逝きし世の面影

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大飯原発「運転差し止め」は最高裁原発訴訟特別研究会の成果

2014年05月29日 | 放射能と情報操作
『福井地裁判決に影響したのか』5月23日付け共同通信記事 【原告勝訴の大飯原発差し止め訴訟】 (資料)

『福島事故に向き合う裁判官 背景に最高裁研究会』

大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を認めなかった21日の福井地裁判決は地震対策に『構造的欠陥がある』とした。行政手続き上の適否にとどまってきたこれまでの原発訴訟判決と比べると、実質的な安全性審査に踏み込んだことが鮮明だ。
東京電力福島第1原発事故に正面から向き合おうとし始めた裁判官の姿勢が読み取れる。
今回の判決には、審理改革の必要性を指摘する意見が相次いだ最高裁の原発訴訟特別研究会の影響もうかがえる。個々の裁判官は独立して判断するが、原告敗訴が続いてきた原発訴訟の流れが変わる可能性もある。
大飯判決で樋口英明裁判長は、基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れ)を超える地震が来ない根拠はなく、それに満たない地震でも重大事故が生じうるとした上で、原子炉を冷やす機能と構造に欠陥があると述べた。さらに、関西電力が示した安全技術や設備については、楽観的な見通しに基づき『脆弱 (ぜいじゃく) 』とまで言い切った。
『原告敗訴』のレールが敷かれていたとの見方もある原発訴訟で、裁判官を後ろ向きにさせてきたのは、国策と逆行する判断をすることへのためらいと、高度で専門的な科学技術だ。
最高裁が2012年1月に開いた研究会には全国の裁判官が参加し、訴訟の問題点と対応策を記した報告書をたたき台に議論。『福島事故を踏まえ、放射能汚染の広がりや安全審査の想定事項など従来の判断枠組みを再検討する必要がある』とした意見が出た。
専門的な知見への対応策としては、学識経験を持つ第三者に深く掘り下げた解釈・分析を求める『鑑定』の活用も話題に上った。
06年に金沢地裁で、北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを認める判決を下した元裁判官の井戸謙一さんは、研究会の開催が明らかになった12年夏、共同通信の取材に応じた。『福島事故で裁判官の認識は大きく変わった。安全審査の合理性を厳密に検討しないまま電力会社勝訴の判決は書けない』。
今回の判決を予想したような意見だった。
 (共同通信2014/05/23)

『三度目の正直 vs 二度あることは三度ある』

5月21日の福井地裁判決の様な原発の運転差し止め判決(原告勝訴)は今回分を含めて3回行われている
ところが、残念ながら過去の2003年の高速増殖炉もんじゅと2006年の志賀原発の2例では、『原発は事故を起こすかもしれない』(安全とはいえない)の全部が上級審では完全に覆り『原告敗訴』(原発は安全)が最高裁で確定していた。
今回も被告の関西電力は、福井地裁の差し止め判決の裁判に出席もせず即座に抗告しているが、判決文を考慮した形跡がまったく無い。
関西電力としては、たとえ『運転差し止め』判決が出ても、今までは最高裁など上級審ではことごとく『原発は安全、安心。何の心配もない』との電力会社の言い分(安全神話)が通ったので、『今回も大丈夫だ』と踏んでいるのだろう。マスコミもこの安易な電力会社側に立った解説を行っているところが多い。
これ等のマスコミ編集部とか識者、関西電力など電力会社ですが、2011年3月11日の福島第一原発のレベル7の過酷事故を完全に失念しているのだろうか。
原子力の恐怖は次元が違い、原子炉がもしもメルトダウンして暴走した場合には『誰にも止められない』恐ろしすぎる真実が発覚する。
自衛隊も原発の運転員も(一般市民を放置して)真っ先に逃げるのである。
3年経っても少しも終息の目途さえ立たない厳しい福島第一原発の現実を、日本人の全員が目撃しているのですよ。
3年前の福島第一原発事故以前までなら原子力ムラの常識だった『日本の原発は安全、安心』との馬鹿馬鹿しい神話が平気で罷り通っていた。
しかし『安全安心。何の心配もない』との触れ込みの原子力発電所は爆発炎上。大量の放射性汚染物質を数百キロ圏に撒き散らす。
3年間も破壊された原子炉からは毎日毎日汚染物質の放出が止まらない、今の福島第一原発の状態で『安全・安心。心配ない』が通らない事実に、何故電力会社とか政府、原子力規制委員会、マスコミなど、原子力ムラのムラビトたちは気が付かないのだろうか。
目の前にある福島第一原発の悲劇(現実)を完璧に無視しているのですから、何とも不思議だ。

