<『どん底』 (1936年 95分 フランス 監督 ジャン・ルノワール)
監督 ジャン・ルノワール
原作 マクシム・ゴーリキー
脚本 ジャン・ルノワール
シャルル・スパーク
撮影 F・ブルガース
ジャック・メルカントン
音楽 ジャン・ウィエネル
出演
ジャン・ギャバン
ルイ・ジューヴェ
シュジー・プリム
ジュニー・アストル
ウラジミール・ソコロフ
ジャニー・オルト
悪い女とは、キッパリと別れること
姉のワシリッサ
『私達の将来のためよ.亭主はじきに死ぬわ.その時は静かなところへ行き、良い暮らしを』と、彼女は言い寄るのだが、
『夢は寝て見るものだ』と、ペペルは、二人の将来に夢も希望もないことを、はっきりと言いきった.
『冷たいのね』と、彼女はペペルに対して言ったけれど、彼女の方こそ、夫を事故に見せかけて殺して、一緒に暮そうという、冷たい心の女だった.
『私を捨てたりしたら刑務所に送り込むわ』と、彼女は脅したけれど、それでもペペルは、勝手にしろと全く相手にしない.
『あの老いぼれを始末して.あなたならできる』
『一石二鳥だな.亭主は墓場で愛人は牢獄か』ペペルは、彼女が自分を幸せにする女でないことを、人を不幸にする女なのを見抜いていたのだった.
妹のナターシャ
姉のワシリッサは、泥棒の稼ぎを当てにして幸せになろうとする女だった.
それに対して妹のナターシャは『あんたなんか、掻っ払い、泥棒.捕まればいい』、悪事で稼いだお金では幸せになれないと、はっきりペペルに言ったのだった.そして、捕まればいいと言いながらも、留置場へ差し入れを持ってきてくれる、優しい女の子だった.ペペルは自分のことを本当に心配してくれる、幸せになれる相手を見つけたのだった.
ナターシャは、こき使われても一生懸命働く、けなげな女の子だったけれど、
『私を好きなるのは、酔っ払いか、泥棒だけ』、と絶望していた.酔っ払い、泥棒には、夢、希望はない.
どん底の木賃宿に暮す者たちは、酒を飲みながら、博打に明け暮れる者ばかり.博打で身を持ち崩した男爵であったが、どん底まで身を落としても、まだ、博打に未練があったらしい.酒によって身を持ち崩した役者もまた、酒を断ちきれないでいた.
そんな中で、恋愛の本を無心に読む娼婦の女、ナスティア.彼女は自分が娼婦であっても、純真な愛に憧れていた.彼女は、恋愛物語の本の話に涙を流し、読んだ話を自分の出来事であったように話をする.そんな彼女を、どん底の者たちは、からかい、笑ったのだけど、ルカ爺さんとナターシャだけは彼女の話に聞き入った.
娼婦の女ナスティア、彼女をもう少し書けば、
『まだ寝ないのか』街角に立つ彼女に、こう聞くと、
『今日は休みなの』と答えたのだった.今日はまだ客がいないから、まだ寝るわけには行かないと言うことなのでしょう.彼女は、どん底の暮らしをしていても、愚痴を言わない女だった.
『我れ、復活の道を歩まん』どこかの町の、大きな病院へ行けば自分の病気が治ると言うルカ爺さんの話を、アル中の役者は信じていた.
けれども、『全部嘘だ.お前の行き先は精神病院だ』、と男爵は言い放つ.
『ペテン師はあんたよ.ボロ靴を履いていても、まだ男爵気取りね』と、ナスティアは男爵に怒って言ったのだけれど、しかし、男爵の言うことを信じた役者は、みごとな演技を演じながら、本当に自殺してしまったのだった.
役者も、男爵も、過去の栄光を忘れられなかったらしい.けれども、役者は復活の希望を、どん底から抜け出す希望を抱いていたのけれど、男爵の方は、河原で昼寝をしていたときに、どん底の生活に留まるつもりだと言っていた.
ナスティアは本の作り話を、自分のことのように、本当のことのように話をする女だったけれど、彼女もきっと、どん底の生活から抜け出したかったはず.とすれば、男爵とは逆である.彼女は嘘つきのように思ったのだけど、男爵と逆とすれば、男爵が嘘だと言うことが、彼女にとって真実になる.ルカ爺さんも、ナターシャも同じなのか.
