Macのカテゴリーではないと思うけど。
有機EL(OLED)TVの課題。
なんと言っても寿命。画素(色)毎に寿命が異なる。全点灯白画面で放置しておくと全体が暗くなる灰色ではなく、赤が弱ければ補色の青緑に、青が弱ければ黄色っぽく、緑が弱ければマゼンタになる。
テレビはつけっぱなしなので、バッテリ保護のために頻繁に画面を暗くしたり、消すモバイル端末より辛い。
結局は点灯時間が寿命を左右するからだ。有機ELの連続点灯可能時間は、無機LEDの数万時間とは比べものにならない。
パソコン用途は焼きつきが課題。
寿命が桁違いのCRTでさえメニューバーが焼き付いた。
嘘の問題
巻けるというギミック。
柔らかい基板を使う事が可能だから巻くことができる。確かにその通りだ。E-inkもそのコンセプトで出してきたが、何処も実用化していない(笑)。
モノツクリの観点と機械的な特性から見てみよう。
柔らかい基板はフィルム(高分子素材)が代表例だ。だが、高分子素材の問題は加工精度。そしてガスバリア(酸素)。
加工精度の問題について
ディスプレイは大面積に決められた場所に画素半導体を配置する事が必要だ。
まず、市場が立ち上がる4KTVでは2400万画素が必要だ。
この莫大な数の画素半導体を基板の上に同じ特性を持つ様に作らなければならない。通常はフォトプロセスで作る。
基板の上に機能を持った物質(配線の金属、半導体の基となるシリコン、絶縁膜もシリコンやアルミの酸化物や窒化物)を薄く成膜し、レジストを塗布して、回路パターンを露光する。そしてレジストを現像して、残したい薄膜のパターン以外をエッチングで除去する。そしてまた違う機能の薄膜を成膜し、・・・レジスト除去を繰り返す。
半導体層の場合、成膜後の結晶化(熱処理またはレーザーによる局所熱処理)特定機能を持つ元素をドーピングさせることもある。これらのプロセスは土台がしっかりしていないと露光によるパターン形成ができない。
柔らかい基板はちょっとした温度変化で歪む。投影される基板が歪むと画素の場所がずれる。
多重露光ではなく、一筆書きでパターンを描く方法がある。土台が歪んでもそれに合わせて配線や、画素を描く。原理的に2400万から1億個もの画素を一筆書きで土台の補正に合わせながら描くことは可能だ。
数本(数千または数万本か)のレーザーが、それぞれ個別に最初に描かれた画素をマークし、土台の歪みを補正しながらパターンを描く。現実的かどうかは別として、できないことはない。
いずれにせよ、なかなか大変ってことは判る。
この「基板の上に画素を高精度に配置する」ができていれば、フィルム基板を使ったE-inkも実用になっていたと思う。
さて、なんとか画素をフレキシブル基板の上に精度よく配置できたとしよう。そして画素の特性バラツキも無いとしよう。
でもフレキシブル基板は緩やかに酸素や水分を透過するので、有機ELの発光物質を破壊する。
それを補う為には基板にガスバリア性を持たせる必要がある。
そして次の課題が曲がる基板の画素の上に発光物質を『精度良く』配置する事だ。
土台となる基板が歪むとマスク蒸着であろうが、インクジェットであろうが、混色が生じる。
つまり赤の表示エリアに緑や青の発光物質が入る事。これで色純度は一気に低下する。
コレを防ぐには各画素を囲むブラックマスクが必要だ
自発光型だからブラックマスクは不要の様に思えるが、実は必要だ。
自発光型は点光源でもパワーロスは無いので、太いブラックマスク設置による低開口率でもコントラスト比は問題にならないだろう。だが、開口率が小さいことは発光エリアが小さいわけで、単位面積アタリの輝度が同じなら高開口率ほど高輝度になることを考えると低開口率は好ましくない。なお、ブラックマスクはもしかしたら光描画でできるかもしれない。
フレキシブル土台の上になんとか画素を並べて、発光層とブラックマスクも設けたとしよう。次は共通電極が必要だ。
ここで、トップエミッションかボトムエミッションかという問題がある。この共通電極側から光を取り出したい。トップエミッションだ。そうなると共通電極は金属ではなくITOやネサ等の透明電極が必要だ。
