Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「夏の名残の薔薇」恩田陸の世界

2014-03-22 10:03:39 | ミステリ小説
この作家の本はそう数多く読んでいない。これはタイトルが素敵なのとあらすじを見て面白そうと感じて読んでみた。
この人の作品はキチンと最後に完結する話しではなく曖昧なまま終わらせるやり方が多いようで、この物語もそんな終わり方をする内容だった。
何人かの人物がそれぞれの胸のうちを語る。そんなシチュエーションがよくある様で、「木曜組曲」もそんなスタイルの書き方だった。
一人ひとりの口から語られることも微妙に変化していき、どれが真実でどれがウソなのか分からなくなっていく。事件はあったのか無かったのか、それすらも曖昧に見えてくる。
辺鄙な山奥に建つグランドホテル。毎年招待される企業の関係者たち。創業者の娘たち三人がディナーの席で語る不思議な話。通例となっているその席で
語られるのは記憶の底に沈殿した犯罪を掘り起こす物語。華やいだ人物たちが多く集まるが、いろいろな噂をもった人たちの集まりでもある。
三姉妹それぞれの口から語られる物語も境界が曖昧でどこまでが現実かハッキリしない。そんな内容ではあるが物語の世界に引きずり込まれる。リーダビリティのある
恩田陸独特の語り口のせいでしょう。雰囲気ある世界でミステリアスな物語を読ませてくれるそんな本でした。


               

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