ビートルズ來日４０年に思ふ

ＮＨＫの９時からのニュース番組で、ビートルズ來日４０年の特集をしてゐた。
ゲストは寫眞家の淺井愼平さん。
彼は來日したビートルズの密着取材を許された唯一のカメラマンだつたのださうだ。

１９６６年６月２９日、羽田に降立つたビートルズ。
６月３０日には日本武道館で初のコンサート。
當時、武道館といへば、柔道や劍道などの武道の大會を始めとして、硬いイベントが行はれる場所だつた。
かくいふ私も少年劍道大會に出場したことがある。
そんな場所で長髮の不良外人が譯のわからぬ音樂をやるといふので、當時の良識ある大人達は眉を顰めたものだつたらしい。
當時の映像を見ると、觀客の叫びこゑで肝腎の演奏は絶え絶えに聞えるのみだ。
そして、前座を勤めたのが、あのドリフターズ。
え？ドリフターズつてバンドだつたの？
さう、バンドだつたのだよ！

當時、私は６歳になるやならずの子どもだつた。
勿論、立ち讀みしてゐた少年雜誌の特集記事などで彼らのことは少しは識つてゐた。
しかし、彼らの音樂に接するには幼過ぎ、漠然と單なる社會現象のひとつとして感じてゐたと思ふ。

私がビートルズ音樂に觸れたのは、確か１９７３、４年のことだつた。
１９７０年にはすでに解散してゐたビートルズだつたが、その頃には再結成の噂で持ちきりだつた。
中學生だつた私も、東京まで、「ヤア、ヤア、ヤア」「ヘルプ」「レット・イット・ビー」などの映畫を見に行つた。
もちろん、小遣ひを貯めて、ＬＰも買つた。
最初に買つたＬＰは「Please please me」だつたかな？
それとも「赤盤」？
當時はＬＰ１枚２３００円だつた。
私は自分があと１０年早く生まれてゐたら、彼らのコンサートを聽きにいけたものをと悔んだものだ。
いはば、遲れてきたビートルズ・エイジといふ世代である。

彼らが來日して、今年で４０年。
私も既に中年。
當時コンサートを聽きにいつた人達は、還暦前後なのだらう。
ジョンが殺され、ジョージも亡くなつてしまつた今、ビートルズは私たちの心の中にしかゐない。
そして、心の中にビートルズがゐることを倖せに思ふ自分がゐる。