仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

『 死神の精度 』 伊坂 幸太郎

2009-07-09 11:58:06 | 讀書録(一般)
『 死神の精度 』 伊坂 幸太郎

お薦め度 : ☆☆☆+α
2009年7月7日讀了


じつは昨年讀んでゐたのを忘れて、ネットで注文してしまつた。
表紙に見覺えがあることを不審に思ひながら讀み始めたのだが、すぐに讀んだことがあるのに氣づいた。
でも、せつかくなので、そのまま讀み續けた。
去年は本を讀んでもレビューを書くことが出來なかつたので、かういふことになる。
レビューは書けなくても、讀んだといふ記録だけは殘したはうが良ささうだ。


「死神」を主人公にした、6篇からなる連作短篇集。

「死神」の仕事は、「死」を豫定された人間について1週間で調査し、「死」について「可」なのか「見送り」とするかを報告する。
そして「可」とした場合には、8日目に訪れる「死」を見屆ける。
ただし、おほかたの場合は「可」で、「見送り」とするのはレアケースらしい。
本書でも「見送り」とされたのは1つだけ。
その判斷基準については、本書を讀んでもよくわからないが、「死神」の主觀に任されてゐるのだらう。

「死神」は、最長で1週間、對象者に接觸して調査するのだが、この調査期間で對象者の人生の斷片が浮び上がる。
本人は知らないにせよ、間近に迫つた「死」を前提に見る「生」は、それぞれに味はひ深い。
「死神」のドライな、對象から距離をおいた視點から眺めるので、いつそう味はひ深さが増すのかもしれない。

6篇は基本的には獨立してゐるのだが、なかには繋がつてゐるものもある。
また、6つの話の間には、かなりの時間が經過してゐることも、あとからわかるやうになつてゐる。
このあたりは讀者へのサービスかもしれないが、讀んでゐて、「ああ、あの時の・・・」と氣づくと、なにか懷かしい氣持ちになる。



死神の精度 (文春文庫)
伊坂 幸太郎
文藝春秋

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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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お久しぶりです (coollife)
2009-07-10 18:45:26
私は個人的には,この「死神の精度」が伊坂さんの最高傑作だと思っているんです.
物語の背景に流れている,雰囲気が良い感じですし,物語と他の物語との連携も良いです.
死神自身の,ちょっと揺れ動いているくせに,それを読者には隠そうとする態度も私の好みです.
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coollifeさん (仙丈)
2009-07-10 23:28:10
ご無沙汰してゐます。
私は伊坂作品のなかで最初に讀んでショックを受けたのが「オーデュボンの祈り」でした。
讀後のレビューを確認したら、「新しい才能の出現」とまで書いてゐました。
それ以來、伊坂作品は(文庫になると)讀むやうにしてゐます。

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