刑事小説。大阪府京橋署刑事第二課暴犯係・礒野次郎とバディを組むのは京橋署に転属させられた元大阪府泉尾署刑事課、映画オタクの刑事・上坂勉(「桃源」で活躍)。食品卸会社「シノハラ」の社長、篠原が行方不明になり妻の真須美が「捜索願」のため京橋署を訪ね、暴犯係の二人が捜査するところから始まります。ヤクザの「筏組」、闇金業者、連鎖する胡散臭い悪徳業者たちの仕掛けを暴こうとした矢先、行方不明者・篠原の死体が発見される。自殺か事件か?その今回の複雑怪奇な事件と過去に起きた似た事件を2人のコンビが、京橋署のクセあり同僚たちと、地道に捜査して全容解明へと導いていきます。篠原をめぐる人間関係、巨額の保険金、そして手形の行方・・・絡まりもつれ合う糸をほぐすような調査から見えてくる真相、その連鎖から浮かび上がる過去の事件の内容が少しずつ明るみになっていく点が面白い。映画の薀蓄が映画を見ない人には邪魔だけど映画ファンには面白い。571頁の長編だが鋭い推理と話術で情報を得ていく関西弁の軽妙な突っ込みでコミカルな会話のシーンが多い展開は読みやすかった。捜査で訪れる土地や美味そうな食べ物にも興味を持った。
2022年11月中央公論新社刊
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