ナターシャは、姉夫婦の陰謀で無理矢理、嫌いな警部と結婚させられそうになり、一度は彼女も諦めて、酔っ払って我を忘れてしまったのだけど.けれども彼女は、ナスティアの作り話の純愛の話を信じる女の子だった.たとえ嘘の話でも、純真な愛のめぐり会いを信じている女の子だった.だからこそ、ペペルは彼女を好きになったはずである.
酒と博打と悪い女、この三つは、どん底に暮す者たちに共通した諸悪の元らしい.
男爵は、博打で身を持ち崩しても、それでも賭博をやめることが出来ない自身を自覚していたのだろうか.伯爵の優しい計らいで横領の責任追求を逃れただけで、本来なら刑務所行きのはずであり、優しい女とも縁を切って、自らどん底へ堕ちてきた.それならば、もう男爵気取りはやめれば良さそうなものである.
アル中の役者の場合は、過去の栄光を忘れることが出来ないならば、お酒をキッパリやめること.
ペペルの場合は、酒と博打は、ほどほどに、そして悪い女とはキッパリと別れること.彼はそうして、どん底の世界から抜け出していったのだった.
悪い女とは、キッパリと別れること.正しく言えば、幸せになれる相手かどうか、自分でよく考えることなのだけど.
泥棒が警察官を殴って惚れた女の取り戻し、幸せになったという、ふざけた話の映画なのですが、悪い女とはキッパリと別れないと、ナターシャのように、純真な愛のめぐり会いを信じる女の子に出会っても、一緒になることはできないのだ、と、言っているのではないでしょうか?
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男爵とペペル
男爵は、裕福な暮らしから、どん底へ堕ちてきた.
ペペルは、どん底から、抜け出そうとした.
描かれたどん底は酷すぎる.当たり前の話だけど、どん底から抜け出さなければ幸せになれない.
姉と妹
姉は、悪事の金で幸せになろうとする、人を不幸にする女.
妹は、悪事を否定して、幸せを願う女.
男爵とナスティア
男爵は、お金を横領して、嘘をついて、どん底へ堕ちてきたのだけど、どん底の暮らしでは、本当のことを言って、どん底から這い上がろうとする者の、夢、希望を奪った.
ナスティアは、娼婦をしながらも、純真な愛に対する憧れを失わなかった.嘘に過ぎない出来事に、どん底から這い上がる夢を託す女だった.
監督 ジャン・ルノワール
原作 マクシム・ゴーリキー
脚本 ジャン・ルノワール
シャルル・スパーク
撮影 F・ブルガース
ジャック・メルカントン
音楽 ジャン・ウィエネル
出演
ジャン・ギャバン
ルイ・ジューヴェ
シュジー・プリム
ジュニー・アストル
ウラジミール・ソコロフ
ジャニー・オルト
悪い女とは、キッパリと別れること
姉のワシリッサ
『私達の将来のためよ.亭主はじきに死ぬわ.その時は静かなところへ行き、良い暮らしを』と、彼女は言い寄るのだが、
『夢は寝て見るものだ』と、ペペルは、二人の将来に夢も希望もないことを、はっきりと言いきった.
『冷たいのね』と、彼女はペペルに対して言ったけれど、彼女の方こそ、夫を事故に見せかけて殺して、一緒に暮そうという、冷たい心の女だった.
『私を捨てたりしたら刑務所に送り込むわ』と、彼女は脅したけれど、それでもペペルは、勝手にしろと全く相手にしない.
『あの老いぼれを始末して.あなたならできる』
『一石二鳥だな.亭主は墓場で愛人は牢獄か』ペペルは、彼女が自分を幸せにする女でないことを、人を不幸にする女なのを見抜いていたのだった.
妹のナターシャ
姉のワシリッサは、泥棒の稼ぎを当てにして幸せになろうとする女だった.
それに対して妹のナターシャは『あんたなんか、掻っ払い、泥棒.捕まればいい』、悪事で稼いだお金では幸せになれないと、はっきりペペルに言ったのだった.そして、捕まればいいと言いながらも、留置場へ差し入れを持ってきてくれる、優しい女の子だった.ペペルは自分のことを本当に心配してくれる、幸せになれる相手を見つけたのだった.
ナターシャは、こき使われても一生懸命働く、けなげな女の子だったけれど、
『私を好きなるのは、酔っ払いか、泥棒だけ』、と絶望していた.酔っ払い、泥棒には、夢、希望はない.