ここはパターンが不要なのでなんとかなる。がこのままでは透明電極がむき出しなので、ガスバリア性の高いシリカやアルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミ等(混ぜたらサイアロン(SiAlON))を成膜し、保護用の樹脂を貼付して完成かな。
内部応力
リジッド・剛体ではないフレキシブル基板(超薄型基板を含む)は成膜の内部応力による変形(反り)を生じる。
引っ張り応力か、圧縮応力かで反りの方向は変わる。この内部応力は材料、膜厚、パターン、吸湿率、そして成膜時の温度に依存する。速い話、焼いたするめの様にクルクルっと反るのだ。
これをどうやって解決するのか見物だ。
この辺のフィルムの機械的特性とプロセス温度の関係は非常に複雑で重要だ。
考える程フィルムで大型基板を作る事が難しい事が判る。
しかし、フィルム以外のフレキシブルなモノは存在する。
例えば金属箔。フォイル。熱膨張係数は樹脂の1/10以下。ガスバリア性は問題ない。
しかし、トップエミッション限定、回路と基板本体との電磁気的干渉は防げない。
あとは・・・(C or G)FRPか。だが巻くという目的から外れる事が課題。
TVのフレキシブル化は本当に必要なんだろうか?というのは置いておこう。
あと、材料的に難しい課題を解決するよりもウェラブル端末になるとディスプレイが不要になる。
もし、眼鏡のツルからレーザーで手のひらに画像を表示したらどうだろう。
スマホを持ち歩く必要は無くなる。Google Glassはまだそれはできていないが・・・。
こういう風に違う分野から目的を狙って攻め込んでくる可能性は高い。
有機EL(OLED)TVの課題。
なんと言っても寿命。画素(色)毎に寿命が異なる。全点灯白画面で放置しておくと全体が暗くなる灰色ではなく、赤が弱ければ補色の青緑に、青が弱ければ黄色っぽく、緑が弱ければマゼンタになる。
テレビはつけっぱなしなので、バッテリ保護のために頻繁に画面を暗くしたり、消すモバイル端末より辛い。
結局は点灯時間が寿命を左右するからだ。有機ELの連続点灯可能時間は、無機LEDの数万時間とは比べものにならない。
パソコン用途は焼きつきが課題。
寿命が桁違いのCRTでさえメニューバーが焼き付いた。
嘘の問題
巻けるというギミック。
柔らかい基板を使う事が可能だから巻くことができる。確かにその通りだ。E-inkもそのコンセプトで出してきたが、何処も実用化していない(笑)。
モノツクリの観点と機械的な特性から見てみよう。
柔らかい基板はフィルム(高分子素材)が代表例だ。だが、高分子素材の問題は加工精度。そしてガスバリア(酸素)。
加工精度の問題について
ディスプレイは大面積に決められた場所に画素半導体を配置する事が必要だ。
まず、市場が立ち上がる4KTVでは2400万画素が必要だ。
4k*2k*RGBで24M=2400万。8KTVだとそれの4倍だから1億
この莫大な数の画素半導体を基板の上に同じ特性を持つ様に作らなければならない。通常はフォトプロセスで作る。
基板の上に機能を持った物質(配線の金属、半導体の基となるシリコン、絶縁膜もシリコンやアルミの酸化物や窒化物)を薄く成膜し、レジストを塗布して、回路パターンを露光する。そしてレジストを現像して、残したい薄膜のパターン以外をエッチングで除去する。そしてまた違う機能の薄膜を成膜し、・・・レジスト除去を繰り返す。
半導体層の場合、成膜後の結晶化(熱処理またはレーザーによる局所熱処理)特定機能を持つ元素をドーピングさせることもある。これらのプロセスは土台がしっかりしていないと露光によるパターン形成ができない。
柔らかい基板はちょっとした温度変化で歪む。投影される基板が歪むと画素の場所がずれる。
田という漢字で考えれば良い。変に引っ張ると正方形が平行四辺形や台形になる。でも露光のパターンは土台の形状に合わせた補正が困難
多重露光ではなく、一筆書きでパターンを描く方法がある。土台が歪んでもそれに合わせて配線や、画素を描く。原理的に2400万から1億個もの画素を一筆書きで土台の補正に合わせながら描くことは可能だ。
