諏訪山岳会公式ブログ

諏訪地域の山好き、クライミング好きが集まって、ウラヤマからヒマラヤまで四季を通じてオールラウンドに活動しています。

明神東稜

2019年01月12日 | アルパインクライミング
ルート:明神岳東稜
日時:1月3~7日
メンバー:O石、N原、U山
 
年明けに明神東稜に行きましたが、ラッセルに阻まれラクダのコブ手前で敗退。 悪天の5日に停滞したことが響きましたが、そもそもピークへの執着心が足りなかったことが敗因だったと思います。


<長七ノ頭から明神を望む>
3日 雪のち曇り
 
入山の3日は5時過ぎに諏訪を出発して、沢渡駐車場に7時に到着。タクシーもすんなりつかまりスムーズに出発することができた。が、運転手さんによれば、たまたま予約の空き時間に乗れただけだったそうで年末年始のタクシー利用は夏と違って事前予約が基本だそうだ。
 
今シーズンは大正池ホテルが改装休業のため上高地入山者は少ないらしく、加えて年明け3日ということもあってか、同時入山は2パーティーのみの静かな出だしとなった。
 
10時前に小雪舞う上高地に到着。積雪はくるぶしほどで少ないが、過去にもこれぐらいの年もあったような気もするので今シーズンがとりわけ少ないという感じはしなかった。


<上高地着>
 
その先、明神で休んでいたら、年季の入った山ヤさんと思わしき単独行者に声をかけられた。話を聞けば、以前、所属する会のパーティーがひょうたん池の下で雪崩遭難し、捜索に半年近くかかって大変だったとか。これから登ろうとする矢先に、あまり気持ちの良い話ではないが、今回は雪崩をケアして東稜末端から取り付くので皆に動揺はなかった。
 
明神でトレースから別れて梓川を渡り、治山運搬路にトレースをつけて東稜末端に12時着。そこから、11月末の偵察で付けたピンクテープを頼りに尾根を登る。

 
            <東稜下部>

 この尾根の下部は、風が吹き抜ける地形なので雪は少ないが、途中3つのヤブ漕ぎ帯があってそこの通過がポイント。下の2つはわりとスムーズに超えたが、最後のヤブは大奮闘を強いられて大いに消耗した。
 
宿泊予定地の2100m付近になって急に雪が増えたが、ほどなくして適地が見つかりテントを設営。ヘッデンが欲しくなる頃になってようやくテントに転がり込むことができた。

釜トン 8:00 ~上高地 9:40 ~明神 11:00 ~東稜末端 12:00 ~2100mテン場 16:00


4日 快晴のち夜半から雪

この日は快晴。入山前の天気予報だと、この先も大きく崩れることはなさそうなので順調に稜線まで抜けられそうだ。


7時に出発。のっけからトップ空身ラッセルとなる。雪はワカンを履いて膝~腰程度。この日は終日、トップ空身ラッセルが続き、3人パーティーだとゆっくり休む時間を取れなかった。こんな時はもう一人いたら行動も随分違ってくると思う。

雲一つない青空の下、右手に下叉白谷をはさんで菱形岩壁、三本槍を眺めながら、9時 長七郎の頭、10時 ひょうたん池とほぼ予定通りのペースで進む。


<長七ノ頭手前>

20数年前にここをトレースしたときは、ひょうたん池からラクダのコルまで5時間ほどだったのでこのペースなら今日はラクダのコル泊かな・・・と思ったがこれは大きな勘違い。前回は、我々以外にも数パーティー10名近くが行動していたのでこの日とはラッセルの負担が比べ物にならない。

案の定、目と鼻の先(?)と思っていた第一階段までたっぷり2時間かかってしまった。


<ひょうたん池~第一階段間>

そこからアンザイレンして、傾斜の強い草付きにロープを伸ばすが、上部で雪深くバンザイラッセルが続いて1P伸ばしたところで時刻はすでに14時。やむなく本日の行動はここで打ち切り、ロープをフィックスして下降。


<第一階段>

さらに取り付きから数100mほど下り、そこに見つけたテント一張分の平坦地を整地をして3時過ぎにテントにもぐりこんだ。

さて、今日は明るいうちからテントに入れたのでゆっくり英気を養って明日に備えましょうと一杯始めたら、GPVを見ていたN原さんから、今夜から明日にかけてまとまった雪が降りそうだという思いもよらない情報が・・・。
そんなはずはないと天気予報を見てもらったら、今夜半から明日にかけて寒冷前線が通過するそうで入山前の予報から状況が大きく変わってきているようだ。

そうなると気になるのは我々のテントの上に広がる一枚斜面。まとまった雪が降ると雪崩が怖いので、ほろ酔い気分を切り換えて、つい先ほど解いたばかりの荷を再びパッキング、さらにテントを撤収して薄暗くなる中を安全地帯に向けて下降開始。
あまり標高は下げたくなかったけれどなかなかいい場所が見つからず、結局ひょうたん池まで下って暗闇の中テントを再設営した。

夕食を終え、さて、明日はどうしよう?ということになったが、ラッセル・天気予報と想定外が続いたので判断の根拠が揺らぎ、なかなか踏ん切りがつかない。そこで、明日の行動は起きた時の天気を見て決めよう、と先送りというか胡麻化しをしてシュラフに潜りこんだ。

夜半、テントを叩く雪強し。

テン場 7:30 ~長七の頭 9:00 ~ひょうたん池 10:00 ~第一階段 12:00 ~ロープフィックス14:00 ~テント設営 15:00 ~ひょうたん池テント再設営 18:00

