逝きし世の面影

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中間選挙直前のムーアの「華氏119」

2018年11月03日 | 政治
『中間選挙を前に「華氏119」を公開したマイケル・ムーア監督の焦燥』11月02日 フォーブス ジャパン

マイケル・ムーア監督は、2016年7月トランプ大統領誕生をいち早く予想していた。
本来、民主党支持者が多いミシガン州、ペンシルバニア州、オハイオ州、ウィスコンシン州の4州はアメリカの製造業の中心を担ってきたが、1970年前後から、より安い労働力を求めて生産が国外へと移され始めると、不況の波にさらされ、主要都市は空洞化。「ラストベルト(Rust Belt)」と呼ばれ打ち捨てられた製造機器を象徴している。
映画「華氏119」の監督である1954年生まれのマイケル・ムーアはラストベルトのミシンガン州の出身。地元紙のジャーナリストとして地域の盛衰を、身をもって体験してきた。
大統領選挙でも地元を歩き、人々のなかに明らかな変化が起きていることに気づく。それは、前国務長官であるヒラリー・クリントン候補よりも、実業家であり歯に衣着せぬ発言を連発するドナルド・トランプ候補のほうが、明らかに人気を博しているという現実だ。ラスト・ベルトの出身だからこそ、肌で実感できるものだった。
ブラックユーモアが炸裂する冒頭
マイケル・ムーアは、9.11事件以降のアメリカを鋭く抉ったドキュメンタリー「華氏911」を2004年に発表、カンヌ映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞したが、今回の作品名は「華氏911」と紛らわしい「華氏119」。
「華氏119」とはトランプが勝利宣言をした2016年11月9日(アメリカ大統領選投票日の翌日)を指し、当選以降の、アメリカの実相を取り上げたドキュメンタリー。
ブラックユーモアが炸裂する冒頭シーン
誰もがヒラリー・クリントンの当選を確信している映像が流された後、トランプ当選の瞬間を捉え、クリントン候補の疲弊した表情や支持者たちの落胆が、まるでコメディのように描かれていく
「どうして、こんなこと(トランプ大統領誕生)になってしまったのか」。
トランプ大統領とは何者なのか、どのような存在であるのか。
マイケル・ムーア監督は2002年発表の(全米ライフル協会会長のチャールトン・ヘストンにアポなしの取材は有名な)「ボウリング・フォー・コロンバイン」でアカデミー賞長編ドギュメンタリー賞をはじめ、カンヌ国際映画祭特別賞、ベルリン国際映画祭観客賞など世界各地の映画賞を軒並み受賞して、一躍、時の人となった。
その後ブッシュ大統領のノンフィクション「アホでマヌケなアメリカ白人」を執筆して全米ベストセラーに、「華氏911」や「シッコ」などドキュメンタリーを発表してきた。
今回の作品はお得意のアポなしの突撃取材は鳴りを潜め、そのトーンはきわめてシリアスである。
「華氏119」は、11月6日の中間選挙をにらんで9月21日からアメリカで公開されている。
米中間選挙では、下院の全435議席と上院100議席のうち33議席が改選される。同時に、各州知事選挙も行われる。大統領任期のちょうど真ん中に行われるため、事実上、トランプ政権への信任投票ともなる。
(抜粋)
11月2日 Forbes

『今度の敵はメディア──マイケル・ムーア『華氏119』の説得力』2018年11月2日(金)ニューズウィーク日本版‏ @Newsweek_JAPAN

<『華氏911』で有名な「反トランプ派」映画監督のムーアが最新作で最大の標的にしたのは、トランプでもトランプ支持者でもなかった
マイケル・ムーア監督が、吠えた。
ムーアの最新作『華氏119』(日本公開11月2日)は、中間選挙を控えた今のアメリカを知るには格好の教材だ。
ムーアのヒット作『華氏911』をもじったタイトルの本作は、2016年11月9日、ドナルド・トランプが大統領選で勝利宣言をした「あの日」から始まる。
大統領選当日、ニューヨーク・タイムズ紙は投票が締め切られる直前の時点でヒラリー・クリントンの勝率を84%と予想していた。
トランプとクリントン双方が「勝利演説」の場に選んだリベラル色(クリントン支持)の強いニューヨークでは、「トランプ大統領の誕生」という未来を本気で思い描いていた人はほぼいなかった。
ムーアのカメラは冒頭から、クリントン勝利を信じて疑わない、浮かれ気味のニューヨーカーたちの顔を次々と映し出す。
しかし日付が変わった11月9日午前2時半、「想定外」が起きる。
タイムズスクエアの電光掲示板をニューヨーカーたちが呆然と見つめていた。まさかの、トランプ勝利。
ムーアが本作のタイトルに掲げたあの日、アメリカのリベラル層は「もう一つのアメリカ」が存在していたことを知った。「差別主義者」のトランプをアメリカが大統領に選ぶはずはないと信じていた人々は、「まるで裏切られたような気分だ」と語った。自分の母国に別の顔があったと知って、人間不信に陥ったような思いだ、と。
最新作でムーアがトランプのアメリカを描くと聞いて、彼がカメラを向けるのはもう一つのアメリカ、つまり「トランプ支持者」なのだと想像していた。アメリカの主要メディアが捉えきれなかった、トランプに票を入れた人々を主役に据えた映画なのだと。
だが蓋を開けてみると、これまでの作品で「敵」を滑稽なまでにこき下ろしてきたムーアが本作でターゲットにしたのは、トランプ勝利を見抜くどころかトランプ特需に沸いていた米メディア、ひいては有権者を幻滅させてきたクリントン夫妻やバラク・オバマ前大統領、そして民主党の既存勢力だった
(抜粋)
11月2日 ニューズウィーク

