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著者名 :宮部みゆき 発行年(西暦) :2004年
出版社 :講談社文庫 値段 :1000-1500円
お薦め度 :☆☆☆☆
宮部みゆきの「時代物」ミステリー。
宮部みゆきには、『本所深川ふしぎ草子』など、江戸時代を舞臺として日常的な謎を描いた作品も多い。
本書も廣い意味ではその系統である。
本書の構成は工夫されてゐる。
私の讀んだのは講談社文庫なので、上下の2卷本なのだが、
上卷の中ほどまでで5遍の短篇を讀むことになる。
ここまで讀むと、登場人物が一緒の、長屋を舞臺にした連作短篇集だと思ふ。
しかし、これらの短篇は、次に續く長篇の導入部になつてゐるのである。
いはば、謎の提示部分である。
ここで提示された謎が、長篇で解き明かされて行く構成になつてゐる。
それにしても、あいかはらず宮部みゆきの人物造形のうまさには感心する。
登場人物一人ひとりが實に魅力的なのだ。
まず主人公は、ものぐさな「ぼんくら」役人の平四郎。
そして、平四郎にいつも付き從ふ、中間の小平次。
何故か、若くして鐵瓶長屋の差配役にされてとまどう佐吉。
鐵瓶長屋の住人で、長屋の「心」、お徳。
長屋に越して來た、女郎あがりの、おくめ。
平四郎の妻の甥で養子候補の弓之助。
テープレコーダーのやうに、なんでも覺えて再現する、「おでこ」こと三太郎。
また、宮部ファンご存じの、囘向院の茂七も、名前だけだが登場する。
なんと本書では、すでに米壽で現役を退いてゐる。
宮部みゆきが、人間と云ふ存在に注ぐ暖かい眼差しは、本書でも隨所に現はれる。
讀んでゐて、こころの奧のはうがほんのりと温つてくる、そんな作品である。
本書は、『理由』を讀んで感じた物足りなさを充分に補つてくれた。
これぞ「宮部みゆきワールド」の眞骨頂であらう。
2004年5月9日讀了
大好きな作家さんの一人です。
このほかにも、たくさんTBしてくださって感激です。
これからもよろしくお願いします。
また、寄らせていただきます。
コメントありがとうございます。
調子に乘つてたくさんTBしてしまひました。
お許しくださいまし。
これからもヨロシクお願ひしますね~