NHK朝の番組に「ルソンの壷」ってのがある。久しぶりに見て色々思ったので備忘録。
ロシアでヒットしたうどん屋さん
厨房、調理の様子を見せる。鉄板焼きスタイルですね。日本独自のサービスです。その場で調理しながら食べるってのは楽しいです。
欧米ではBBQとフォンヂュがそう言う感じでしょうか。
日本ではお寿司屋さんに焼き鳥とか、屋台感覚でその場調理するのが普通ですが、海外では珍しいんですね。
観察眼が必要ということを教えてくれました。
卵パックと自動選別機
高性能すぎて使えない。これは逆に「郷に入れば郷に従え」ですね。
日本的発想だと欠陥(不良)率をミニマイズして歩留まり向上に血眼をあげるのですが、事例ではひび割れ率10%が許容範囲。
許容の理由が加熱するから。衛星基準が緩和されている。
そこで、良否判定基準を緩めた(性能を下げたと表現)らしいですが、こういうやり方もできますね。
検査基準はそのまま。20個入で1パックなら1個は確実に良否判定の欠陥品を入れる。
良否判定でNGとなったものをレベル別にストックし、ヒビと判定されたレベルのものは1/20でパックに入れられる。
たまたまそのレベルが無ければ全部OKで満たすというやり方になるでしょう。
この辺は色々議論されたかな?と思いますが。チラ見で思いついた内容をメモに。
ACサーボモーター
その画期的製品は販売実績が無いから国内大手企業に採用されなかった。
しかし、米国の展示会でモノを見た米国企業は販売実績が無いから第一顧客になってくれた。
この事例は国内大手企業のアタマが硬い、古い、革新的ではない、米国(海外)企業が革新的だ!と臭わせていますが、そうではありません。
仮定ですが、本社の調達部門に売り込んだのであれば当然失敗します。
まずは小規模採用ですが、それでも一定数量を安定供給できる企業の規模が必要です。
各工場の工場内新技術展覧会(商談会にはならない)、様々な技術展示会への出展で技術者の興味を引く事は重要です。
規模が問題であればEMSも一つの手でしょう。ただし特許は固めておかないと何をしているのか判らなくなります。
EMSではなく相手先の企業に技術を使ってもらうライセンス供与という形もあります。
この辺のビジネスモデルを旨く(ここで書くことはしません)構築しておけば、採用リスクを極小化できるので、採用契約になったかもしれません。
それでも本社調達部門へ行っても1)の理由ではねられると思います。
本社調達部門は管理部門です。調達先から滞り無く法令遵守した部品や材料を調達し、自社製品の販売機会損失を極小化することがミッションです。なので、責めどころを間違えては意味がありません。つまり、各工場や技術部門に繋がる資材調達部門を籠絡することが必要ということです。そのような部門は各工場や技術部門が必要とする技術内容に明るいですから、1)の理由は無くなります。あとは2)のリスクを如何に回避できるか、そのシナリオがあるか、ということです。
特許とビジネスの話
とある検査メーカーさんがEUの特許を取っていなかったため、EU市場を他社(たぶん他国)に特許で先行され、販売機会を逃した。
ここで、簡単にパテントとビジネス(特許と事業)について記します。
画期的な技術を「発明」したとします。
その技術の成立条件つまり請求範囲(クレーム)がA and B なのか、A or B なのかで大きく変わります。
まず、A and B はAとBの重なりであること、A or B はAとBの和集合です。
ここでA and B だけが特許として認められると、A and C, A and Dはその特許の請求範囲外となってしまいます。
CまたはDがBの改良版であってもBではできなかった事を新たにできる(新規性)をBに記載されていない新規材料で実現可能になると有効となります。
こうなると目的が同じなのでそっくりな製品が出現しますが、特許では護られてしまいます。
しかしA or Bで認められた特許になるとA の領域に入るためA and C, A and Dは特許侵害ということでその製品を差し止めたりライセンス料の請求等が可能になります。C、D は A or B には属しませんので、これらを使った技術は同じ目的であっても特許を侵害しません。
特許事業で重要なことは請求範囲であることが判ると思います。
技術的には実施例が重要で、荒唐無稽な実施例では特許権を与えられる事はありません。しかし、トンでも技術でも着眼点が素晴らしければ特許になることは多々あります。その時点では実現できなかったキルビー特許などが例となるでしょう。
また、 A and B や、A or C だけではなく、応用範囲も重要です。応用製品を考える事、それを利用したら何ができるのか、既存製品の枠を越えて想像力を働かせる事は非常に重要です。これを個々の技術者に一任すると視野が狭くなりがちです。できれば社内の異業種交流を活発化させて「あんな事ができればこんなことが出来るんだけど」を幅広く吸い上げる仕組みが必要です。問題なのは管理されたエリアではなかなか上手く行かない事でしょう。