何とも不思議なマイケル・ムーアの『華氏119』(日本公開11月2日)

この『華氏119』は日本では11月2日に公開されていて、ニューズウィーク紙は『クリントン支持者にしてみれば傷口に塩を塗られるような気持ちになるかもしれない。』とか、『保守寄りと言われるウォールストリート・ジャーナル紙は本作のレビュー記事で、「ジャーナリストではない」ムーアは、「映画の素材のほぼすべてを別の情報源から持ち出してきて、自分の『敵』をできる限り滑稽に見えるように編集した」と書いた。』とあり、マイケル・ムーア監督はトランプ大統領をヒトラーになぞらえている(トランプやトランプ支持者をバッシングしている)ように描いて巧妙に偽装しているが、実は本当の標的は180度逆にクリントンやオバマ、米民主党、リベラルメディアらしいのである。

『アメリカ大統領トランプの最大の特徴(他の既存の政治家との違い)とは、選挙期間中の演説と当選後の言動の二つが「同じ」だったこと』

このニューズウィーク記事ですが、普通に読めば今までのリベラルメディアの約束事である『低学歴で低所得の落ちこぼれ白人を、愚かで邪悪で気が狂ったトランプが騙してアメリカを乗っ取った』、『地球や人類や民主主義の危機だ』とリベラルメディアと有識者が二人三脚でトランプやトランプ支持者をバッシングしている風に見える。
ところが、慎重に注意して読むと180度正反対に、『今度の敵はメディア──マイケル・ムーア『華氏119』の説得力』とのタイトルそのまま (★注、良くできた偽装記事というか、中身とタイトルの二つが『同じ』だったらしいのである)

『トランプ当選を予言した2人の監督が語る、アメリカのカオスと民主主義』2018年10月31日(水)ニューズウィーク日本版‏ @Newsweek_JAPAN

――今回の映画を作ろうと思ったのは
<ムーア>トランプ政権の時代に突入して1年たった今年1月だ。人々は、トランプの頭がイカレているのではないか、精神に破綻をきたしているのではないかと心配したり、大統領になっても大したことは実行できていないと言って安心したりしていた。
私の見方は違った。トランプはイカレているというより、邪悪な天才と言ったほうがいいのではないかと思い始めていた。トランプはパフォーマンスにたけていて、その場の空気をうまく読み、人々の、とりわけリベラル派の精神をかき乱す方法をよく心得ていた。

――トランプは政治のあるがままの姿を白日の下にさらした
<ムーア>もしわれわれが現状を生き延びることができれば、変な話だが、トランプがアメリカの政治文化の仮面を剝いだことに感謝することになるだろう。人々の心に火を付けて行動に駆り立てたのも彼のおかげということになる。

――あなたは内戦を恐れているのか
<ムーア>誰もが恐れていると思う。トランプが負けなかったことで、無意識のうちにホッと胸をなで下ろしたリベラルはたくさんいたと思う。アメリカの銃の半分を所有している人口の3%の人々と対峙する必要がなくなったからだ。

――トランプに司直の手が及ぶ可能性はあるか
<ムーア>法廷での勝利(ロシアのアメリカ大統領選挙介入疑惑)なんてものがトランプ排除につながるなどつゆほども考えてはならない。(特別検察官のロバート・)ムラーはトランプを訴追できない。
(抜粋)



2匹目のドジョウ?を狙うマイケル・ムーア『今回の中間選挙でもトランプの勝利を密かに予測したらしい』

この10月31日(水)ニューズウィーク記事も『今度の敵はメディア──マイケル・ムーア『華氏119』の説得力』とのタイトルそのままだった摩訶不思議な11月2日ニューズウィークの偽装記事と同じ趣旨らしいのである。

