逝きし世の面影

政治、経済、社会、宗教などを脈絡無く語る

『ムペンバ効果』科学に未検証はあっても、未解明は無い

2008年07月25日 | 疑似科学・ニセ疑似科学批判
現代科学では、未検証は沢山ありますが未解明は有りません。
色々な現象に対して、色々な雑多な学説(仮説)が立てられる。
今も昔も科学に、未検証はあっても、(正しいか、間違っているかはともかく)未解明(仮説、推論、学説が何もない状態)は無いんですよ。

昔、ビタミン欠乏症の原因が判らない時期に、色々な学説(仮説)が立てられた。
特に日本ではビタミンB1の欠乏でかかる脚気は結核と並んで二大国民病とまで言われて、多くの命が失われた。
日露戦争時の戦死者より脚気による病死者の方が多かったらしい。
この時に脚気の原因として、栄養不良、栄養障害説、や日本独特の風土病説,や、細菌による感染症、病原菌説や遺伝による疾患と色々と考えられていたが、陸軍軍医総監だった森林太郎(森鴎外)は海軍が取っていた栄養不良説ではなく病原菌説を採用して、多くの犠牲者を出した。
陸軍の脚気患者は約25万人が発症し、病死者は約2万7800人とされる。
因みに日露戦争の総戦死者は約4万7000人である。
科学では、現在でも判らない事(未検証な事柄)は沢山有りますが、其の判らない事柄に対して、多くの科学者が実に多くの学説(仮説)が立て(解明。?解説)られているのが普通です。




『神秘主義かオカルト的なニューサイエンス』

NHKが放送で何度も喋っていた、『現代科学では未解明?な、ムペンバ効果』なんてものは、超常現象や超能力と同義語です。
オカルトや宗教の奇跡のような話で、責任あるマスコミ(NHK)が科学に対して軽々しく表現(主張)する様な言葉ではない。
しかもあれはお笑いでもバラエティイー番組でもなく、NHKの科学番組なんですよ。

実験は大事だと思いますが、ムペンバ効果とは関係ない、マイナス20度で熱湯を相手にかけるインチキパフォーマンスは科学知識の少ない人では、誰でも吃驚します。
観客を驚かす効き目は抜群です。
あれは悪質ですね。極初歩的な手品で使う目くらましの手法です。
奇術師の手法でやってもいない事柄『ムペンバ効果』を、実際に起こった事柄だと視聴者(観客)に信じ込ませた。
これは殆んど犯罪ですね。
あれではNHKはペテンの『確信犯』だと非難されても致し方ないでしょう。

しかもNHKは何度も「科学的に解明できない不思議」としてムペンバ効果を紹介していた。
この言葉「科学的に解明できない不思議」は、反科学の奨励で、科学に対する嘲笑に聞こえるのは私だけではあるまい。



『不思議な科学の世界』

確かに普通では問題にされない微妙な条件の差で、非常に大きな変化が起こるのが科学の世界です。
何らかの条件が重なれば、再現性は低くとも、温度の高かった容器の水の方が先に凍る現象は有りうる話です。
しかし、『全く同一条件下』での、温度の高い方から凍るでは、物理的に説明不能(似非科学)だと言われても仕方が無いでしょう。
(誰か一人でも、科学的な成功例があるのか不思議)




『過冷却水とムペンバ効果』

ただし下記の記事では氷点下でも凍らない不思議な現象『過冷却』を、ムベンバ効果が起こる現象と見られる一つの原因では無いかとして紹介しています。
この記事では『過冷却が起きてから凍るまでの時間のばらつきが大きいことが原因で、ムペンバ効果と称する現象が起きてしまうことがある』と指摘しています
http://www.cml-office.org/archive/121683743476.html
有る一定の条件下では過冷却水が出来易いので『温度の高かった水が凍る』時に『温度の低かった水か過冷却水として凍らない』状態が存在するとしています。
過冷却水は、特定の条件下で静かに冷やせば0度以下でも凍らず水として存在する不思議な現象ですが、過冷却水は衝撃などで瞬間的に凍ります。
この現象をムペンバ効果と書いて有りますが、確かに再現は難しいでしょうね。
『確率的にしか起きない上に、繰り返し精密な実験が必要なので、演示実験の材料としては不適と考える。』
普通の家庭の冷蔵庫での再現性が極めて低そうです。
『水の冷却過程の研究には役だっても、家庭での実用性は無いに等しいわけで、水の相転移や過冷却状態に興味のある研究者や技術者以外の一般の人に、ためしてガッテンのような番組で紹介するような話ではなかったのではないか』
NHKの放送でのムペンバ効果は家庭用冷蔵庫での氷を作る裏技の話で、この記事の実験室で過冷却水を作るムペンバ効果の話は、科学実験としても別物です。
名前が一緒ですが全く何の関係も無い、同姓同名の別人の話の様な、まったく別の話をしていますね。

