昨年のリリースに気が付かず、一昨日、ナスノさんから購入。フェイバリットなバンドだけに興味津々で聴く。いや、このエッジの効き方はもはや孤高。30年にも渡って刺激的であり続けるとは如何なることか。バンドによるImprovisedと内橋氏によるrecomposedがクレジットされた各トラックは連続的でありながら個別の顔を持つ特性を示し、即興演奏にポストプロダクションとして作曲されたギターのフレーズを加えることでレコーディング作品としての完成度を持った。以前の数々の作品に見られた潔いばかりの一発録音主義を脱し、結果、音響的効果と共に多層的な奥行き、前後感覚の強いトラックが並ぶ。実際、ギターに関しては即興演奏時にディレイ、ループも用いていると思われ、どの部分が多重録音によるものなのか判別が難しい程、絶妙な演奏、ミックスとなっている。ナスノ氏の微妙にファズが効くベースも美しく、静から動へダイナミックに移行する芳垣氏とのリズムコンビネーションは長年、培われた稀有のもの。
「更の宵」Sara no Yoi
即興パフォーマンス Improvised Performance
向井千惠 MUKAI Chie [二胡er-hu, voice, dance]
Nobuhiro Okahashi [ambient]
宮本隆 MIYAMOTO Takashi [bass]
江崎將史 EZAKI Masafumi [performance]
松田博幸 MATSUDA Hiroyuki [performance]
open 17:30 / start 18:00
adv 2000yen / door 2300yen
@BIG APPLE, kobe
神戸市中央区山本通3-14-14
トーアハイツB1
トアロード西側
三ノ宮駅、元町駅より13分
バス停「山本通3丁目」すぐ前
http://www.geocities.jp/kbigapple/
078-251-7049
ナスノミツル Sounds from Heavenly lights @ environment 0g(大阪、大阪)
11月 23 @ 5:00 PM – 9:30 PM ナスノミツル Sounds from Heavenly lights @ environment 0g(大阪、大阪) -Sounds from Heavenly lights- open 17:00 start 18:00 charge 2500+ drink order act:
◍ナスノミツル solo (electric bass) ◍ マジカル・パワーマコ(g,vo) and L5BAND (宮本隆b+松元隆ds) with guest MakikoYY (key) ◍長野雅貴+ Kazuto Yokokura ◍ Kenji Tsuda (visual) @ environment 0g [ zero-gauge ] 大阪市西区南堀江3-6-1 西大阪ビルB1 https://nuthings.wordpress.com
アーチー・シェップを崇拝していた年上の女性サックス奏者。80年代、二十歳代の頃、東京で知り合い、たまに会うといつも真面目な話をした。ジャズ喫茶に入って音楽の話や時には政治や思想の話に熱が入る事もあった。彼女は暗かった。そう言う私も暗かったが、そのくせ、バブル真っ只中の世間の幸福感に同化したいという欲求が常にあった。彼女もいなかったし。対しそのサックス奏者はそんな浮かれた世相に背を向け自分を貫く態度があった。深夜、新宿のジャズ喫茶でいつものようにマジな話をした後、地上に出た時のけばけばしいネオンの眩しさに訳もなく絶望的になった事を記憶しており、それは漠然とした夢や喧噪、笑顔、楽しむ営為といったものを無理に遮るかのようなコントラストを描いていたと思う。彼女は今、どうしているのかな。アーチー・シェップが好きだと言う女性がそんなにいるとは思わない。シェップの80年代以降の‘軟化’を嘆き、「これからはデビッド・マレイ、オリバー・レイクしかいない」と‘宣言’する様はある意味、救いようがなかった。しかし、その生真面目さが懐かしい。
コルトレーンばり疾走するフリージャズの「steam」は私のフェイバリットだが彼女の事を思い出してしまうレコードでもある。しかし90年代のバラッドアルバムの連発も今となっては好きになっている。それはエリントン・オーケストラを聴き始めた事がきっかけだった。私はエリントン・オーケストラの中にシェップを発見した。それはベン・ウェブスターという演奏家だった。シェップと音色が極めて似ている。シェップのルーツを見た気がした。フリージャズの闘士と言われたアーチー・シェップの基礎にブルース、バラッドがある事の確認だったと思う。いや、その晩年のアフリカ志向からも窺えるのはエリントン以来の広いブラックミュージックそのものの後継と伝播こそがシェップの生命線だった。
2021.11.15