Life is ART!

高齢者施設で活躍しているアートワークセラピスト達の旬な声をお届けします。

90歳

2012-11-27 00:16:18 | 素敵な現場
シニア担当のYokoです。

最近感じている事があります。

私は来年50歳になります。

年齢を隠す理由もありません。

早いなぁ。。って最近本当に思います。

いつの間にか、あっという間・・・

ドラマやメディアの影響もありますが、その年代、20代 30代 40代etc・・・

人は何か違う世界にでも行くかのようなものを感じたりするようです。



「私はもうすぐ90歳なのよ。あとこれだけでいいの」

そう言ってM様は指を二本立てました。

それはあと2年でいい。そう92歳まででいいのと。

どうしてそう思うのか?

私は聞けませんでした。

でも何かこれから見えている世界が少しだけ見えていない、いえ見えない もしかすると見たくない。。。

「いつ死んじゃうかわからないでしょ」

M様はしばらくしてそう続けました。

どう伝えていいのか?M様の気持ちにどう寄り添う事が出来るのか?

私には正直わかりませんでした。

それでもやっと見つけ出した言葉を伝えてみました。

「そうですね。私の、いえ誰でも明日があるとは限らなくて、私も死んでしまうかもしれません」


しばらく沈黙がありました。


「そうね。でもね、そういう事ではないのよ。誰もが明日死んでしまうかもしれないと言う事と
 
 90歳という年で感じる死というものは違うのよ。」

私にはここから伝えていい言葉が一切見当たらなかった。

なぜなら私は90歳でもなく、今M様が立って感じている事見えている景色の経験がない。。。

明日自分も死んでしまうかもなどと言っておきながら、「死」をそこまで自分の事として受け入れてはいない。。


(なんて私は嘘つきなんだ。。思ってもいない事を言っている。)


M様の90歳という経験のない扉 私の50歳という経験のない扉

2人ともはじめての扉の前に立っている

それだけは同じなのだと私は感じました。


「M様 私は来年50歳になります。私は今いろいろな事が変わって来ています。女性としての身体の事やその事で感じる気持ち

 どうやって生きていっていいのか?時々わからなくなるんです。不安になるんです。」

何か堰を切ったように話をしてしまいました。

「そうね。その年齢はいろいろと感じるわよね。でもね、あなたは大丈夫よ」

M様とお会いしてまだ4回。

なのにM様は私に「大丈夫」と言う。

どうして??

「あなたはこれだけ素敵な事をやっている。その事を懸命にやっている人はね 大丈夫よ!

 私もそんな風に生きて来て、夢中で過ごしてきたからわかるのよ」

聞くとM様はお茶の先生として50年過ごされて来たのだと言う。

生徒さんを沢山持って充実した日々を送って来たと。

「乗り越えられるから大丈夫よ。だって来てくれる人がいるから。大丈夫よ」

そう言って私の手を強く握って下さいました。


私が泣いたのはいうまでもありません。

M様はそんな私の目をまっすぐにやさしく見つめて下さいました。


この日のワークのテーマは「心の実り」

一年の心の実りをアートで表現するものでした。

「ないわ」という一言から、先ほどの「あと2年よ」という話をしながら

これかな?あれかな?と素材に触れながら素敵な作品を作っていきました。

だけれども、どこか満足を、やった!!という実感を得られていないかの様でした。

最後に作品のタイトルをどうつけたらいいか?

自分が感じている事をどう表現していいか??

あと2年でいいと思っている自分

そのさらに心奥深くで感じている「何か」

作品を周りの皆様にお見せすると

「素敵だわ」「あと2年なんて・・・(笑)」「楽しいじゃない!!」

お仲間から沢山のあたたかい言葉やかかわり

最後に書いたタイトルは「楽夢」でした。



ワークが終わった時、私は改めてM様にお伝えしました。

「M様 私はM様が今見えている景色 感じている事は正直わかりません。

 だけれどもはっきりとわかる事があります。

 それはこうしてまた来月もM様とここでお会いしたいという事です。

 M様に沢山の事を教えて頂きたいという事です」




「ありがとう。そうね。この時間が本当に楽しいのよ。

 元気で寝たきりにならずにね。

 楽しくいかなくちゃね。

 また会いましょうね。うれしいわ。

 ありがとう。本当にありがとう」


そう言いながらM様はもう一度私の手を強く握り

丁寧すぎるお辞儀と、心からの笑顔を私に下さいました。

そしてまた最後に

「あなたは大丈夫よ」と。

ありがたい事です。本当にありがたい事です。



人は人といて生きて行く。

正直に伝えあう。

「かかわりあい」「わかちあい」「助け合う」

それは時に「誤解」もあるでしょう。

いろいろな価値観と感情が交差していく。

だけれどもそれも相手があって出来る事 感じる事

たとえそれがどんな事であってもその先にあるものは「喜びに通ずる」と私は思うのです。

それらの事を通して、私達は「血が通いあい、あたたかいという事を知っていく」

そして自分が大切だという事を

自分以上に誰かが思っていてくれる。

その喜び・・

だから「この場が楽しい」「この場が好き」そう言ってくださるのだと思っています。




私達のシニアアートワークはそんな場なのだと、私は改めてM様とのかかわりを通して感じました。

だからこそ、年齢も場所も生きてきた全てを越えて

出会いを大切にして行きたいと思うのです。






最新の画像もっと見る

コメントを投稿