百田尚樹著「モンスター」

「町でいちばん美しい女は、かつてバケモノと呼ばれていた。」
ある地方の田舎町で高級フレンチ店を経営し、町中の男を虜にする絶世の美女・未帆。
しかし、過去の彼女の顔は人から疎まれる程醜かった。
周囲からバケモノ呼ばわりされ友達もできない悲惨な青春時代の日々。
そして思い悩んだ末、ある事件を起こしてしまう。
家族にも見捨てられ追われるように移り住んだ「美女の街」東京の短大時代そして就職。
社会人になって偶然整形手術に目覚めた未帆は、手術を繰り返して完璧な美人に変身を遂げる。
そのとき、甦ってきたのは、かつて自分を虐げた町に住むひとりの男に対する、狂おしいまでの情念だった。
一人の女性の壮絶なまでの辛苦な人生と復讐劇。
とんでもなく醜い女性が誰からも好まれる絶世の美女に生まれ変わる過程が壮絶。
途中社会学、人相学、心理学などから考察された卓越した美人論、男性論が展開させながら展開される。
好きな相手から見向きもされず、満たされぬ想いと悲しき恋の一方通行の感情は、誰にでも一度ぐらいある体験だろう。
差別され蔑まされたコンプレックスの塊が整形の繰り返しとともに変化していく心の変りようが面白い。
『戦って美しさを手に入れた。だから、私は美の価値を知っている』
『美人は心も素直で奇麗だが、ブスは心もひねくれている。』
よくある復讐物ストーリーで整形、風俗で荒稼ぎ等展開も読めるのだが作者の薀蓄と筆使いで一気に読ませてくれる。
短い人生だったが一度は結婚もし本物の愛も感じ、初恋も復讐も成し遂げる凄いモンスター人生だ。
2010年　3月　幻冬社刊