3月2日
『魔の山』トーマス・マン 高橋義孝訳
1912年に着手され、1924年に発表されたマンの代表作のひとつ。
高校1年(1976年)、山岳部夏山合宿の後で読んで以来46年ぶりの再読。
『人生の厄介息子』ハンス・カストルプ。
ハンス・カストルプが惹かれるショーシャ夫人。彼女の存在を意識しまくるその心持ちはぼくの小学校の頃の初恋を思い出させてくれた。
セテムブリーニとナフタ。フリーメイスンとイエズス会士、生と死、健康と病気、自然と精神。
ぼくは新型コロナウィルスに感染して微熱に浮かされつつベッドの中で読んだので、この二人の議論はキツかった。
下巻の「雪」の章。
吹雪の中で遭難したハンス・カストルプ。わづか10数分の間に経験した幻影と思念、極限状態にある時、そんな経験をしても不思議はない。
魅力的な人物、ペーペルコルン。
人の魅力は理屈や言葉ではない。
その傑物が亡くなり、物語の時計は進む。
奇妙な降霊会、教師たちの決闘、そして第一次世界大戦の勃発…
実に長い物語だった。18日かけてやっと読了。
46年前に読んだ時の印象と全く違う印象を受けた。
修飾句の長さに辟易し、日本語の宿命を改めて感じさせられた。
3月5日
『京都の定番』柏井壽
初読。
「割烹はらだ」が紹介されていた。
ブログを調べてみたら2010年6月5日に訪問していた。
当時はまだプータローだったが、何度も京都に足を運んでいた。
ブログには、付き出しの白ずいきのおひたしが旨いと書いていた。
出汁が絶妙だったらしい。
さて、この店のご主人曰く、常連さんにミステリー作家の柏木圭一郎さんというかたがいて、作品中にこの店も登場するのだとか。
そんなことを思い出して読み終えたら、作者紹介に柏井壽さんがすなわち柏木圭一郎さんだと書かれていた。
なんとまあ!
『鴨川食堂』で初めて知った柏井壽さんが12年前に教えていただいた柏木圭一郎さんだったとは!
縁は異なものですねー
他にも元嫁が好きで買い物に付き合った「一澤帆布」や学生時代にお世話になった「進々堂」なども紹介されていて、ほっこりしたのでした。
3月7日
『せつない京都』柏井壽
初読。
京都の長い歴史の中には悲しい物語がたくさんある。
そんなせつない物語の舞台となったところを巡ってみたくなる。
3月8日
『終電の神様 台風の夜に』阿川大樹
初読。
『終電の神様』シリーズ第3作。
阿川大樹という作家はこのシリーズしか読んだことがない。
文体から若いと思っていたら、ぼくより6つも年上だった。
東京大学出身で劇団を立ち上げたり、シリコンバレーのベンチャー設立に携わったりと、多彩な経歴の持ち主だった。
第一話と最後の第五話とが連携していて、救われた。
3月10日
『終電の神様 殺し屋の夜』阿川大樹
初読。
シリーズ第四作。
第三話「月の誘惑」がいい。
そう、逃げていいんだ。
3月12日
『希望の地図』重松清
初読。
ドキュメントノベル。
2011年9月11日、不登校の中学一年生が東日本大震災の取材に同行することになる。
「夢」と「希望」の違いか…
そういえば、「夢も希望もない」なんて言いかたもあるなぁ。
リレーのバトン。
ぼくには渡すバトンがあるのだろうか。そして渡すべき相手はいるのだろうか…
3月14日
『希望の地図 2018』重松清
初読。
東日本大震災から7年後のルポルタージュ。
東日本大震災だけではなく、その後の自然災害や、1995年1月の阪神淡路大震災にも筆は及ぶ。
久しぶりに宝塚で経験したあの時のささやかな被災生活を思い出した。
大阪から水とおにぎりを積んで六甲アイランドに向かった時の惨状。
いたるところでビルが倒壊し、炎と煙が立ち昇る街並み。信号はストップして道路はひび割れ、ふだんなら1時間とかからないのに10時間以上かかった。
それでも六甲アイランドシティの住民の皆さんの感謝の声に疲れも吹き飛ぶ思いがした。
ま、その後はいろいろ人間の嫌なところもたくさん知ったけれど。
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