『大飯原発3、4号機(原発)運転差し止め訴訟の意味とは』

『歴史は繰り返す。最初は悲劇として2回目は喜劇として』とのマルクスの言葉が福島第一原発事故後の日本にはぴったりと当て嵌まる。
日本の『悲惨な喜劇』であるが、69年前にイタリアが降服しドイツが崩壊しても『神州不敗』挙国一致の大本営発表で『日本が勝っている』との嘘八百で、孤立無援、世界中を相手に日本が戦争を継続した(実質的に袋叩きにあった)悲惨で阿呆臭い歴史の再来である。
電力会社とか日本政府ですが、今後本土決戦での一億玉砕を目論んでいるのだろか。
しかし69年ぶり2回目の無条件降伏(8月15日の玉音放送)の時間は間近に迫っていて、目の前にある日本の破滅が避けれない。
憲法9条がある平和国家の我が日本国ですが、『命令拒否は死刑か懲役300年』の外国とは大違いで、自衛隊や原発作業員に『原発事故を止めるために死んでくれ』とは言えないのである。
『もしも原発が暴走したら』→『誰にも止められない』。
原発がメルトダウンしたら『止める』どころか、運転員とか自衛隊とか『もしもの時の最後の切り札』が、→『真っ先に逃亡する』ので基本的に役に立たない。
原発の専門家とか政府や自衛隊など責任者がまるで役に立たないでくの坊以下であったことが、3年前の福島第一原発事故で証明されてしまった意味は大きい。
日本の原子力発電とは、丸っきり一般乗客には『安全のためにその場を動かないように』と放送して船長が真っ先に逃げた韓国の旅客船セウォル号の国家版なのである。

『5月21日の「差し止め判決」は司法(最高裁の原発訴訟特別研究会)の意思』

『運転差し止め』ではなく、現実問題としてそもそも『原発は運転出来ない』のは明らかである。
しかも今回の福井地裁の画期的な判決ですが、一票の格差(選挙定数の不公平)による違憲判決と同じで『裁判官個人の判断』ではない可能性が高い。
『原発は危ない』判決の初回の2003年も2回目の2006年も、上級審で『原発は安全』に引っくり返ったのは、当時は『原発安全神話』が健在で猛威をふるっていたのですから余りにも当然な話である。
ところが現在では『放射能は安全安心。心配ない』があるにははあるが、福島第一原発事故以前の『原発は安全安心、心配ない』は誰一人も主張していない。
この『放射能は安全安心。心配ない』ですが、話は逆で『放射能は恐ろしい』のでパニックを恐れて、口先で誤魔化しているだけ。
意味が無いまじない程度。
そもそも今回の福井地裁の『原発差し止め』(原発は安全ではない)判決は、最高裁の原発訴訟特別研究会(2012年1月)の総意である可能性が高いのですから、尚更今後原発が日本国内で動くことは有り得ない。
今の政府による再稼動の動きですが、『原発を動かす』ことが本当の目的ではなくて、福島県の深刻すぎる放射能被害を誤魔化す煙幕(目くらましとか猫騙し)の可能性の方が高いと思われる。
今野党やマスコミが大騒ぎしている集団自衛権も同じで、間違った結論に誘導する赤いニシン(red herring)であり、日本政府やマスコミや野党や識者は無意味に馬鹿騒ぎしているだけ。
本当は絶望的な放射能汚染を隠したいのである。

『安倍晋三の集団自衛権騒動の馬鹿馬鹿しさ』

5月27のBLOGOSの『「侵略された領土を軍事力で取り戻す」ということ』(志村建世2014年05月27日)によると、
5月27日つけ朝日新聞には、アメリカのシンクタンクが『10年後のアジアを考える』との趣旨でアジア11カ国の外交専門家らを対象に行ったアンケート調査(朝日新聞後援)の結果では、『侵略された領土を軍事力で取り戻すことに賛成?』の問いで日本は81%が賛成だったとか。
余りの馬鹿馬鹿しさに口があんぐり。
今この、『侵略された領土』に当て嵌まるのは、安倍晋三を筆頭に能天気な右翼が全員勘違いしているらしい日本が実効支配している尖閣諸島のことではない。
日本が平穏に支配している尖閣では、『何もしない現状維持』が日本にとっては一番良い。日本の国益に叶うのです。
今の日本政府(外務省)ですが、剣呑にも『韓国(ロシア)に不法に占拠されている竹島(北方領土)』と公式に言っているのである。(普通の国はこの様な言葉遣いはしない)
日本政府(外務省)が正しいなら、今回の日本国が軍事力で奪い返す対象は、自働的に『竹島』や『北方領土』になってしまうのです。