社内SNSとか、MLとかありますが、堅苦しくなるとあきませんね。なるべく柔らかに、企画部門なんかが「こんな技術が欲しい」と出すと面白いかもしれません。
さて、戦略的製品のコア技術ができたときは、特許で周囲を固める事は重要ですが、落し穴もあります。
特許は出願後1年で公開される。ということです。
公開後にA and Bとかの内容を吟味されて、A and Cとかを先行出願されると厳しいです。だから同時、あるいは公開までの追加である国内優先権出願も手です。ただ、この手は日本国内しか通用しません。
現在、PCT (特許協力条約のこと)による国際特許出願をしておけば、翻訳時間の差による盗作特許の先行出願は防止できます。
絶対特許にしてはいけない技術
ノウハウ。メソッド、管理条件。
こういう類いのモノは特許にして公開してはいけません。例えば「窒素雰囲気で圧力## 気圧、温度***℃で$$$時間の熱処理」。
これは製品では解析できないノウハウです。このノウハウを得る為に費やした時間と人員が全て競合企業に漏れます。
よくある失敗例は製造技術部門に特許ノルマを課してしまう事です。
なお、特許はそれでホクホクできるもんではなくて、相手を叩きのめすものです。
自社(個人)の特許があれば、それの侵害を訴える事で相手の事業を止める事も可能です。
ただし、それを実証できれば・・・。
と、今回のルソンの壷をもとに色々と雑記しました。
ロシアでヒットしたうどん屋さん
厨房、調理の様子を見せる。鉄板焼きスタイルですね。日本独自のサービスです。その場で調理しながら食べるってのは楽しいです。
欧米ではBBQとフォンヂュがそう言う感じでしょうか。
日本ではお寿司屋さんに焼き鳥とか、屋台感覚でその場調理するのが普通ですが、海外では珍しいんですね。
観察眼が必要ということを教えてくれました。
卵パックと自動選別機
高性能すぎて使えない。これは逆に「郷に入れば郷に従え」ですね。
日本的発想だと欠陥(不良)率をミニマイズして歩留まり向上に血眼をあげるのですが、事例ではひび割れ率10%が許容範囲。
許容の理由が加熱するから。衛星基準が緩和されている。
そこで、良否判定基準を緩めた(性能を下げたと表現)らしいですが、こういうやり方もできますね。
検査基準はそのまま。20個入で1パックなら1個は確実に良否判定の欠陥品を入れる。
良否判定でNGとなったものをレベル別にストックし、ヒビと判定されたレベルのものは1/20でパックに入れられる。
たまたまそのレベルが無ければ全部OKで満たすというやり方になるでしょう。
この辺は色々議論されたかな?と思いますが。チラ見で思いついた内容をメモに。
ACサーボモーター
その画期的製品は販売実績が無いから国内大手企業に採用されなかった。
しかし、米国の展示会でモノを見た米国企業は販売実績が無いから第一顧客になってくれた。
この事例は国内大手企業のアタマが硬い、古い、革新的ではない、米国(海外)企業が革新的だ!と臭わせていますが、そうではありません。
仮定ですが、本社の調達部門に売り込んだのであれば当然失敗します。
1) 本社の調達部門はその製品の革新性を判断できる技術的洞察力が無い
2) 本社採用による全社製品への水平展開のリスクが大きい
これらのリスクを回避する代替策が無いと採用できません。2) 本社採用による全社製品への水平展開のリスクが大きい
a) 販売実績が無い=供給体制が整っていない
b) 供給体制の不整備=安定供給に不安がある(会社規模も含まれます)
c) 安定供給不可=その部品を使った製品の市場供給不足
d) 市場供給不安=販売機会損失
e) 代替製品が無い=価格主導権を握られる
b) 供給体制の不整備=安定供給に不安がある(会社規模も含まれます)
c) 安定供給不可=その部品を使った製品の市場供給不足
d) 市場供給不安=販売機会損失
e) 代替製品が無い=価格主導権を握られる
まずは小規模採用ですが、それでも一定数量を安定供給できる企業の規模が必要です。
各工場の工場内新技術展覧会(商談会にはならない)、様々な技術展示会への出展で技術者の興味を引く事は重要です。
規模が問題であればEMSも一つの手でしょう。ただし特許は固めておかないと何をしているのか判らなくなります。
EMSではなく相手先の企業に技術を使ってもらうライセンス供与という形もあります。
この辺のビジネスモデルを旨く(ここで書くことはしません)構築しておけば、採用リスクを極小化できるので、採用契約になったかもしれません。
それでも本社調達部門へ行っても1)の理由ではねられると思います。
本社調達部門は管理部門です。調達先から滞り無く法令遵守した部品や材料を調達し、自社製品の販売機会損失を極小化することがミッションです。なので、責めどころを間違えては意味がありません。つまり、各工場や技術部門に繋がる資材調達部門を籠絡することが必要ということです。そのような部門は各工場や技術部門が必要とする技術内容に明るいですから、1)の理由は無くなります。あとは2)のリスクを如何に回避できるか、そのシナリオがあるか、ということです。