5日 終日雪 午後少し和らぐ

5時起床。テントを叩く雪の音は相変わらず。この日動かなければピークが遠ざかることは承知の上だが、前進の強い意志に欠けた自分は外の様子を見ることなく、雪が降り続いていることだけ確認して再びシュラフに潜りこんだ。


明るくなって起き上がり、遅い朝食をとる。外を見れば、積雪は30センチほど。それなりに視界は効いて風もさして強くなく、動こうと思えば動ける天気。
昨日下手にGPVなど確認せず、朝起きたら雪だったというパターンであれば、悪天を恨みながらも躊躇せずに前進したのではないだろうか?・・・。知らぬが仏とはこういうことを言うのだろう。

さて、この先であるが、前回の経験からみて、東稜を抜けて南西尾根を下山するのは時間的に苦しいと判断。しかし、いずれにしてもフィックスロープは回収しなければならないので、明日は最後のあがきでピークのアタックに出ようということになった。

昼を過ぎて雪が弱くなったところで、腹ごなし兼明日の負荷を少しでも減らそうとラッセルに出発。
昨日つけたトレースは跡形もなく、ゼロベースでラッセルをやり直したら、昨日同様、第一階段までしっかり2時間かかってしまった。




<第一階段取り付き手前>

取り付きまで行ってフィックスを掘り起こし、テントに戻る。

夜半になって雪がやんだ。

6日 晴れ のち 曇り

6時過ぎに星がまたたくテン場を出発。山々がモルゲンロートで徐々に赤く染まる中、時折新たなトレースをつけながら昨日のラッセル跡をたどる。





<五峰>

第一階段からフィックスを登り返し、終点からロープスケール2P分ほどの深いラッセルをこなして第一階段を足元にする。


<フィックスを辿る>

が、その先も、傾斜が強いラッセルが続き、なかなかペースが上がらない。




朝は良く晴れていた空も10時を過ぎるころから雲が広がりはじめ、いつの間にかお日様の姿は見えなくなってしまった。それでも、雲底は高く、八ヶ岳、富士山、南アまで良く見渡せる。

昼近くになってようやく急傾斜帯を抜け、その先、緩やかな雪稜になったがラッセルは相変わらず。
時間的に苦しくなる中、せめてラクダのコブまではと思い頑張るが、その手前の小ピークで12時を過ぎたので、そこを今回の最高到達点とする。この地点、N原さんの高度計では2800mを超えていたそうだが、地形図からみて、2750~2800mの間ではなかったかと思われる。



<最高到達点>

大休止後下降に移る。急傾斜帯は念のため確保をして下ったので時間がかかった。
第一階段を懸垂で下り、3度目の往復になる斜面をゆっくり下って16時前にテン場着。

この日は遅くなるまで飲み食いし、最後の晩をゆっくり過ごした。

テン場 6:15 ~第一階段取り付き 7:15 ~最高到達点 12:00 ~テン場 16:00

7日 晴れ のち 雪

今日もいい天気。明神の稜線が美しい。



<明神と前穂>

今日は来た道を引き返すだけだが、すっかりトレースが消えていたので、長七ノ頭からの下りで少し迷ってしまった。



登りで苦労した最上部の藪漕ぎ帯は、下りということもあって登りほどのことはなかった。

12時過ぎに東稜を下りきって治山運搬路に到着。ここから入山時のタクシー運転手さんに連絡を入れるが、この日は沢渡まで上がらないとのことでタクシーは諦め、中ノ湯停留所16:00着の高山-松本特急バスで帰ることにする。

この日、世間は仕事始めということで、治山運搬路は明神まですっかり除雪されて土木業者の車も走っており、これ幸いと、大正池までこの道を歩いたが、けっこう起伏があってあまり歩き易い道ではなかった。

朝は晴れ渡っていた空も上高地に着く頃には雲に覆われ雪が舞い始める。この登山期間中、天候はよく変わり、あまり安定していなかった。

足の遅い自分は16:00のバスを目標に、二人のはるか後ろをのんびり歩いたが、釜トンに入ってから、先まで見えていた二人の姿が見えなくなったので、結構飛ばしているなと思ったら、なんと二人は予定のバスの一本前の15:00のバスに間に合わそうと釜トンを走って下ってぎりぎり間に合い、N原さんがそのバスで沢渡に戻って、車を釜トンまで回してくれた。そうとは知らずにのんびり歩いていた自分は、釜トン出口に着くとほどなくしてN原車がやってきて随分楽をさせてもらった。お二人ありがとう。

帰りは坂巻温泉でひと汗流す。やはりここのお湯はとても良いです。


テン場 8:39 ~東稜末端 12:15 ~上高地 13:30 ~釜トン入口 15:30

2年連続で年末年始山行のピークを逃し、特に今回は過去にトレースしたルートを登れなかったということで、今の自分が修正すべきいろいろな点に気が付いた山行でした。当然、肉体的な衰えは否定できないのですが、それ以上に、知らず知らずのうちに今回のような山登りに対する耐性が下がっていることを実感しました。自分に残された冬山登山の時間は少ないと思いますが、これを教訓に、少しでも理想に近い登山ができるように努力していきたいと思います。

O石さん、N原さんについては、今回の経験を自分なりに咀嚼してもらい、今後の山行に生かすことができれば、例えピークは逃したとはいえ本山行に参加したことが報われるものと思います。

以上


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