仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「狐闇」 北森鴻

2006-05-28 11:20:46 | 讀書録(ミステリ)
「狐闇」 北森鴻

お薦め度:☆☆☆☆+α (初めて北森作品を讀む人には☆ 、北森ファンなら☆☆☆☆☆! )
2006年5月23日読了


「冬狐堂」シリーズの第2彈。

第1作 「狐罠」 で殺人事件に卷きこまれた旗師の冬狐堂・宇佐見陶子が、またしても狡猾な罠に絡めとられてしまふ。
今囘のブツは銅鏡である。
さう、あの古墳から發掘される、大昔の鏡だ。

競り市で入手した、2枚の「海獸葡萄鏡」のうちの1枚が「三角縁神獸鏡」にすり替つてゐたことが事件の發端。
このことがきつかけで、陶子は大きな、とてつもなく大きな事件に卷きこまれてしまふ。
繪畫の贋作作りの容疑者にされてしまつた陶子は、古物商の鑑札を剥奪され、骨董の世界で生きてゆくことさへ困難な立場に立たされてしまふ。
日本の古代史と明治維新に關はる大事件に、陶子はいかに立ち向かつてゆくのか。

この作品では、陶子の周圍の仲間たちが陶子を助けて活躍する。
友人のカメラマンの硝子はもちろんのこと、先日讀んだ 「孔雀狂想曲」 の主人公、「雅蘭堂」越名集治も登場し、孤立無援の陶子を支へてくれる。
そして、民俗學者の蓮丈那智と陶子が出會ひ、那智も陶子の味方になる。
そればかりか、蓮丈那智シリーズ第1作 「凶笑面」 の第4篇「雙死神」はこの時の話だつたのかと氣づかされる。
もちろん、 「三軒茶屋のとあるビア・バー」 もしつかり登場する。

つまり、北森作品の骨董・古美術世界が、この作品に集約され、まるで同窓會のやうな世界を形成してゐるのだ。
讀者としては、それぞれのキャラクターに向つて、
やあ、お久しぶり、元氣にしてゐたかい?
とでも云ひたくなる。

さういふ性格の作品なので、この作品から北森鴻の世界に入ることはお薦めできない。
少なくとも前作と、上記リンクを張つた作品を讀んでからにしたはうがいい。
しかし、それだけに北森ファンにはたまらない作品である。


2006年5月23日読了


狐闇

講談社

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