Magical Power Mako マジカルパワーマコ 「A Night at the Hawk Wind」
マジカルパワーマコのアルバム「A Night at the Hawk Wind」が遂に発売となりました。私は一部、演奏にも参加し、録音、ミックス、ジャケットのデザイン、そしてCDパッケージの組み立てまで、本当にすべてをセルフで行い、無事、流通会社であるブリッジへの配送を終えたばかりです。内容は素晴らしく、自信作であります。みなさん、是非、お買い求め下さい。
1. rising the night 8:32
2. shangri-la 14:13
3. welcome to the earth 12:39
4. voice of Moscow 1:14
5. a night at the hawk wind Ⅰ 8:03
6. a night at the hawk wind Ⅱ 9:30
7. space station 6:13
composition and improvisation by Magical Power Mako
Magical Power Mako guitar orchestration and vocal
Guest player
Anal chan voice(1.2.5.6)
Miyamoto Takashi electric bass(2.5.6)
Moscow Disco iKaossilator (rythm) (5.6)
Live recording by Yamaguchi Michio
at Live Bar Hawk Wind Kyoto 2/21/2014
Mix and edit by Miyamoto Takashi
Mastering by Owa Katsunori
at Studio You Osaka 4/23/2014
Cover design by Miyamoto Takashi and Ishigami Kazuya
Special thanks to Kurata Kenichi,
Hirokawa Yu, Ito Tadao,Ishigami Kazuya
Produced by Miyamoto Takashi
以下、ライナーノーツを抜粋いたします。
<2014年の‘welcome to the earth’>
弾き語りによる‘welcome to the earth’で繰り出される奔放なギターテクニックを目の前にした私はマジカルパワーマコの印象を新たにする思いであった。それはギタリスト、ボーカリストとしての彼の原型的な姿であっただろうか。ブルースやトラッドのスケールを交差させ、音色を変化させながら多様なリフを連発し、即興の歌を素早く展開させてゆくマジカルパワーマコに実験的アーティストならぬプロフェッシャナルなミュージシャンそのものの姿を発見し、過去の音楽作品に見られるイメージとは違う多面性を見たと言っていい。それは私にとって新たな喜びでもあった。2014年2月21日。その日、私はマジカルパワーマコに遭遇したのである。
「僕の前には誰もいなかった」
マジカルパワーマコがそう自負する時、私達は彼のデビューアルバム「マジカルパワー」(74)の奇想天外さを想起するだろうか。武満徹をして「この1枚のアルバムは音楽に存在する見せかけの階級区分を打ち砕く美しい石なのだ」と言わしめたその音楽性はあらゆるカテゴライズを拒み、同時代的共振性を示さない孤高の異物として提示された。
私が「マジカルパワー」を聴いたのは82年頃だったが、表面的なミュージックコンクレート的な印象とは裏腹にその音楽の‘大きさ’に当時、熱中していた欧米の実験的なニューウェーブの‘先端性’を軽く凌駕するスケールを感じた事を覚えている。私にとっては「マジカルパワー」は大きな音楽、いわば‘大音楽’であった。
そんな幾分、抽象的な感慨は「マジカルパワー」にあった驚異感覚に由来していたのだろうが、当時のニューウェーブシーンがあらゆる‘更新’を提示しながら、音楽を方法論や概念に依頼するいわば‘現代音楽’化する様相も一方で見せていた事による音楽の特殊化現象という‘小ささ’との比較において、「マジカルパワー」が時代性を無効にするような大きな力を持っていると直感し、その素の自然体から生まれ出たような音楽性には当然ながら理論武装も必要なく、従って私にとって「マジカルパワー」は普遍的な作品に映ったのである。
私がマジカルパワーマコというアーティストを知ったのが、当時、購読していた「マーキームーン」という音楽誌に掲載されたアルバム「welcome to the earth」(1981年 東芝EMI)リリース時のインタビュー記事によってであったが、確かそこで彼は‘クロスオーバー’‘AOR’という言葉を口にしていた事を記憶している。ある意味、意外な単語だったのでおそらく間違いない。私は彼の趣向がその実験性とは裏腹に何か‘温かいもの、ヒューマンなものにそのベクトルを持っていると推測し、その通り、「welcome to the earth」はテクノポップという当時の潮流に合わせたコマーシャルな制作ながら歌心溢れる楽曲を並べたもので彼の本質が伺えるものであったと思う。そこには「マジカルパワー」の驚異感覚はないが、プロフェッシャナルなソングライターとしてのマジカルパワーマコの本領発揮が余計、興味深く感じられ、更には次号の「マーキームーン」誌の付録についたソノシート「music from heaven」での壮大な瞑想的ドローンサウンドを体験するに及び、このアーティストの広角な音楽性に限りがない事を認識し、その予測不可能なアーティストシップに改めて驚異を感じたのであった。
京都の元田中にあるHawk Windは雑居ビルの二階にあるアットホームなライブバーである。2014年2月21日。その日、この小さなスペースは正に大宇宙と化した。<あなるちゃんVSマジカルパワーマコ>と題されたイベントは事前の打ち合わせもなしにその大凡を即興演奏が占めるプログラムであったが、全体が何か不思議な力によって動かされているかのような物語めいた展開になり、結果的に奇跡的なライブ演奏となったと思っている。
そのライブは先発のあなるちゃんのソロパフォーマンスの途中、マジカルパワーマコが入り、ループを使用したギターオーケストレーションを展開する。その音源が一曲目の「rising the night」である。そしてドラムに回り、しばしの間、あなるちゃんとのデュオに興じた彼はやがて私(ベース)を手招きしステージに呼んだ。このあたり非常に場当たり的で偶発的でもあったが、ギターに戻った彼が深く、広がりのあるイントロダクションを弾き出し、私はそれに応じる形でメロディを重ねるが、すぐにサンプリングの四つ打ちビートを発した事で全体がグルーブの世界へ突入する。そこから仕込み音源を交えた全くエキサイティングな展開でまるで作曲されたビートナンバーのような趣となった。それが2曲目にまとめた「shangri-la」である。私が勝手にタイトルを命名したこの2トラックはライブの前半部分のハイライトであり、この日のライブが素晴らしくなる確信を得た演奏でもあった。休憩をはさんだ2部はマジカルパワーマコによる弾き語りによる「welcome to the earth」で始まった。1981年にリリースされた時のテクノバージョン、あるいは後、「lo pop diamonds」(97)に収録された‘オリジナルバージョン’とも違う新しいアレンジによる試みであった。特に私は日本語の歌詩でメッセージを展開したことに新鮮な驚きを禁じ得なかった。そして冒頭に書いたように、「welcome to the earth」を起点とし、そこからメドレーのように次々と異なるギターフレーズを繰り広げ、即興のボイスを展開するマジカルパワーマコは正しく変幻自在のミュージシャンであっただろう。最後はkyoko Moscow disco kimura(クレジットはmoscow discoとなっている)のiKaossilatorに導かれながら即興のセッションとなった。「a night at the Hawk Wind Ⅰ」と「a night at the Hawk Wind Ⅱ」がそのテイクである。完全な即興演奏がまるで示し合わせたかのような構成で展開されるトラックになっており、絶妙と言った瞬間が随所に見られるのは本当に何かの力に突き動かされたと思えるほどだ。ラストトラック「space station」は「rising the night」でのギターループを発展させてミックス制作したトラックである。