デジタル社会の現代へ警鐘を鳴らす、SNS時代の新な社会派小説。ユーチューブで人気のチャンネル『野依美鈴(のよりみすず)のブレイクニュース』。児童虐待、8050問題、冤罪事件、ヘイトスピーチ、奨学金返済問題、パパ活の実情などを独自に取材し配信。マスコミの真似事と揶揄され、誹謗中傷も多く、中には訴えられてもおかしくない過激でリスキーな動画もある。それでも野依美鈴の魅力的な風貌などとも相まって、番組は視聴回数が1千万回を超えることも少なくない。年齢、経歴も不詳で、自称ジャーナリストを名乗る彼女の正体を探るべく、「週刊現実」記者の真柄新次郎は情報を収集し始める。視聴回数が1千万回を超えて大金を稼ぐ彼女はある目的のため、ひとり立ち上がったのだ。私的メディアを作り上げた彼女の動機は・・・。ネットでの安易な誹謗中傷がどんな事態になるのか、自分自身が誹謗中傷をしなくてもシェアするスクリーンショットを転載しても、相手の社会的評価を下げることで名誉毀損罪や侮辱罪になるとともに、逆に自分自身が被害者にもなり得ることがよく分かる内容。SNS利用は毒にも薬にもなる、顔の見えないということは恐ろしいことだと思いました。ラストは少し端折りすぎでスッキリ感がないのは残念。
2021年6月集英社刊
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