最近、都内の新店への関心が薄れつつあります。その理由の一つは、千葉に住む僕にとって、都内の新規ラーメン店の数の多さについていけない、ということです。都内の新店の数は、半端ないです。とてもじゃないけど、ついていけない。情報量が多すぎて、どこからどう食べていっていいのかが完全に分からなくなりました。それから、「新店」そのものへの関心も薄くなってきっています。一ラーメンブロガーとして、「新店情報」は、とても重要な要素です。「雑誌よりも早く」というのが、僕の中にあって、どこよりも先にupしたいという欲求がありました。が、その意欲もなくなりつつあります。それよりももっとその根底には、都内のラーメン店への不信もあるように感じます。都内のラーメン店で、心から感動できるお店は本当にあるのか?、と問うようになってきました。もちろん、素晴らしいお店がいっぱいあることは分かります。でも、「僕にとって」という視点に立つと、少し変わってきます。どのお店に行っても、店主さんと触れ合う余裕はないですし、店主さんが誰なのかも分からない… 千葉で食べ歩く僕としては、そういう店主さんとの語らいが全くないというのは、いささか寂しいのです。
けれど、それは、自分がそういうお店(ふれあいのないお店)に行くからであって、都内にもそういうアットホームなお店はまだまだあるのではないか?と思うに至ったわけです。「新店情報」に自分自身が埋没していて、自分から動こうとしていなかっただけなのかもしれません。「いいお店を探す」という一番大切なことを忘れ、情報の受け手となって、ただただその情報を追いかける、それに疲れたんだと思います。
そんなことを考えながら、巣鴨の町を散策しました。なんとなく、巣鴨~千石あたりにラーメン店があったよなぁ~なんて思いながらぶらぶらしていたら、ありました。それが、創業50年という「千曲軒(ちくまけん)」でした。もう、軒先を見ただけで、震えましたね。「おお!! こういうお店を僕は求めていたんだ!」って。「ラーメン」ののぼりは立っていたけど、のれんには、「中華料理」の文字が。そして、レトロな字体で、「ちくま軒」と書いてあります。うほほ~い☆
店内に入ると、ちょっと怖そうなおじいちゃんときびきびとした女性がいました。ご夫婦でした。おじいちゃんというと語弊があるかもしれませんが、御年75歳。50年間、ラーメンを作り続けてきた大ベテランの店主さんでした。とても寡黙そうな方でした。都内とあって、色々と取材依頼が来るそうですが、その多くは断ってきたそうです。奥様曰く、「常連さんに迷惑をかけたくないから」とのことでした。素敵です(キラキラ)。店主さんも、決して怖い方なのではなく、昔気質の方で、まさに「職人」という感じでした。
メニューはいっぱいあります。洋食も結構ありました。ラーメンにしようかなと思ったけれど、奥様曰く、「うちの人気おススメメニューは、肉そばよ」、とのことでしたので、肉そばをいただきました。
他のメニューとは別に、肉そばだけ、こんな風に掲げられていました。
肉と野菜を炒めたものがラーメンにどかんと盛られます。通常のメンマやのりやチャーシューはなく、その代わりに、豚肉、キャベツ、もやし、ニンジン、しいたけ、たけのこなど、たくさんの野菜をラーメンと一緒に味わうことができます。この野菜炒めのせいか、あっさりとしたラーメンなんですが、ジャンクでワイルドで味わい深いラーメンになっていました。シンプルに、野菜炒めラーメンなのですが、これが旨かった。餡になっていなくて、サラサラスープになっているのもよかったと思います。スープは、鶏ガラ、げんこつ等を使用していますね。それに、わずかながら、魚介の風味も感じられます。煮干しがほんのりと効いているようでした。
麺も、昔ながらというわけではなく、コシのあるやや太い麺になっていました。スープとの相性もよく、気持ちよく最後まで食べることができました。
とにかくボリューム満点で、江戸っ子の胃袋を完全に満たすような感じでした。都内のラーメン=最先鋭と思い込んでいたのは、自分自身だったんだ、と思わされました。都内にも、こういう歴史があって、店主さんの顔の見えるお店はまだまだいっぱいあるんだ、とも思わされました。これまでも、そういう老舗店に行っていないわけではありません。が、僕が主に行っていたのは、既に名実ともに極めて有名なお店ばかりでした。だから、店主さんとの素朴な交流ができなかっただけなんですね。都内にある普通のお店の普通の何気ない会話は、やろうとおもえばできるんです。
考えてみれば、都内のラーメン情報って、そのほとんどが「新店」です。けれど、その新店も、数年もすれば、情報の価値が弱まり、ほとんど雑誌・メディアで取り上げられなくなります。その中に埋もれながら、しっかりと、着実に営業を続け、腕を上げているお店はたくさんあるんです。と、同時に、表舞台に出ることなく、けれど、着実に地元の人や常連さんに愛されているお店というのもたくさんあるはずなんです。自分が都内に住んでいたら、そういうお店をたくさん巡りたいなぁって思いますね。
千葉に限らず、どこにおいても、中堅~老舗店を巡るのは、とても楽しいことです。センセーショナルではありませんが、そこに歴史、物語、背景があって、そして、店主さんや奥様とのふれあいがあり、対話がある。そういうお店こそ、今の自分が一番求めているお店なんだろうな、と思います。
お店を出るときに、奥様に、「また近くに来たら、是非食べにいらっしゃってね」と声かけられました。そういう何気ない言葉に、僕はうるっと来てしまいます。機械的に「ありがとーございましたーぁ」というのではなく、目の前にいる「自分」という客に呼びかける温かい言葉。そういう言葉を与えてもらえることも、またフリークの喜びなのです。
結局は、お客さんの一人ひとりを大切にできるお店が素敵なお店なんですよね。そのためには、「行列」は必要ないんです。ま、金儲けがしたいなら、行列は必要でしょうけどね。行列はできないけど、ほどよくコンスタントにいつもお客さんがやってくる、そして、会話があり、アットホームな空間になっている、そういうお店がやはりラーメン店の理想なんじゃないかな、と思う今日この頃です。ラーメン店主として、どう歩むべきか、それは個々人によって答えは様々でしょう。けれど、全部のお店が、「金儲け」=「ラーメンドリーム」となったら、それはとてもさみしいことだと思いますね。
色んなことを考えることができました。ご馳走様でした!