2008年のV系シーンを制覇するのはデルヒかも!?
久々に、心の奥底から「こいつら、すげーぞ」と思ったバンドと出会った。美形で、ダークで、技巧派で、世界観があって、クールで、センスのあるバンド。それが、Four Rebel Seeds open the Attack of Neo Visual Assaultと銘打つDELUHI、デルヒだ。
メンバーは、Vox. Juri(ジュリ)、G. Leda(レダ)、B. Ryo(リョウ)、Ds. Sujk(スーク)の4人。結成は2008年1月。池袋CYBERを拠点に活動中。
デルヒは、(音源を聴く限り)しばらく停滞気味のV系に一石を投じる攻撃的なバンドになり得るポテンシャルをもっている。現在発売されているフールズメイトでも(小さくだが)紹介されており、彼らがシーンの台風の目になることも必至だ。CDを聴いて確信した。
ゴリゴリでガツガツで巧みでインパクトのあるギターを弾くLedaを中心とした4人バンド。まだ若そうだけど、ギターの技術はなかなかのものだ。ガルネリウスのSyuまでとはいわないが、かなりメタルに近いギタープレイを聞かせてくれる。
しかも、このバンドのボーカルのJuriの声が抜群に良いのだ。Juriの歌は、それだけでも聴く価値のある素晴らしいものになっている。上手いだけじゃなくて、声質そのものが良い。V系に合った声といっていいのかな。しかも、シャウト/デスボイスがかなりハイグレード。あのCradle Of Filthのデスボイスにかなり近いすごいデスボイスを聴かせてくれる。 ディルアングレイ系のシャウトじゃないところがポイント◎! 彼の声は、素質としても、才能としても、実力としても、極めて卓越している。
また、ベースのRyoもカッコよくて、音もゴリゴリしていて、存在感をかもし出している。ドラムの音はちょっと小さめで残念だったが、かなりいい音を出している。リズム隊のグルーブがもっとあったらいいかなぁと、少々残念。だけれども、その辺のV系とは比べものにならないレベルのバンドなので、是非とも注目したい。
本作SurveillanceはSE1曲と4曲の計5曲入りのミニアルバム。はっきりいって今年結成されたばかりのバンドとは思えないほどの出来になっている。ありえん! これがファーストっていうのは本当に驚くばかり。
01. ~Surveillance~
最初からビックリさせられる。CDを間違えたんじゃないか、と思うほど、V系っぽくないオープニングSE。ちょっとゴシックっぽいかな。西洋の教会に舞いこんだような気持ちになるような、北欧の合唱曲っぽい感じ。まさに現実とデルヒの世界との臨界点だ。そして・・・
02. Two Hurt
キターーー! ハイスピードキラーチューンだ。ギターのゴリゴリなリフがたまらない。メタル好きでもいけるほどにゴリゴリだ。Aメロは疾走感溢れるV系メロディー。Bメロでデルヒらしいデスボイスとメロディアスなメロディーが掛け合いになる。ギターソロはかなりカッコイイ。腕は確かなようだ。ヴェルサイユやモアディスモアよりもストレートなV系ロックサウンドだけど、かなりクラシカルな感じがする。ありそうでなかったポジションにいるバンドと言えそうだ。(ただ、キーボード/効果音のトラックの出力が大きすぎて、バンド演奏がキレイに聞こえない。これはいただけない!) ギターソロもガンガンに弾きまくっている。が、いやらしさはなくて、心地よい。
03. Vivid Place
ミディアムテンポのメランコリック&ロマンティック&パワフルな曲。ドラムの物憂げなソロで始まる。イントロは雰囲気重視の重たいリフ。Aメロはクリーントーンのギターに合わせて、切ないメロディーがのっかっている。ちょっとDっぽい?! いや、後期ルナシーか!? Bメロのデスボイスのシャウトは必聴。こういうシャウトはマジ好きだ。一転して、サビの突き抜けたメロディーは本当に美しい。切なさが伝わってくるポップな一曲だ。ギターもただゴリゴリしているだけじゃなくて、こういうアルペジオもうまく使えている。こういうミディアムテンポの曲がしっかり聴かせられるとなると、本当に大物に化けるような気がしてならない。このバンド、ただの勢いまかせのバンドじゃないぞ・・・
04. 黄泉の譲り葉
4曲目もスローでヘビーなロックだ。同期音で始まるダークなメタルサウンド。イントロのギターリフが90年代のメタルっぽくてカッコイイ。Aメロは、・・・やっぱDって感じかな。Dよりも懐かしい感じがするなぁ。BメロはまさにD。Dのお弟子さんなのかな、と思っちゃうくらい。でも、やはりデスボイスがぴか一だ。サビは切なくて、重たくて、ロマンティックで、甘くて、メランコリック。メロディーセンスはすごいな。ファーストでここまでハイクオリティーの曲を入れるバンドってそうそういないと思う。僕自身、本当にこの曲で心が動いた。かっこよくて、切ない。すばらしい楽曲だと思う。音のバランスもすごく良いし、全体的なまとまりもいい。キーボードの音もこの曲では抑えられている。03と04は、V系ファンならずとも是非聴いてもらいたい曲だ。
05. Recall
これは一言でいってヤバイです。カッコよすぎ。これがV系なり!というべき、極上V系ロックだ。Aメロ~Bメロの展開はたまらない。ゾクゾクしちゃう。今のV系キッズ/少女もOKだろうし、また僕ら世代の初期V系ファンにとっても確かな一曲だと思う。彼らはいったいどんな音楽を聴いて育ってきたのだろう。V系の基本/基礎がすべて押さえられているし、また技術的にもすばらしいものがある。ギターソロはかなり弾きまくっている。ガルネリウスまではまだまだ程遠そうだけど、V系の世界では十分にやっていけるだけのパワーと素質と技術はすでにもっている、と言えるだろう。
【総評】
ファーストながらに、技術もセンスも才能もすべてがうまく昇華されている作品となっている。楽曲も素晴らしいし、ボーカルの声も素敵だし(もう少し腹から声が出るといいなぁ・・・)、雰囲気も世界観も明確だし、なにせカッコイイ。そして、巧い。これだけのクオリティーを誇るバンドはそんなにいるわけじゃない。
だが、現在のV系シーンは、演奏技術の高いバンドがうじゃうじゃといる。ある意味、V系のマニア化というか、おたく化というか、技術に偏ったバンドも多く存在している。サウンド的に突き詰めようとするV系バンドは、たしかに素晴らしいのだが、逆に「技術があればいいんだろ?!」、という思いあがりを感じさせるところもある。V系の本来のスピリットが消えて、V系ごっこっというか、なんちゃってV系に成り下がっているように思えなくもない。
V系はまずもって、カッコよくなくてはならない。キツイ言い方をすれば、カッコよくなければV系ではないのである。かっこいいというのは、ルックスがいいということではない(ここも誤解されている!) 生き方というか、有り様というか、精神性というか、そういう部分でカッコよくなければならないのだ。ヴィジュアル系のど真ん中にいたラルクが「ヴィジュアル系」を否定したように、自らを否定するくらいにひねくれてなければならないのだ。
デルヒは、ポテンシャルとして、素晴らしいものがある。だからこそ、(ある意味安易な)技術の習練に満足するのではなく、バンドの生き方として、生き様として、バンドライフを突き詰めていって欲しいと思う。ただ巧くて、自己完結してしまっているような小さいバンドにはなってもらいたくないな、と。 どこまでも自分たちを追いつめるようなバンドになってほしい。