女性軽視、セクハラ、DV、レイプなど扱った警察小説。土手下に裸で後ろ手に縛られたて転がされていた男性の遺体が発見された。捜査を担当したのは八王子南署のベテランの刑事鞍岡警部補と本庁捜査一課の志波倫理吏警部補。暴行の痕が残る体には、メッセージが残されていた。「目には目を」。やがて被害者の身元が特定されなんと男の息子は、3年前に起きた集団レイプ事件の加害者だった。次々現れる容疑者、そして新たな殺人。集団レイプというシンプルな暴力を軸に置きつつ、その卑劣な暴力から周囲に拡大してゆく波紋の数々を精緻に描いて、その操作に取り組んでゆく刑事たちの生きざまと一見バラバラな数々の出来事と謎のすべてが徐々に明らかになり、最後にはすべての謎が回収されてゆく終盤の構図は見事。前半登場人物の多さに読み進めるのが苦痛だったがトリックやミステリーの解明ではなく、むしろもつれにもつれた人間関係図を鮮明にし、それぞれの個の動機と動線を明確にして行く過程が徐々に面白くなった。それぞれの登場する男女の四人の刑事たちの個性も明確で、熱い誠実な生き様も相まって謎めいた若き志波刑事の才能とその熱情の理由も最後には明らかになる展開はある意味で心地よい。29年前に強姦された女性に「あなたは決して悪くないに、重い傷を抱えそれを追い目にさえ感じながら・・・本当に大変だったと思います。そのつらさ、痛みは、わたしには察してあまりあります。よくこらえて生きてこられました。本当によく生きてこられました」(P313)
2024年1月文藝春秋社刊
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます