど、新しい雰囲気をもっているので、新鮮に聴こえてくる。裏のピアノ/シンセの音が音の厚みを作っている。これもシャッフル曲。今回のアルバムのイメージが「SHOW」とあって、どことなく現代版の「踊り子」って感じもしなくもない。(ただナイトメアだとエロティックさがないんだよなぁ~ どうしてだろう?)
06.このは
これは以前にレポしたので。。。やっぱいい曲はいい曲なんです。実はこの曲がナイトメアの転換曲?!
07.レゾンデートル
これも以前にレポしたので。。。このアルバムで一番古い曲になるのかな。こうやってアルバムで聴くと、一番これまでのナイトメアっぽいなぁ。ギターリフはほんとカッコイイ。
08.WORST
これまたゴージャスな一曲。イントロでいやらしい息が響いていて、やはりエロティックさが今回のコンセプトに含まれていることがうかがえる(でも、全然エロティックじゃないところが・・・)。yomiの声がカッコよすぎるからかなぁ。この曲もやっぱりアダルティーな感じがする。少年が(本当に)大人になろうとしているって感じかな。「時分の花」でいることをやめようとしているのがひしひしと伝わってくる。
09.ジャイアニズム罰
今作のジャイアニズムは、「おお、こう来たか!?!?」って感じの出だしだった。Aメロはナイトメアには珍しいラップ調。BメロはV系王道のデスボイスコーラス入り。サビは一気にスパークし、スピーディーでメロディアスに。ソロのギターの暴れぶりにはビックリ。また、何気にいいことを言っているんだな。「他人より自分がどう在るべきか見定めたほうがいい」って。なるほど。
10.ジェネラル
この曲は面白い。ちょっと実験的?! 歌詞が対話になっていて、考えさせる。内容的には悩める若者(ヤングアダルト)の苦悩って感じがする。「いつから仮面を被ったのかな。ボロボロすぎてもう素顔が隠せない」。いいじゃない。「真夜中の東京」ってところが、彼ららしくていいかも。曲の展開も結構唐突で面白い。最初はメロウな曲かと思っていたら、いつの間にか・・・
11.White Room
この曲も不意打ちをくらうような一曲。一曲の中での展開が激しくて、面白い。この曲の聴きどころはLUNA SEAチックなギターソロ。思わずSUGIZOとINORANを思い浮かべてしまった(苦笑)。曲的には「これぞナイトメア!」って感じ。サビはなんかナイトメアにありそうでなさそうで、ありそうで・・・ ラストのスピーディーなドラミングは聴きどころ!
12.cloudy dayz
これも古い曲になるのかな。本作では一番ポップな曲で、一番重くない。でも、あくまでもナイトメアの中でのポップさであって、一般的には暗い曲(汗)。ナイトメアのポップソングと考えていいのだろう。
13.夜想曲
美しいギター音で始まるエンディングらしい壮大なバラード曲。エンドロール的な曲だ。が、ただのバラードにならないのがナイトメアなのだ。最後まで楽しませてくれる。
【総評】
正直なところ、ナイトメアの楽曲に僕は<倦怠>を少し感じている。今回のアプローチは5人のメンバー以外のところで面白いところがあった(ホーンやキーボードなど)。だが、楽曲的にはかなりパターン化しつつあって、あまり面白味を感じなかった。決して曲のクオリティーは低くない。彼らももうメジャーで活動を始めて何年も経っている。演奏力もバンドの表現力もYOMIの歌唱力も申し分ない。なのだけど、どこかで「もういいや」と感じさせるようなマンネリズムを感じるのだ。そう、かつてのLUNA SEAのように。
前作もそうだったのだが、似たような曲が多すぎるのが一番の問題なのかもしれない。色々と興味深いアプローチはしているのだが、サビになると(これだけV系を聴いている僕でも)何の曲を聴いているのか分からなくなるのだ。YOMIの声が独創的すぎるっていうのもあるだろうが、メロディーのバリエーションが限られすぎていて、退屈を感じさせるのかもしれない。
ナイトメアももうそろそろ中堅バンドになりつつある。時分の花でいることはできなくなってきた。ファンが一気に集まる時期を越えて、(厳しい言い方になるが)ファンが去っていく時期に差し掛かってきている。ファンは「倦怠」すれば離れていく。ファンは予想以上に冷たいものだ。でも仕方ない。ファンだって自分の人生があるのだから。ナイトメアも岐路に立たされている。まさに「誠の花」になるために。そのためには、このままではダメなのだ。どこかで、かつてのジキルや黒夢やディルがやったように、一度自分たちの在り方をぶっ壊す必要があるのだ。・・・その必要はないかもしれない。GLAYやLUNA SEAのように自分たちのスタイル(世界観)を保持しながら、ゆるやかに成長し続けてもいいのかもしれない。けれど、ナイトメアの限界はたしかに感じられる。
いいバンドだけに、ちょっと心配になってしまうkeiなのでありました。