読書備忘録

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堂場瞬一著「Killers」上・下

2016-05-15 | 堂場瞬一
著者2000年デビューから100冊目の作品。
1961年から2015年までの一人の殺人犯と、彼に関わる家族、そして三世代に渡り犯人を追い続ける刑事。
オリンピックの度に形を変える渋谷の街の姿を背景にしたハードボイルド小説。群像劇ではあるが主人公は稀代の犯罪者・長野保。
2020年東京五輪に向けて再開発が進む渋谷区の古アパートで老人の他殺体が発見され、所持品からかって殺人事件の重要参考人と
された長野保の免許書が共に発見される。一体この男は何者なのか。
東京オリンピック開催前の1961年から続く連続殺人事件の容疑者・長野保は「殺人」に恐るべきこだわりを持ち、
迷いなく殺しを遂行していく天才的な頭脳を持ちながら「社会の浄化」の為に殺人を重ねる男。
それはまるでストイックな一流アスリートにも似た一面を持ち人の命を奪うことに何の躊躇も憐憫も持たない徹底した悪人特異な殺人鬼だ。
同時に「殺人者」長野は、高度成長期、バブル期と刻々変わりゆく地元の街・渋谷をこよなく愛する人物。
その変化を愛するからこそ、「老廃物」を排除し、浄化するという使命感で青年時代から老人などをターゲットに殺人を繰り返すのだ。
長野は有名政治家の次男として生まれ、「東大開闢以来の天才」と言われた時期もあった。
独りよがりの殺人を正当化しつつ、衝動的に犯行に及ぶことが多く不可解。
首都の中枢に普段はひっそりと隠れ棲むが、街が再開発で変容する転換期に「神の裁き」を示すかのように人を殺す。
だが被害者は的にしやすい老人ばかり。彼は、自分が生存する痕跡をどこにも残さない。
それは未解決事件の連鎖からネットでは彼の行動が拡散されて都市伝説が生まれてきていた。
もし殺人者の生まれる原因があるとすれば
「活気あふれ、変化を好む大都市の裏側に、人々の発散できない不満や欲望を吸い込み、
殺人衝動さえ生まれる暗部がある街そのものが原因かもしれない。」と語られるが理解に苦しむ。
殺人者側と、刑事や新聞記者の追跡者側の関係は、血縁など複雑に入り組み、3世代にまたがる攻防を繰り広げて展開される。
追跡者は何度も挫折を繰り返すが、徐々に殺人者を追い詰めていく過程はスリリングだった。
2015年10月講談社刊

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