ドイツに来て、3日目。
遂に、一つ目のハードルを迎えることになりました。
というか、どうなるか、今のところ、完全に「未知数」です。
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赤ちゃんポスト論の中で、SterniParkと並んで、取り上げられるのが、バイエルンの「DONUM VITAE」というキリスト教系の団体。その中でも、マリア・ガイス-ヴィットマンは、特に有名な女性。匿名出産、そしてその後の内密出産という方法を生み出した「匿名出産の母」となる人物。
僕のこれまでの研究だと、1999年に、DONUM VITAEが「匿名支援」の可能性を拓き、2000年に、SterniParkが「赤ちゃんポスト」を開設した、ということになっている。
文献研究から、DONUM VITAEは、妊娠葛藤相談から、匿名相談の道を見出した、ということは明らかになっている。けれど、いったいどのような人が、どのような思想から、どのようにして「匿名支援」を思い立ったのか。それが、どうしても知りたかった。
DONUM VITAEには、日本にいる時から、4度ほど、しかも数人に宛てて、メールを送りました。
他の団体の場合、どんなに遅くても、1週間~2週間で返事がきます。ダメならダメで、断りのメールが来ます。が、このDONUM VITAEは、ちっとも返事が来ないんです。事実、この団体に最初にアポを取ったのは、3か月ほど前。その後、一度も返事が来ず。。。
(でも、その理由が今日、半分くらい明らかになりました)
そこで、この団体のHPのすみからすみまでチェックしていると、ミュンヘンの、しかも僕の滞在しているホテルから2駅ほどしか離れていない場所に、DONUM VITAEの事務所(?)があることが分かりまして。
今回の訪独の大きな目的の一つなだけに、「待つ」のはやめて、「勝負」にでることにしました。
突然、僕みたいな外国人が事務所に訪れたら、相手もびっくりするだろうな、、、と。というか、中に入れてくれるのかどうか。
日本でも、そんな大胆なこと、しないです。。。(汗)
アポなし。行き当たりばったりの訪問、決めました。
この建物の中に、DONUM VITAEの事務所が入っているはず。
しかし、とにもかくにも、緊張する。。。
「やめておこうかな」、という気持ちも一瞬芽生えた。
でも、「これが研究だろ?!」、というもう一つの声が聞こえた。
「研究しに来たんだったら、覚悟を決めろ!」。
というわけで、入り口を探し、、、
ありました。
Donum Vitae in Bayern e.V. Geschäftsstelle(事務所)。
いわゆる「ベル」を鳴らしました。何を言おうか、どう言おうか考えていたら、オートロックのドアが開きました。
そして、事務所のドアをノックすると、中年の女性がでてきました。
僕はとりあえず、自己紹介をし、何者かを説明し、数分ほどお話をさせてもらいたい、ということを伝えました。
すると、、、
「よく分かりました。が、お話することはできません。私たちは、匿名での支援を行っている団体です。匿名性を大切にしています。女性たちを守るためです。なので、こちらからお話することはできません。学者であろうと、研究者であろうと、教授であろうと、誰であろうと、ダメです。すべては緊急下の女性を守るためです。分かってくれますか?」
と、言われました。
言っていることが分かるだけに、こちらからは何も言えず、、、
その女性は、その後、「私たちの活動を知りたいならば、アンベルクのDONUM VITAEを訪ねてみてください。私からもメールをしておきます。電話番号を教えるので、電話をかけてください」、と言ってきました。
突然、何の前触れもなく訪れた外国人の僕に対しては、かなり丁寧に対応してくれたと思います。
僕がアンベルクのDONUM VITAEに数回メールを送ったことを伝えると、「メールでのお問い合わせには、可能な限り答えないようにしているのです。どこでどう情報が漏れるか分からないでしょ。訪問日等の取り決めを行いたいのであれば、電話をして、きちんと約束を取ってください」、とも言ってくれた。
…というわけで、とりあえず「激突」終了。勝ちとも、負けともいえない戦いでした。。。
決戦は月曜日にもち越しとなります。どうなることやら、、、汗
ただ、この事務所で、貴重な資料をいただきました。突然の訪問なのに、、、涙
とにかく、緊張したし、ちょっと怖かったかな、、、
ただ、月曜日までに、このDONUM VITAEについては、できる限り調べておこう。そして、無事にアンベルクに訪問できることを、ただただ祈ろう。DONUM VITAEなくして、僕のこれからの研究はない(と思う)。
今回の訪問で分かったのは、「匿名性」の重要性は、この団体の中で、かなりのものだ、ということ。赤ちゃんポストは断念したけれど、逆に、緊急下の女性の支援については、かなり精力的にやっていることは間違いない。
実際にこの団体の人と話すことで分かった。
「閉じられているけど、開かれている」。
こういう団体だからこそ、極限の状況に置かれた女性を支援できるんだろう。今日、いただいた資料の中に、「絶望の代わりに希望を」、という言葉があった。追いつめられる女性たちは、絶望している。それを、希望に変えること。
僕が求めているのは、そういうことなんだ、とはっきり分かった。
絶望を希望に変える。
それが、「支援」なんだと僕は思う。
それは、このブログのテーゼとも関連する。「きっと誰もが楽しく生きられる…はず」。
どれだけ絶望しても、それを希望に変えることはできる。
その可能性は、いつでもある。
だから、僕も、絶望しない。
とにかく、前に一歩進むしかない。
ドイツに来て3日目にして、もう大変。。。
今、僕にできることは、きちんとこの団体のことを「予習」しておくこと。
それしかない。
以上、備忘録+ご報告でした。