読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

黒木亮著「排出権商人」

2010-01-16 | か行
『空気が大金に化ける。これが「排出権ビジネス」の実態だ!』・『世界11ヵ国に及ぶ徹底した取材で描く、緊迫のリアルフィクション!』という宣伝コピーがいい。
鳩山首相が世界に公言した「2020年までにCO2の 25%削減目表」やCOP15の迷走ぶりを
思うとこの本の読んでその裏側が良くわかる。
主人公は日本のエンジニアリング会社で排出権取引を担当する女性。
世界中を飛び回るが、その人物像はエリートというよりは、悪戦苦闘しながら前進する努力型の人だ。
温室効果ガス削減か、排出権の購入か。温暖化防止の美名の下で生まれた、まったく新しい国際ビジネスの利権に群がるしたたかな商人たちの、ターゲットは日本。
排出権(カーボンクレジット)。
それは温室効果ガスを「排出する権利」。
京都会議で、実現不可能な排出削減目標を負った日本は、莫大な金額で外国から「排出権」を買わなくてはならない。
国民負担は、5年間で1兆円。
新日本エンジニアリングの松川冴子は、地球環境室長として排出権ビジネスの開拓を命じられる。
巨大排出権市場・中国を奔走する主人公が直面した問題点。
世論をにぎわす国際政治問題が実はこうしたビジネス チャンスと結びついていることが良く分かる。
したたかな中国・インド・ブラジル・EU諸国のそれぞれの思惑が興味深い。
扱われる金額が大きすぎてピンと来ない難点やスリリングな展開や派手なドンパチ、恋愛場面などなくて主人公冴子の成長物語を縦糸に
株の売り買いで儲ける空売り専用ファンドの北川の動きを絡ませて経済テキストを読むように展開される。
そしてエピローグでの「世紀のペテン」の衝撃的場面で終る。
排出権の入門書として最適です知識欲を満たしてくれます。
物語の中で「空から月餅(金)が降ってくる」という中国人の言葉は当に面白い。
2009年11月講談社刊

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 奥田 英朗著「無 理」 | トップ | チャレンジマラソン »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

か行」カテゴリの最新記事