数本(数千または数万本か)のレーザーが、それぞれ個別に最初に描かれた画素をマークし、土台の歪みを補正しながらパターンを描く。現実的かどうかは別として、できないことはない。
もう一つの裏技は画素半導体の作製法。
現在は決められた場所に種を撒いて、各種プロセスで成長させるようなやりかた。プロセスの数が多いと土台の歪みの影響が大きい。種を成長させるのではなく、出来上がった半導体を決められた場所に持ってきて配置する方法もある。
配線だけはなんとか描いて静電引力で配置する方法。詳細はここでは書かない。
現在は決められた場所に種を撒いて、各種プロセスで成長させるようなやりかた。プロセスの数が多いと土台の歪みの影響が大きい。種を成長させるのではなく、出来上がった半導体を決められた場所に持ってきて配置する方法もある。
配線だけはなんとか描いて静電引力で配置する方法。詳細はここでは書かない。
いずれにせよ、なかなか大変ってことは判る。
この「基板の上に画素を高精度に配置する」ができていれば、フィルム基板を使ったE-inkも実用になっていたと思う。
さて、なんとか画素をフレキシブル基板の上に精度よく配置できたとしよう。そして画素の特性バラツキも無いとしよう。
でもフレキシブル基板は緩やかに酸素や水分を透過するので、有機ELの発光物質を破壊する。
それを補う為には基板にガスバリア性を持たせる必要がある。
結晶性高分子の場合、分子間は結晶格子を作る程度に接近するから酸素分子も通過しにくい。だが、非晶性(アモルファス)高分子は分子間が密ではないので、酸素分子はその空間を抜けて行く。
結晶性高分子は湯掻く前の素麺の束をイメージすれば良い。
この特性は面倒な事も抱えている。結晶性高分子の単結晶は形成できない(高分子は紐。長さもまちまち。さらに分岐もある。素麺の様に揃えて行くとどこかで異常格子を生じる。これは意図しない隙間となる、結果として多結晶体となる)ので、光を散乱する(コンビニの袋が良い例だ)。つまり白濁する訳だ。また、ポリエチレンの荷造り紐の様に縦方向は強いが横方向はボロボロになる。それだと心地よくないのでアモルファスを選ぶ。すると・・・。結晶性高分子を架橋する手もあるが、しなやかさが失われとか、まだ材料が開発されていない。ゴマ粒が酸素分子と考えたら緊密に整列している素麺の束をすり抜ける事はできない
アモルファス高分子はインスタントラーメンを袋から出した時をイメージすればよい。麺の縮れがあるから隙間が多い。だからゴマ粒だとすり抜ける事ができる。
結晶性高分子よりも分子間力が大きく、分子間距離が小さいPVAはアモルファスでが高い酸素遮断性を持つ。しかし、水溶性であること、耐熱性が無いことから基板への採用は難しい。
そして次の課題が曲がる基板の画素の上に発光物質を『精度良く』配置する事だ。
土台となる基板が歪むとマスク蒸着であろうが、インクジェットであろうが、混色が生じる。
つまり赤の表示エリアに緑や青の発光物質が入る事。これで色純度は一気に低下する。
コレを防ぐには各画素を囲むブラックマスクが必要だ
自発光型だからブラックマスクは不要の様に思えるが、実は必要だ。
発光層は画面と鉛直方向だけではなく画面と平行な方向に光る。画面と鉛直方向をZ軸とすればX軸とY軸方向に光るという事。また、画面の後ろへも光るので画面と垂直な方向への光は全体の1/6となる。画面と平行なXY軸への発光は隣接する他の画素へ光を供給する事となり、結果的に混色を招く。この混色を防ぐ為にはブラックマスクが必要。
自発光型は点光源でもパワーロスは無いので、太いブラックマスク設置による低開口率でもコントラスト比は問題にならないだろう。だが、開口率が小さいことは発光エリアが小さいわけで、単位面積アタリの輝度が同じなら高開口率ほど高輝度になることを考えると低開口率は好ましくない。なお、ブラックマスクはもしかしたら光描画でできるかもしれない。
