しばらく夫婦で旅行に行くことがなかった。
仲が悪かったからなのかどうかは、我がことながら定かでない。
ちょうど家内が定年退職(すぐに再任用で引き続き働くのだか。)の
区切りでもあるし、かねてからお伊勢さんに行きたいと彼女は言い続けていたし、
気分転換にもいいかなと思い、重い腰を上げて、お伊勢参りに出かけた。
大阪からだと往復高速道路で、約400キロ、5時間ほどである。
元気な頃だったら、日帰りも可能な処なんだろうけど、なにせ体力に自信がない。
それにせっかくなので、ゆっくり見れる処はすべて見たいと思い、
神宮近くの女性向けのホテルに一泊することにした。
家内の定年退職の祝いもあるので、
食事の美味しいところで、部屋に露天風呂があったりと、ちょっといい宿を奮発した。
・・・愛犬は家で娘が面倒を見てくれた。
肝心のお伊勢参りは、江戸時代から親しまれていたルートで回ってみた。
初日は、二見が浦で、夫婦岩・二見興玉神社、賓日館(ひんじつかん)を見、
そのあと、伊勢うどんを食した後、伊勢神宮・外宮を巡り、その日は宿で一泊。
次の日、朝早くに、伊勢神宮・内宮をすべてゆっくりお参りし、
そのあとは、おはらい町・おかげ横丁へ立ち寄り、赤福を食べ、
伊勢醤油や石蓴を土産に買って、混み合ってくる中、
伊勢志摩スカイラインを登り、朝熊山・金剛證寺へ。
朝熊山の頂上は、天気が良ければ、富士山まで見通せるようで、
紀伊半島の山山の起伏が自然のたえなる仕業で、美しい景色に仕上がっている。
神秘的な気配を醸し出して、日本の古来からの山の風景を見せてくれる。
遠路、一生に一回の伊勢参りの最後の〆に観る景色としては、
朝熊山からの眺望ははずせないだろうな、と思いながら昔人の苦労に思いをはせ、
命懸けのお伊勢参りに過去の人々の人生を感じた次第である。
一泊二日のお伊勢参りだったが、その雄大さに圧倒された。
気持ちが洗われるような空間に、参拝しているときはすっかり浸ってしまって、
身を委ねる感じになってしまう。
心地の良い時間が過ぎるのが自分の中でよく分かった。
そして、その空間を作り上げるための壮大な仕組みにも驚かされる。
脈々と続くその仕組み、営みには畏怖の念さえ抱かされる。
つまり、人間が素直になれる空間なんだな、とお参りを終えて、
しみじみと感じさせられた。
お参りではあまり多くの願いをお願いしてはダメだそうで、
感謝の気持ちを表すのが良いらしい。
ぼくは、家内安全の感謝と、亡くなった愛犬の安寧のみお願いして、帰路に就いた。
無作法だっただろうか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます