風知草『株価より汚染防止だ』 山田孝男毎日専門編集委員
そろそろ原発以外の話題をとり上げたらどうかと心配してくださる向きもあるが、そうもいかない。福島原発震災は収束どころか、拡大の兆しが見える。この大事と無関係に政局を展望することはできない。
京大原子炉実験所の小出裕章助教(61)といえば、いま最も注目されている反原発の論客の一人だ。
原発が専門だが、名利を求めず、原発に警鐘を鳴らし続けてきた不屈の研究者として脚光を浴びている。
その小出が16日、テレビ朝日の番組に登場し、こう発言して反響がひろがった。
『東京電力の発表を見る限り、福島原発の原子炉は、ドロドロに溶けた核燃料が、圧力鍋のような容器の底を破ってコンクリートの土台にめり込み、地下へ沈みつつある。一刻も早く周辺の土中深く壁をめぐらせて地下ダムを築き、放射性物質に汚染された地下水の海洋流出を食い止めねばならない』
さっそく政府高官に聞いてみると、いかにも地下ダムの建設を準備中だという。
ところが、さらに取材すると、東電の反対で計画が宙に浮いている実態がわかった。
原発担当の馬淵澄夫首相補佐官は小出助教と同じ危機感を抱き、地下ダム建設の発表を求めたが、東電が抵抗している。
理由は資金だ。
ダム建設に1000億円かかる。国が支払う保証はない。
公表して東電の債務増と受け取られれば株価がまた下がり、株主総会を乗り切れぬというのである。
筆者の手もとに、東電が政府に示した記者発表の対処方針と応答要領の写しがある。6月13日付で表題は『「地下バウンダリ」プレスについて』。バウンダリ(boundary)は境界壁、つまり地下ダムだ。プレスは記者発表をさしている。
対処方針は5項目。
要約すれば『馬淵補佐官ご指導の下、検討を進めているが、市場から債務超過と評価されたくないので詳細は内密に』だ。
応答要領の中でも愚答の極みは『なぜ早く着工せぬ』という質問に対するもので、ぬけぬけとこう書いている。
『地下水の流速は1日5センチメートルから10センチメートルなので、沿岸に達するまで1年以上の時間的猶予があると考えている』
記者発表は14日のはずだったが、東電の株主総会(28日)の後へ先送りされた。
福島原発の崩壊は続き、放射性物質による周辺の環境汚染が不気味に広がっている。
株価の維持と汚染防止のどちらが大切か。
その判断もつかない日本政財界の現状である。
政府当局者の一人がこう言った。『あの(太平洋)戦争でなぜ、指導部が的確、着実に作戦を遂行できなかったか。いまは分かる気がします。』
誰も信じない、東電の『収束に向けた工程表』という大本営発表が続いている。
菅直人を東条英機になぞらえる向きがある。万事に細かく部下を怒鳴るからだ。
東条はサイパン島陥落で敗戦濃厚となった1944年7月退陣。後継首相の小磯国昭が8カ月半。さらに鈴木貫太郎に代わり、原爆を二つ落とされ、天皇の聖断を仰いで戦争は終わった。
なぜ、早く停戦して戦禍の拡大を防げなかったか。
無理筋の戦局打開案が飛び交い、常識が見失われ、国の意思決定が遅れたからだ。今と似ている。
いま最も大事な課題は放射能汚染阻止だ。
空論に惑わされず、核心へ集中するリーダーシップが求められている。
(6月20日毎日新聞)
『チャイナ・シンドロームと小出裕章』
小出裕章助教は、経済産業省の安全・保安院が以前の話を大きく訂正して『実は初期の段階で炉心に水は無くメルトダウンしていた』と公式発表した時点で、今回の記事と同じ見解を発表し続けていたのです。
ところが、これを最初に報道した大手映像メディアは朝日系テレビの6月16日朝のワイドニュース番組なのですが(私の知る範囲では)これ以外には無いようです。
また活字メディアでは一部の週刊誌を除けば、この6月20日の毎日朝刊の山田孝男のコラムが唯一の例外なのである。
その毎日新聞も紙面上の記事としては『数ヶ月で冷温停止にする』との今までどうりの東電発表も『工定表』の範囲の記事しかなく、小出助教の『原発は冷却できず破滅的現状に陥っている』との恐るべき指摘への言及が『一言』も無いのです。
他の大手新聞は、原発タブーが無い筈の共産党の機関紙赤旗を含めて日本政府や東京電力などの公式報告と違いすぎる『小出裕章助教の判断』を載せているところは矢張り一つもない。
だから護憲左翼系のブログでも記事として載せているところは今までは何処にも無いとも思えるほど、極少ないのが現状です。
小出裕章助教が今まで40年間行っていた原発に関する過激すぎるとも思えるほどの超悲観的発言は今回の福島第一原発でほぼ完璧に『真実』であったことが証明されたが、事故の起きる前にはその『不都合な真実』は、考えること自体を『想定不適事象』で有るとして原発村もマスコミも無視(思考停止)していた。
今回の小出裕章助教の恐ろしい『指摘』を無視する態度は、実は福島第一原発事故以前の原発村の態度と同じである。
今起きている原発のシビア事故から何の教訓も学んでいないとしか思えず、日本では右も左も本当に情けない有様である。
小出裕章助教の福島第一原発に対する超悲観的な最終判断ですが、色々調べたのですが、東京大学工学部やその他の今までの東電や政府マスコミの報道を宣伝していた、いわゆる御用学者は誰一人も批判する者はない。
ひたすらダンマリを決め込んでいるだけ。
このメディアや御用学者の完全無視の態度は3・11以前とは同じだが、それ以降の新しい世の中では矢張り前例が無く異常である。
多分小出裕章助教の話は『事実』であり、反論出来ないのですよ。
否定できないが、東電が怖くて『事実』として認めるだけの勇気も無い。だから沈黙するしかない。
そして、とうとう大手メディアでも山田孝男のように今まで隠されていた『内幕』を暴露する人物が現れだす。
毎日の山田孝男専門編集委員によれば、『馬淵澄夫は小出助教と同じで発表を求めたが、1000億円かかるので東電が抵抗している』との不真面目極まるふざけた内容である。
これが今の東京電力のトップの本質だとすれば、組織の腐敗堕落は限界まで来ており、日本国や日本人の為には最早1日も早い東電組織の全面解体以外の道は残されていないでしょう。
20日の毎日新聞コラム記事が本当なら、今の東京電力は、下克上の増長慢で国家や国民の利益の上に自分達の権益を置いた思い上がりも甚だしい日本帝国の満州の関東軍と同じ獅子身中の蟲であり、我々日本人にとっても日本国としても多分違いが無く今回も七十数年前と同じ結果になるでしょう。
この『風知草:株価より汚染防止だ=山田孝男』の記載事実は、悲観的で驚愕すべき主張ではあるが記述内容が具体的で鮮明、確実で他との整合性も有るので『事実で有る』可能性は高いと思われます。
確かに毎日新聞では、この6月20日の山田孝男毎日専門編集委員のコラム風知草『株価より汚染防止だ』が出た翌日の21日22日と二日続けて『1000千億円の地下バウンダリ』の話が、毎日新聞の記事になっていた。
ところがですね。
山田孝男毎日専門編集委員の主張のメインの主題は、『1000億円の地下バウンダリ』でないことは誰にでも判ると思いますよ。
その話は、大事な主題の補強例として出されているだけです。
枝葉のことで、大事ではない。
山田孝男の話で何が一番問題なのか。
一番主張している事実とは何か。
>『誰も信じない、東電の『収束に向けた工程表』という大本営発表が続いている。』<
今の日本の現状を、
>『サイパン島陥落で敗戦濃厚となった1944年・・・・原爆を二つ落とされ、天皇の聖断を仰いで戦争は終わった。』<
日本帝国の崩壊に擬えて、
>『なぜ、早く停戦して戦禍の拡大を防げなかったか。』<
と嘆いているのです。
京大原子炉実験所の小出裕章助教が16日に朝日テレビで語った言葉の意味することは、1000億円の話ではない。
衝撃的で今の大本営発表と大きく違う『日本国の悲惨な負け戦』の現実なのです。
ジャック・モノーでなくとも『人間にとってどんなに不安で絶望的なことであろうとも、それが科学的で客観的な知識(現実)であるならば無条件で受け容れるべき』、なのです。
真実が不都合であれば有るほど、それしか道は残されていない事実に気が付いてほしいものですね。
客観的事実とは、歯向かえば致命的な打撃を当たえるだけの、誰にも逆らえないほどの絶対的なパワーがあり、主義主張や個人の思惑を超えていて何人も従わざるを得ないのです。
『現在の自己を超克・超越して理想に投企すべきである』のです。
少し前までは今の日本国は、1943年のミッドウエー海戦での大敗北後(無敗神話の崩壊)だと思っていたのですが、
山田孝男によると今は1944年の日本の最後の防衛ラインのサイパン島の陥落後らしいのですね。
それなら、この後には米軍のB29による日本全土の無差別絨毯爆撃の焦土化とそれに続く原爆投下とソ連軍参戦の悪夢が起きることに成るが、余り考えたくないですね。
金の為なら、何だってするでしょう。