逝きし世の面影

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コア・コンクリート反応

2011年06月23日 | 放射能と情報操作

6月23日テレビ朝日の朝の情報番組で 京大原子炉実験所の小出裕章助教は、現在の原発事故が『東京電力福島原発の原子炉は溶けた核燃料が圧力容器の底を破ってコンクリートの土台にめり込み、地下へ沈みつつある。』とする根拠として、原発敷地外で見つかっている放射性物質が通常原子炉内から直接出たなら酸性で水には溶け難いが、科学的な特性が違っている。アルカリ性で水に溶ける性質から原子炉建屋の下のコンクリートと反応していることを示しているだろうと語っている。
小出裕章助教は、事故から2ヵ月後の5月12日に東京電力が『実は原子炉内に水はなく、2ヶ月前に既にメルトダウンしていた』と発表して以来メルトスルー(炉心貫通)を、6月6日に通産省安全・保安院が1~3号機の全てがメルトダウンしていて漏洩した放射能汚染物質の量も当初発表の倍以上に嵩上げした時からは一貫して高温の熔けた100トンの燃料棒(2800度で溶解)は1400度の溶解温度の鉄製の圧力容器や格納容器で止めることは難しい。
東電や政府の発表した『冷温停止は不可能』で、溶解した核燃料は建屋の下のコンクリート床に落ち込むが、その後はじわじわコンクリートを溶かしつつ数メートルから10メートル程度沈み込んでいる状態だろうと主張している。

『漏れ続ける汚染水』

斑目原子力安全委員会委員長は、『(汚染水が漏れ続けているのは)間違いありません。(その量は)わかりません。』と、今の日本国の原発事故の責任者の技術系トップとしては、何とも無責任極まる困った発言をしている。
小出裕章氏はこれに対して、
『斑目氏は科学者で、その判断しか無いと思う。私も一緒。わかりませんというのは斑目さんは正直だし、私もわからない。漏れているのは確実。できるだけ早く手を打たなくてはいけないのに、あふれるまでまだ何日もあると言っている。』
『今11万トンの汚染水が溜まっている。何日後かにあふれると騒がれているが、もう既に溢れている。一時期ピットから流れ出ていたが、目に見える場所で漏れていただけのこと。実はトレンチやタービン建家地下などのコンクリートの構造物から漏れ続けていることに気がつかなければならない。』
『タンカーで汚染水を柏崎刈羽原発に運び、処理する意外にない。(東京電力の柏崎刈羽原発には日本で一番大きな汚染水処理施設があり現在稼動している。)今の装置も即席でつくろうとしていますが、そんな余裕はない。』

『なるべく触れたく無い』

溶解した超高温の核燃料とコンクリートが接触して『コア・コンクリート反応が起きている』との断定報道は小出氏本人の発言以外には、何処にもない。(示唆する内容は田辺文也や武田邦彦がしている)
事実であれば他に優先する『大事』で有るにもかかわらず、『小出発言』が事実で有るかどうかを検証する報道姿勢がメディア側に、まったく見られないのが何とも不思議である。
『小出発言』が事実であれば政府や東電の工程表は真っ赤な嘘か絵に描いた餅であるし、事実で無いなら流言飛語に近い不安を煽る行為である。
これは、正誤何れにしろ今一番大事な最優先の話題であり本来なら見過ごしに出来ない種類の話なのです。
ところが今は事実上、小出助教の一方的な言いっ放し状態なのですね。
誰も彼もが小出助教の語る現在の原発の、『収拾不能の致命的な破壊状態』の真相を指摘した話は、『今はしたくない』と思っているかのようです。

『コア・コンクリート反応と日本のマスコミ』

ここに来て、マスコミのニュースで小出裕章助教の福島第一原発に対する見解は、『費用がかるから難色示した』というような感じで報道され出す。
毎日新聞では、この6月20日の山田孝男毎日専門編集委員のコラム風知草『株価より汚染防止だ』が出た翌日の21日22日と二日続けて『1000千億円の地下バウンダリ』の話が、毎日新聞の記事になっていた。
ところがですね。何とも困ったことですが山田孝男毎日専門編集委員の主張のメインの主題は、『1000億円の地下バウンダリ』でないことは誰にでも判ると思います。
その話は、大事な主題(炉心を破壊して建屋地下にめり込みつつある溶解した高温の核燃料)を補強する一例として出されているだけです。
枝葉のことで、大事ではない。
山田孝男の話で何が一番問題なのか。
今のメディアの報道姿勢には『一番強く主張している「事実』とは何か』との考えが根本的に欠落している。
『誰も信じない、東電の『収束に向けた工程表』という大本営発表が続いている。』今の日本の現状を、『サイパン島陥落で敗戦濃厚となった1944年・・・・原爆を二つ落とされ、天皇の聖断を仰いで戦争は終わった。』日本帝国の崩壊に擬えて、『なぜ、早く停戦して戦禍の拡大を防げなかったか。』と,嘆いているのです。
京大原子炉実験所の小出裕章助教が16日に朝日テレビで語った言葉の意味することは、1000億円の話ではない。
今の大本営発表と大きく違う『日本国の悲惨な負け戦』の衝撃的で絶望の『現状認識』なのです。
『人間にとってどんなに不安で絶望的なことであろうとも、それが科学的で客観的な知識(現実)であるならば無条件で受け容れるべき』だと言っているのです。
『目の前の真実』が、自分にとって不都合であれば有るほど、『認める』ことしか道は残されていない事実に気が付いてほしい。
『客観的事実』とは、『いや違う。絶対に認めない』として歯向かえば致命的な打撃を当たえるだけの、誰にも逆らえないほどの絶対的なパワーがあり、主義主張や個人の思惑を超えていて、何人も従わざるを得ないのです。
ジャック・モノーでなくとも『現在の自己を超克・超越して理想に投企すべきである』のです。

