仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「影踏み」 横山秀夫

2007-03-25 19:36:01 | 讀書録(ミステリ)
「影踏み」 横山秀夫
お薦め度:☆☆☆ /
2007年3月6日讀了


7編からなる連作短篇集。

横山秀夫の作品としては異色の作品だと思ふ。
といふのも、ひとつには、この短篇集は犯罪者の視點で書かれてゐるといふこと。
また、もうひとつ、主人公が異常な状況に置かれてゐるといふこと。

異常な状況とは、どういふことか。
じつは主人公・眞壁修一の内部に、雙子の弟・啓二がゐて、二人は修一の意識の中で會話するのだ。
啓二はかつて盜みに手を染め、絶望感に捉はれた母に無理心中を企てられて燒死してゐる。
そして、修一と啓二はかつて同じ女性を愛してゐた。
その啓二がいま修一のこころに住んでゐる、さういふ設定なのである。
かういふ、超現實的な状況設定は、ほかの横山秀夫作品には見られない。

タイトルの「影踏み」とは、作中での文章に、
「雙子といふものは、互ひの影を踏み合ふやうにして生きてゐるところがある。」
といふ箇所があることから、この異常な状況を表はしてゐることがわかる。

ミステリーとしても十分樂しめるが、人によつては、この異常な設定を受け容れにくいかもしれない。
私もじつはそのひとりだ。
中途半端なのだ。
かういふ設定で書くのであれば、もつとその異常さを掘り下げて書いて欲しい。
兄と弟の葛藤そのものを描くことが、それだけで重厚な作品になつただらうと思ふのだ。



影踏み

祥伝社

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