フレキシブル土台の上になんとか画素を並べて、発光層とブラックマスクも設けたとしよう。次は共通電極が必要だ。
ここで、トップエミッションかボトムエミッションかという問題がある。この共通電極側から光を取り出したい。トップエミッションだ。そうなると共通電極は金属ではなくITOやネサ等の透明電極が必要だ。
ここはパターンが不要なのでなんとかなる。がこのままでは透明電極がむき出しなので、ガスバリア性の高いシリカやアルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミ等(混ぜたらサイアロン(SiAlON))を成膜し、保護用の樹脂を貼付して完成かな。
内部応力
リジッド・剛体ではないフレキシブル基板(超薄型基板を含む)は成膜の内部応力による変形(反り)を生じる。
引っ張り応力か、圧縮応力かで反りの方向は変わる。この内部応力は材料、膜厚、パターン、吸湿率、そして成膜時の温度に依存する。速い話、焼いたするめの様にクルクルっと反るのだ。
例:PETのフィルム基板とする。
線膨張率係数が2X10-5[/deg(C)]つまり1℃の温度差で1m=1,000,000[micro m]が1,000,010[micro m]に伸びる。
成膜時が75[deg/C]で、使用時が25[deg/C]、温度差が5[0deg/C]だと1mの基板は1,000,500[micro m]に伸びる。
基板の厚みを0.2mm、幅を500mm(4kなら縦横比率は2対1)とすると断面積が100[mm2]なので1[cm2]となる。
引張弾性率が32,000-42,000[kg/cm2]であるから、断面積が1[cm2]の場合、1%の歪みに対して32tonが必要という事。
今得られている熱による歪みが500[micro m]なので0.05%の歪みなので、
印加される応力は0.05/1.00×32ton=1.6tonとなる。
つまりそれだけの内部応力が成膜面に圧縮応力として基板に印加される。
するとその内部応力を緩和するため、基板は成膜面が非成膜よりも0.05%伸びる様に反る。
線膨張率係数が2X10-5[/deg(C)]つまり1℃の温度差で1m=1,000,000[micro m]が1,000,010[micro m]に伸びる。
成膜時が75[deg/C]で、使用時が25[deg/C]、温度差が5[0deg/C]だと1mの基板は1,000,500[micro m]に伸びる。
基板の厚みを0.2mm、幅を500mm(4kなら縦横比率は2対1)とすると断面積が100[mm2]なので1[cm2]となる。
引張弾性率が32,000-42,000[kg/cm2]であるから、断面積が1[cm2]の場合、1%の歪みに対して32tonが必要という事。
今得られている熱による歪みが500[micro m]なので0.05%の歪みなので、
印加される応力は0.05/1.00×32ton=1.6tonとなる。
つまりそれだけの内部応力が成膜面に圧縮応力として基板に印加される。
するとその内部応力を緩和するため、基板は成膜面が非成膜よりも0.05%伸びる様に反る。
これをどうやって解決するのか見物だ。
この辺のフィルムの機械的特性とプロセス温度の関係は非常に複雑で重要だ。
考える程フィルムで大型基板を作る事が難しい事が判る。
しかし、フィルム以外のフレキシブルなモノは存在する。
例えば金属箔。フォイル。熱膨張係数は樹脂の1/10以下。ガスバリア性は問題ない。
しかし、トップエミッション限定、回路と基板本体との電磁気的干渉は防げない。
あとは・・・(C or G)FRPか。だが巻くという目的から外れる事が課題。
TVのフレキシブル化は本当に必要なんだろうか?というのは置いておこう。
あと、材料的に難しい課題を解決するよりもウェラブル端末になるとディスプレイが不要になる。
もし、眼鏡のツルからレーザーで手のひらに画像を表示したらどうだろう。
スマホを持ち歩く必要は無くなる。Google Glassはまだそれはできていないが・・・。
こういう風に違う分野から目的を狙って攻め込んでくる可能性は高い。