どん底の木賃宿に暮す者たちは、酒を飲みながら、博打に明け暮れる者ばかり.博打で身を持ち崩した男爵であったが、どん底まで身を落としても、まだ、博打に未練があったらしい.酒によって身を持ち崩した役者もまた、酒を断ちきれないでいた.
そんな中で、恋愛の本を無心に読む娼婦の女、ナスティア.彼女は自分が娼婦であっても、純真な愛に憧れていた.彼女は、恋愛物語の本の話に涙を流し、読んだ話を自分の出来事であったように話をする.そんな彼女を、どん底の者たちは、からかい、笑ったのだけど、ルカ爺さんとナターシャだけは彼女の話に聞き入った.
娼婦の女ナスティア、彼女をもう少し書けば、
『まだ寝ないのか』街角に立つ彼女に、こう聞くと、
『今日は休みなの』と答えたのだった.今日はまだ客がいないから、まだ寝るわけには行かないと言うことなのでしょう.彼女は、どん底の暮らしをしていても、愚痴を言わない女だった.
『我れ、復活の道を歩まん』どこかの町の、大きな病院へ行けば自分の病気が治ると言うルカ爺さんの話を、アル中の役者は信じていた.
けれども、『全部嘘だ.お前の行き先は精神病院だ』、と男爵は言い放つ.
『ペテン師はあんたよ.ボロ靴を履いていても、まだ男爵気取りね』と、ナスティアは男爵に怒って言ったのだけれど、しかし、男爵の言うことを信じた役者は、みごとな演技を演じながら、本当に自殺してしまったのだった.
役者も、男爵も、過去の栄光を忘れられなかったらしい.けれども、役者は復活の希望を、どん底から抜け出す希望を抱いていたのけれど、男爵の方は、河原で昼寝をしていたときに、どん底の生活に留まるつもりだと言っていた.
ナスティアは本の作り話を、自分のことのように、本当のことのように話をする女だったけれど、彼女もきっと、どん底の生活から抜け出したかったはず.とすれば、男爵とは逆である.彼女は嘘つきのように思ったのだけど、男爵と逆とすれば、男爵が嘘だと言うことが、彼女にとって真実になる.ルカ爺さんも、ナターシャも同じなのか.
ナターシャは、姉夫婦の陰謀で無理矢理、嫌いな警部と結婚させられそうになり、一度は彼女も諦めて、酔っ払って我を忘れてしまったのだけど.けれども彼女は、ナスティアの作り話の純愛の話を信じる女の子だった.たとえ嘘の話でも、純真な愛のめぐり会いを信じている女の子だった.だからこそ、ペペルは彼女を好きになったはずである.
酒と博打と悪い女、この三つは、どん底に暮す者たちに共通した諸悪の元らしい.
男爵は、博打で身を持ち崩しても、それでも賭博をやめることが出来ない自身を自覚していたのだろうか.伯爵の優しい計らいで横領の責任追求を逃れただけで、本来なら刑務所行きのはずであり、優しい女とも縁を切って、自らどん底へ堕ちてきた.それならば、もう男爵気取りはやめれば良さそうなものである.
アル中の役者の場合は、過去の栄光を忘れることが出来ないならば、お酒をキッパリやめること.
ペペルの場合は、酒と博打は、ほどほどに、そして悪い女とはキッパリと別れること.彼はそうして、どん底の世界から抜け出していったのだった.
悪い女とは、キッパリと別れること.正しく言えば、幸せになれる相手かどうか、自分でよく考えることなのだけど.
泥棒が警察官を殴って惚れた女の取り戻し、幸せになったという、ふざけた話の映画なのですが、悪い女とはキッパリと別れないと、ナターシャのように、純真な愛のめぐり会いを信じる女の子に出会っても、一緒になることはできないのだ、と、言っているのではないでしょうか?
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男爵とペペル
男爵は、裕福な暮らしから、どん底へ堕ちてきた.
ペペルは、どん底から、抜け出そうとした.
描かれたどん底は酷すぎる.当たり前の話だけど、どん底から抜け出さなければ幸せになれない.
姉と妹
姉は、悪事の金で幸せになろうとする、人を不幸にする女.
妹は、悪事を否定して、幸せを願う女.
男爵とナスティア
男爵は、お金を横領して、嘘をついて、どん底へ堕ちてきたのだけど、どん底の暮らしでは、本当のことを言って、どん底から這い上がろうとする者の、夢、希望を奪った.
ナスティアは、娼婦をしながらも、純真な愛に対する憧れを失わなかった.嘘に過ぎない出来事に、どん底から這い上がる夢を託す女だった.