Life is ART!

高齢者施設で活躍しているアートワークセラピスト達の旬な声をお届けします。

変るもの 変らないもの

2010-11-17 08:07:59 | 素敵な現場
Yasuko です。初ブログデビューです!

この場をかりて私がシニアの現場で味わっていること、体験したことなどをみなさんに

お伝えできればと思います。




さて、今年もいよいよ紅葉が始まりましたね。

この前の日曜日に新宿御苑に散歩にいったのですが、鮮やかに色付いた木々を見ていると、

まるで非日常的な世界にもぐりこんだような気持ちになります。

たった数日にして同じ景色がまったく違って見えるのですから。





先日有料老人ホームでワークをしてきました。

この日はチームみんながそれぞれ集めてきた落ち葉や木の実を、

テーブルいっぱいに並べてスタートしました。

施設に向かう途中で拾った大きなかりんの実も一緒に。

落ち葉と一緒にとっても甘い香りが広がっています。



ここは介護フロアなので、素材には毎回気を配ります。

誤食を招かないように、小さいものや思わず食べたくなってしまいそうなものは、

使わないようにしています。

それでもなんとか可愛らしいドングリや松ぼっくりの実などに触れてほしい!という思いから、

チームメイトのイケちゃんは、それらを小さなガラスの小瓶に集めていくつかもってきてくれました。

こうした仲間一人一人の思いやりや情熱が、さらに安心の場を作り上げているのです。

頼もしく、誇らしいチーム仲間です。





毎回参加してくださるNさんは、長年生け花をされていたという上品でユーモアいっぱいの女性です。

私達がクラスの前に準備をしている時のこと、この日早めに席に着かれていたNさんは、

どこか落ち着かないご様子でご自分の車いすを動かそうとされていました。




「どうしたんですか?」と伺うと、



「ここにいると邪魔だから、始まるまでは向こうにいます」と何度も繰り返し後ろの壁の方を指すのです。

もちろん邪魔だなんてことは一切ありません。そう伝えても不安そうにそわそわしているご様子でした。



そこであの木の実の入った小さな小瓶をお渡ししたところ、パッと表情が明るくなったのです。



「あら、かわいいわねぇ」



先ほどの不安はどこかにいってしまったようです。



私は小瓶の中から小さくて可愛らしい木の実をNさんの広げた両手にのせました。

Nさんはそれらを大きく開いた目で、じーっと見つめて一言ゆっくりつぶやきました。





「こういうものは、いつまでたっても変わらないわねぇ。」





その瞬間私の中でじーーんとこみ上げるものを感じました。



確かにそうだ!

この数十年、時代は効率化やスピードをもとめて、めまぐるしく変化し続ける中、

木の実や落ち葉だけは変わることなく、今も昔も私達の心に暖かい記憶として残っている。

日本最古の和歌集である万葉集には、紅葉を歌った和歌が一番多いそうです。

かつては平安時代の歌人も、赤や黄色に染まる木々の中に恋人や大切な人を見て、

そして現代人である私達も同じように心ときめかせているのです。

そうかんがえるとなんだかロマンチックですねぇ。

だから今でも毎年たくさんの人が紅葉を見に、はるばる足を運んでいるのでしょうか。





私よりも日本の時代の変化を見てきたNさんからでた「変わらない」という言葉は、

つい慌ただしく毎日を過ごす私に、大事なことを教えてくれました。



私がアートセラピーが好きな理由も、人の暖かさや表現することの楽しさなど、

人間として「変わらないもの」をゆっくり味わい、心を豊かにしてくれるところなのだと思います。



そして私はこれから毎年松ぼっくりをみたら、この日のNさんの穏やかな木の実をみつめる

目や、一緒に共有したこの瞬間を変わらず思い出すことでしょう。





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2 コメント

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そうだね! (いけ)
2010-11-17 10:38:27
やっちゃん、ブログデビューおめでとう!

自然素材の素晴らしさを、改めて実感したワークだったね。

そして、万葉集などで紅葉が一番多く詠まれているということを知り、驚きました!

自然を見て、季節の移り変わりを感じたり、暖かい気持ちになる。

素敵な事だよね。

私も、これからカリンを見てあの皆さんの笑顔を思い出しそう~~
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自然素材 (やすこ)
2010-11-18 12:00:42
自然素材はやっぱりいいね。
どんな人のこころにもすっと入ってくれる。

あの小瓶は私とNさんをつないでくれました。
グッドなアイディア、どうもありがとう。

また来月も笑顔の場にしてこー!
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