2年前に既存のリベラル政治家やメディアなどの権威やエスタブリッシュメントの権力を口を極めて罵倒したトランプが普通のアメリカ市民から支持され大統領選で勝利した。
ところが摩訶不思議なことに大統領選から2年も経った現在でもリベラルメディアによるアメリカ大統領選のネガティブキャンペーン(ロシアのプーチンがアメリカ大統領選に介入したのでトランプが当選した)が収まらないで、延々と今も続いているのである。
見るに堪えない、あまりにも汚すぎるネガティブキャンペーン(罵倒合戦)だった2016年11月8日投票のアメリカ大統領選が終結せず、そのままの勢いで2018年11月6日の中間選挙に雪崩れ込んだ(内戦一歩手前の)『カオス状態』と見ると分かり易い。

『強引にアメリカ国内で「3匹目のドジョウ」を狙ったが、大失敗したらしい米(NATO)リベラルメディア』

欧米リベラルメディアが必死で行っている摩訶不思議なトランプ大統領バッシングですが、これは東欧とか旧ソ連諸国で相次いで起きた『カラー革命』とか、その後に北アフリカとか中東で相次いで起きた『アラブの春』と同じで、9・11後にアメリカのブッシュ政権による強制民主化の別バージョンである。
アフガニスタンやイラクなどでブッシュ大統領によるアメリカ軍による強制民主化(露骨な軍事侵攻)は短期間で大失敗したことが明らかになった。ところが巧妙なジョージ・ソロスのカラー革命とかオバマのアラブの春の方は一応成功していて、3匹目のドジョウを狙ってリベラルメディアが、何んと、アメリカ本国で行ったのがトランプ大統領バッシング。まさに『仁義なき戦い』である。
カラー革命にしろアラブの春にしろ同じ仕組みで、『選挙に不正があった』と欧米のリベラルメディアが報道することで民衆を煽って既存の政権を実力で倒すが、同じことをアメリカ本国で行っても成功する可能性は低すぎる。いくら何でも『ロシアのプーチンがトランプ大統領を当選させた』とのロシアゲートは無理筋で、マイケルムーが言うように、
『法廷での勝利(ロシアのアメリカ大統領選挙介入疑惑)なんてものがトランプ排除につながるなどつゆほども考えてはならない。(特別検察官のロバート・)ムラーはトランプを訴追できない。』
今までは連戦連勝だったリベラルメディアの狙った3匹目のドジョウは大失敗。(いくらバッシングしてもトランプのコアな支持層には逆効果、ネガティブキャンペーンでは余計に支持層の結束は高まった)そもそも筋が悪すぎて『勝てない』との目の前の明らかな現実が見えていないのである。(知識無き『知識人』との何んとも無気味な怪談のような話)



★注、
毎日新聞のコラムによると、(毎日新聞と提携するウォール・ストリート・ジャーナルの最新の世論調査では)、現時点のトランプ大統領の支持率は48%まで上昇していて、これはオバマ政権の1期目の中間選挙時(大統領選から2年後)の支持率よりも高いらしい。リベラルメディアが総力をあげて行ったのに、トランプバッシングが少しも成功していないのである。




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3 コメント

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トランプ大統領の文化大革命見抜く (ローレライ)
2018-11-03 18:48:58
トランプ大統領の文化大革命をみ抜いたムーア監督。実権派のヒラリー派とは違う視点である。文化大革命を経験した中国人民には分かる話だ。
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トランプ批判というより。。。 (Saito)
2018-11-04 20:50:58
日曜日の朝なので、寝坊し、出だしの10分程度は見逃してしまいましたが、この映画はトランプ批判というより、共和党とほとんど変わりなくなってきた民主党指導部と、追随する敬白なMSMを批判したものでした。

特に、水道民営化によるフリント市の惨状。これは水道の鉛などによる汚染を放射能汚染に置き換えれば、フクシマの現状とそっくりです。原因は悪徳CEOのような知事(共和党)による利益追求の強欲資本主義。きれいな水源から汚い川水に切り替えられた市民の間に病気が蔓延。しかし、避難しようにも、家は売れません。このジレンマも福島の現状にそっくり。

やっと連邦政府が動き、市民が期待するなか、やってきたオバマは水道水を飲むパフォーマンスで共和党の知事を支持。日本でも確かどこかの役人がプルトニウムを飲んで、放射能の安全性をアピールしたと覚えておりますが、あの方はいまもお元気なのでしょうか?少なくとも、オバマは飲む「ふり」だけでしたが。。。

しかも、その後、フリント市は米軍の訓練場として爆撃されます。空き家が多くて好都合だったとか。これを承認したのがオバマだとしたら、なんという冷血!









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結論はトランプはオバマよりマシだ。 (ローレライ)
2018-11-11 14:56:06
アンチトランプで立場を固めたムーア監督の映画の内容が、トランプはオバマよりマシだ。と言う話。
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