『原発安全神話と保安院。皇軍無敗神話と大本営』

少し前までは、今の日本国は1943年のミッドウエー海戦での連合艦隊の大敗北後(無敗神話の崩壊)だと思っていたのですが山田孝男によると、今は翌年の1944年日本の最後の防衛ラインのサイパン島の陥落後らしいのです。
サイパン陥落なら最悪で、この後の戦局は目も当てられない一方的な展開となる。
米軍のB29による無差別絨毯爆撃が始まり日本全土が焦土化して硫黄島や沖縄の地獄の地上戦、それに続く原爆投下とソ連軍参戦の悪夢が起きることに成るが、これは幾らなんでも余り考えたくないですね。

ところが、ここに来て66年以上前とそっくりの現象が起きているから何とも不吉である。
日本国の経産省海江田大臣や保安院は、・・・もう、何と言うか。
検査停止原発の再稼働にあたり国が示した原発水素爆発防止は『ドリルで穴あけ』とは濡れ雑巾と竹やりで米軍機に立ち向かおうとした旧日本軍とそっくり同じ発想である。
共産党の小池晃政策委員長は原子炉建屋の水素爆発防止策のひとつが『ドリルで建屋に穴をあける』だと書いたらツイッターを読んだみんなに冗談だと思われたので、『ドリルで穴あけ」はジョークではありません』と再度ツイッターしなければならなくなる有様。
『ドリルの火花で爆発を誘発するのでは』、『爆発するかもしれない建物の天井に人を派遣するなんて危険すぎる』といった声がネット上で上がる。
これについて保安院は『あくまで、水素排気口の設置等の対応を行う前の一時的な措置』で、『水素の発生・充満前』にドリル作業をするので『火花による爆発は心配いりません』と説明。
水素が『たまった後にドリル作業をする場合は』との質問には、『それは危険です。爆発の可能性があります。』と答えている。
当たり前だろうが。如何考えても危ない。
保安院は、すぐには復旧できないことが判明した段階でドリル作業に着手するので水素がたまるまでには作業を終える。実験では、事務所出発から80分以内に作業が終わっていると説明した。
(こんな忙しい時に経産省保安院は、何と。現実に阿呆臭い実験をしていたとは。絶句)
福島第1原発事故の例から『猶予がある』と計算している。
小池政策委員長は、『はじめは冗談かと思った』、保安院発表の写真付きドリル作業の資料を見た際は、『竹やりで「鬼畜米英」に立ち向かう旧日本軍を連想して、思わず目まいがしました』と話す。
政府保安院の悲惨な実体を知った日本人の多くが、避けれない『敗北』(無条件降伏)を予感して、ガックリ脱力していることだけは間違いないだろう。




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2 コメント

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ありえない「ドリルで穴あけ」 (透明)
2011-06-25 21:33:32
可燃性ガスを扱う仕事をする人であれば充満したガスを放出するための作業の中で火花を散らす可能性のあるものは一番気をつけるところです。
それをガスが充満するまえに穴をあけるなどと言っても無臭で、有るのか無いのかわからない水素ガスではほとんどロシアンルーレット状態ですね。
桐生悠々が生きていたなら「ドリルで穴あけ原発を嗤う」なんていうのを書いてくれたんじゃないかとおもいます。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000535/files/4621_15669.html
水素爆発は想定外なんて言ってしまう保安院ですからこの程度ですね。
「漏れてしまったらどうするかという設計上の手当てはされていない」と認めた
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110408-OYT1T01005.htm?from=top
しかし謎なのは2号機にあったブローアウトパネルが1、3号機になかったのか?という事ですね。
http://twitpic.com/4wyrck
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5~6号機では実際に実行している (宗純)
2011-06-26 14:21:45
透明さん、コメント有難う御座います。

実はこの原発建屋ビルの天井にドリルで穴あけはの話は、1~4号機が水素爆発した後で、慌てふためいて残っていた5~6号機の天井に穴をあけて水素を逃がしているのですね。
しかし、それが安全対策とは空いた口がふさがらない。
以前に書いた記事で同じ爆発でも1号機と3号機では爆発形態に大きな違いがあり数百メートルのキノコ雲の3号機の理由とは何か。?としていたのですが、ビルの天井部分の厚みは15センチ、壁は1メートル。
ビル壁が1メートルの以前の報道で、天井部分も同じだと勘違いしたのですが、15センチの厚みしかないならビルが健在であれば必ず3号機の爆発形態になる。
最大規模だった3号機ではなくて、爆風が低く横に広がった1号機の曝発の方が異常だったのです。
政府や東電は隠して絶対に明らかにしたく無いだろうが、1号機は地震の直撃で、原子炉だけでなく建屋ビルも致命的な損傷を受けていたのですよ。
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