『猫騙しにしても阿呆臭すぎる』

日本の自衛隊ですが、韓国軍よりも空海の能力では上回っているので、竹島奪還は可能でしょうが、日韓軍事衝突後に日本国が得るもの(竹島)よりも、失うものの方が遥かに大きく。
元超大国のロシア相手なら、もしも自衛隊が局地戦で勝っても最悪なら核の報復があり日本が滅びます。
『侵略された領土を軍事力で取り戻す』ですが、丸っきりの軍事オタクの机上の空論ですね。
それにしても8割が賛成とは、アジア11カ国の外交専門家と言うのも困った話である。
同じ質問を欧州の専門家に聞けばまったく逆の数字になるでしょう。
独仏両国は69年前の第二次世界大戦の終結までは、10年間に1度以上の頻度で、『侵略された領土を軍事力で取り戻す』を繰り返していた。
鉄鉱とか石炭の産地で九州の半分ほどの面積のアルザス・ロレーヌを奪い合って戦争していのですが、勝った方は満足しても負けた方は収まらない。
結果的には世界大戦を二回も引き起こし国家が弱体化たことを反省して、少しは賢くなったのですが、アジア諸国はまだまだ経験不足で戦争の真実を知らないのでしょう。
何度も繰り返しになるが、安倍晋三の集団自衛権は左翼が言うような軍事目的では無い。
そもそも『安全が担保されていない』、『危ないから』と逃げる自衛隊では戦争は最初から100%無理。絵に描いた餅程度なのである。
福島第一原発の漫画『美味しんぼ』の鼻血騒動と全く同じインチキな『風評被害』対策なのである。

『小規模で短時間のドライベントでも5キロ圏内の住民退避』

5月28日原子力規制委員会は、福島第一原発の事故の約100分の1の量の放射性セシウムが5時間放出された場合(ベント作業のことか?)、原発から5キロ圏内では全住民の避難を行う。
5キロ圏外側の住民については、コンクリートの建物内に2日間、屋内退避することで、被ばく線量をほぼ半分に抑えることができると試算している。
規制委員会は、自治体が進めている避難計画の策定に試算結果を役立としているが、そもそも『福島第一原発の事故の約100分の1』とは事故対策としては無責任すぎて意味不明。
本来なら現実の福島第一原発の放出量を基準とするか、安全率を考慮して数倍にして算定するのが普通なのに、逆に100分の1にまで小さく計算するとは冗談にしても酷すぎて絶句するしかない。
半分でも値切りすぎである。
何故放射能の量を100分の1に値切るのか。原子力規制委員会は不真面目すぎる。100分の1の想定では、本物の原発の過酷事故が発生した時には何の気休めにもならない。
100分の1の量でも原発から半径5キロ退避なら、福島第一原発事故の10分の1の規模でも50キロ圏からの退避が必要である。
福井地裁の判決文では原発から250キロ圏内の住民が放射能の影響を受けるとされている。
レベル7のメルトダウン事故発生では、人口が過密な日本では事実上住民の退避計画の作成が無理なので、3年前の管直人や枝野幸男のように『安全安心。心配ない』『放射能は直ぐには影響しない』で誤魔化す算段なのである。

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4 コメント

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まだ騙せると思っている? (おばば)
2014-05-28 12:44:21
「安全基準」という言葉でだまそうと思っていたようですが、ここに来て東電や政府の出鱈目が国民に明らかになりましたね。事故が起これば、すべてが立ち行かなくなるとこが解って、誰も再稼働に反対。それでもシール投票すると、少数ですが再稼働賛成もいるのですよ!〈今の政府による再稼動の動きですが、『原発を動かす』ことが本当の目的ではなくて、福島県の深刻すぎる放射能被害を誤魔化す煙幕(目くらましとか猫騙し)の可能性の方が高い。〉とのご意見ですが、すでに貯めた燃料棒の処理費用や廃炉費用などを計算したら、原発再稼働で当面儲けねばとの思惑があるのではないでしょうか?全く「後は野となれ山となれ」政府です。
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そして、どさくさに紛れ (紙さま)
2014-05-28 17:33:58
「県外最終処分」を明記=福島の汚染土、関係法改正へ-石原環境相

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201405/2014052700363&g=soc
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トラバありがとうございます。 (JUNSKY)
2014-05-29 23:45:08
こちらのこの記事は、珍しく肯定的な内容ですね。

私も福井地裁判決は高く評価しております。

関西電力側の抗弁に悉く反論し、抗弁が意味のないものであることを憲法にも照らして断罪しています。

極めて積極的な判決で、この記事にもある最高裁の研究会により、従来の呪縛から解き放された裁判官の肉声が聞こえてくるようです。

当方のブログには、判決要旨へのリンクも張っています。
どうぞ御覧ください!

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事実を認める勇気 (宗純)
2014-06-01 11:55:18
皆さんコメント有難う御座います。

福井地裁判決ですが、もしも最高裁の研究会の成果であるとすると、以前の2回の差し止め判決とは意味がまったく違ってくる。
司法ですが国家権力そのものであり、暴力装置として軍隊とか警察や監獄とセットなのですね。原子力は国策なのですから、今までの2回の地裁段階での差し止め判決は、当然上級審で覆ります。
ところが、福島第一原発の損害を少しでも考慮すれば、
目の前の事実を認める勇気さえあれば、差し止め判決以外の選択肢は無いのです。
上級審でも同じで、これは確定するでしょう。
目の前の事実を認める勇気が少しも無いのが、福島県とか政府。
中間貯蔵施設と言う名の、永久保管施設であることは誰もが知っているのです。
30年どころか10万年以上の時間が必要なのです。
30年ですが、これは今の政治家が、『責任を取らない』との意味の時間的な設定でしょう。
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