特許とビジネスの話
とある検査メーカーさんがEUの特許を取っていなかったため、EU市場を他社(たぶん他国)に特許で先行され、販売機会を逃した。
ここで、簡単にパテントとビジネス(特許と事業)について記します。
画期的な技術を「発明」したとします。
その技術の成立条件つまり請求範囲(クレーム)がA and B なのか、A or B なのかで大きく変わります。
まず、A and B はAとBの重なりであること、A or B はAとBの和集合です。
ここでA and B だけが特許として認められると、A and C, A and Dはその特許の請求範囲外となってしまいます。
CまたはDがBの改良版であってもBではできなかった事を新たにできる(新規性)をBに記載されていない新規材料で実現可能になると有効となります。
こうなると目的が同じなのでそっくりな製品が出現しますが、特許では護られてしまいます。
しかしA or Bで認められた特許になるとA の領域に入るためA and C, A and Dは特許侵害ということでその製品を差し止めたりライセンス料の請求等が可能になります。C、D は A or B には属しませんので、これらを使った技術は同じ目的であっても特許を侵害しません。
特許事業で重要なことは請求範囲であることが判ると思います。
技術的には実施例が重要で、荒唐無稽な実施例では特許権を与えられる事はありません。しかし、トンでも技術でも着眼点が素晴らしければ特許になることは多々あります。その時点では実現できなかったキルビー特許などが例となるでしょう。
また、 A and B や、A or C だけではなく、応用範囲も重要です。応用製品を考える事、それを利用したら何ができるのか、既存製品の枠を越えて想像力を働かせる事は非常に重要です。これを個々の技術者に一任すると視野が狭くなりがちです。できれば社内の異業種交流を活発化させて「あんな事ができればこんなことが出来るんだけど」を幅広く吸い上げる仕組みが必要です。問題なのは管理されたエリアではなかなか上手く行かない事でしょう。
社内SNSとか、MLとかありますが、堅苦しくなるとあきませんね。なるべく柔らかに、企画部門なんかが「こんな技術が欲しい」と出すと面白いかもしれません。
さて、戦略的製品のコア技術ができたときは、特許で周囲を固める事は重要ですが、落し穴もあります。
特許は出願後1年で公開される。ということです。
公開後にA and Bとかの内容を吟味されて、A and Cとかを先行出願されると厳しいです。だから同時、あるいは公開までの追加である国内優先権出願も手です。ただ、この手は日本国内しか通用しません。
現在、PCT (特許協力条約のこと)による国際特許出願をしておけば、翻訳時間の差による盗作特許の先行出願は防止できます。
絶対特許にしてはいけない技術
ノウハウ。メソッド、管理条件。
こういう類いのモノは特許にして公開してはいけません。例えば「窒素雰囲気で圧力## 気圧、温度***℃で$$$時間の熱処理」。
これは製品では解析できないノウハウです。このノウハウを得る為に費やした時間と人員が全て競合企業に漏れます。
よくある失敗例は製造技術部門に特許ノルマを課してしまう事です。
製造技術部門では、如何にして高効率に生産するか、性能向上を図るか、というミッションがあります。
ここで、新規材料使用という特許は要素技術開発部門(研究所など)が担当し、製造技術部門はプロセスウィンドゥの拡張を図ります。
上で言えば温度範囲、圧力範囲、加熱時間(加熱プロファイルも含む)の最適化と性能と歩留まり向上です。ところが、これを特許にしてしまうと革新的な新材料の使い方をライバル企業に教えることとなります。
なお、他社がそのノウハウを活用していたとしても他社工場のそれを把握する事は不可能なので、特許侵害を訴えることもできません。
このような失態は組織の仕組みが問題なので、よくよく気をつけましょう。ここで、新規材料使用という特許は要素技術開発部門(研究所など)が担当し、製造技術部門はプロセスウィンドゥの拡張を図ります。
上で言えば温度範囲、圧力範囲、加熱時間(加熱プロファイルも含む)の最適化と性能と歩留まり向上です。ところが、これを特許にしてしまうと革新的な新材料の使い方をライバル企業に教えることとなります。
なお、他社がそのノウハウを活用していたとしても他社工場のそれを把握する事は不可能なので、特許侵害を訴えることもできません。
なお、特許はそれでホクホクできるもんではなくて、相手を叩きのめすものです。
自社(個人)の特許があれば、それの侵害を訴える事で相手の事業を止める事も可能です。
ただし、それを実証できれば・・・。
と、今回のルソンの壷をもとに色々と雑記しました。