Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「灰色の虹」 貫井徳郎

2014-01-05 08:40:15 | ミステリ小説
冤罪をテーマにした物語です。普段私達が目にしている新聞記事、テレビのニュース。自分の生活とは別次元での出来事と感じて、報道される事柄を「事実」と無条件に信じ込んでいませんか。昔々は新聞記者も足で記事を書いたそうです。だが誤報が生まれ社の信頼が失墜することを恐れいつの間にか記者クラブが出来ていました。警察の広報官がその記者クラブで読み上げる捜査内容が記事になる。
そんな時代になっています。テレビのニュース番組でも天気予報でも、どこどこによりますと、と話します。気象庁の発表によりますと明日は晴れるそうです、と云います。つまり雨が降っても当方の責任では有りませんといっているのです。 さて、内気で気弱なタイプの男が逮捕され過酷な取調べに負けて、やってもいない事件をやったと云えばどうなるか。法律的なことは何も知らない一般市民は裁判で本当のことを言えば解かって貰える。大丈夫だ自分は無実なのだから。そんな風に自分を安心させます。しかし、裁判で状況を覆すことが出来ず刑が確定します。昨日まで平凡な一市民が逮捕、起訴されるとどうなるか。世間は家族まで容赦しません。例え冤罪と訴えても誰も聞く耳を持ちません。大勢の人の人生が滅茶苦茶になります。このあたりの残酷さを作者は徹底的に描きます。壊れた人生、壊れた家族。やがて主人公はたったひとりの味方である母のもとから姿を消します。
そして刑事、弁護士、裁判官と次々事故や事件にあって死んでいきます。一本の線で繋がることに気付いたひとりの刑事。その刑事もわずかな金を奪う目的の男達に襲われた恋人が殺された過去を持っていた。
復讐は是か否か、そんな問いかけのストーリーです。ラストの意外性はミステリとしては弱いのでミステリ要素のある犯罪小説だと思います。
しかし、考えさせる内容でした。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