読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

天童荒太著「巡礼の家」

2020-08-15 | た行
著者が故郷・道後温泉を舞台に描いた、現代社会への「希望の灯火」。
「お遍路さん」を迎える場所として道後温泉にある架空の宿・巡礼者の宿「さぎのや」。
 行く場所も帰る場所も失った15歳の少女雛歩は、この宿の美人女将からこう声をかけられる。「あなたには、帰る場所がありますか」こころの傷ついた人たちを癒す「さぎのや」の人たちの、優しく不思議な世界観。女将や地元の人々との交流を通じて、少女は、自らの生き方と幸せを見つける再生の物語。さぎやの普通「巡礼者って言葉があるけど、命って巡るんだ、人の想いも巡る・・・いいことって、きっと巡っていくんだろうな・・・」(P163)「いつも急いでいて、きりきりしていて、頑張っている。けど、その姿が痛々しい・・・ただ自分たちの暮らしや理想を追うのに精一杯って感じでとても助け合う雰囲気じゃない。だから巡って行かない、人々の想いも、いいことも、滞って、巡らない・・・それがさぎやの外の世界の普通なんだ。」(P164)28章の友人は遺書を残したのに遺書を残さずに友人と自殺した15歳の娘の心情がどうしても理解できず悩み巡礼の旅に出た夫婦の話がいい。
2019年10月文藝春秋社刊

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