(当記事は何ら『学術的なムペンバ効果』に言及したものではなく、あくまでもメディアリテラシーの問題としてNHK放送の範囲で問題提起しています。
学術的な言葉の正確さの問題点については、下記の記事をお読み下さい。
”書くことは考えること ”
『誤解されたので書いておく 』at 2008/07/28 01:39:35
http://www.cml-office.org/archive/121717529480.html)



『NHK放送は反科学か』

NHK放送は、似非科学では無く反科学では無いかと考えています。
NHKの主張する『現代科学では未解明?な、ムペンバ効果』ですが、事実は逆で
ムペンバ効果?が実際に存在するとして、何人かの学者が解明?しています。

例えば、再現性の低い東京都水道局の滝川客員教授の場合には似非科学の可能性が高いが、滝川説は高温水は対流によって冷えるので、冷水の熱伝道よりも効率よく早く冷えるそうです。(残念ながら再現性が確認されていない)
Mpemba Effectは再現も検証も、今まで誰も(滝川氏以外)出来ていない様です。
流石に東京は知事も教育委員も水道局のホームページも面白いですね。(三重苦のヘレン・ケラーの様にも見える)

素人レベルの熱力学では説明できないけれど,最新の熱流体力学など最新の理論と解析方法でアプローチされるべき事象。との解説もある。

一般的科学雑誌のNew Scientistのコラムなども有りますね。
1977年論文として現在も閲覧可能です。ムペンバ効果は未解明どころか色々な仮説が有り、解明だけなら幾等でも有りそうです。
唯NHKにとっては残念な事に『ムペンバ効果』の存在自体が解明されていません。




『未確認なムペンバ効果』

『現代科学では未解明?な、ムペンバ効果』ではなく『現代科学では存在が確認されていないムペンバ効果』が正しい。

ムペンバ効果の再現性は非常に低いのではないかと考えています。
どんな科学者のグループが再現実験をやっても同じ結果が出なければ、ひとつの物理現象とは言えません。

だからNHKの放送の『簡単に氷が出来る裏技』の表現はペテン、嘘、誇大広告、の類いですね。
ムペンバ効果そのものが、無い可能性も十番に考えられます。(何かが無い事を証明する事は非常に難しい)

NHKがムペンバ効果の再現に成功していれば、必ず放送したはずです。
何しろ「ためして。ガッテン」ですから試さないで放送した例は今までは有りませんでした。
放送では最期の結果(結氷)を写さず唐突に番組が終わっています。
ところが実際には放送されていない熱湯が凍る場面(氷)を、なんとも不思議な事に有りもしない場面をみんなは見ているんですよ。
イリュージョンですね。
自分のブログに其の事を書いたら『私は見た、嘘を書くな』との趣旨のコメントが山のように来る。
実際に見たのなら、ご自分の冷蔵庫で再現して、成功したなら、もう一度 コメント下さいと返事しても誰一人成功していない(実験していない?)ようです。
科学では信じていても信じなくとも結果は同じとなります
しかし、今回は全く同じ画面を見ても、信じている人には見え、疑って見ていた者には見えない。

科学番組としてはお粗末ですが、情報操作、印象操作としては大変面白い話です。


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15 コメント

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Unknown (鱗舟玉貝)
2008-07-25 21:03:11
「「現代科学では存在が確認されていないムペンパ効果」が正しい」とのこと。なるほど、その通りなのでしょう。私の理解は誤っていたようです。申し訳ありませんでした。この説明の方が正しく説明されていることは理解できそうです。ありがとうございました。
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まだ実験してませんが、 (カーク)
2008-07-25 22:01:55
>『現代科学では未解明?な、ムペンバ効果』ではなく『現代科学では存在が確認されていないムペンバ効果』が正しい。

そのとおりだと思います。

さて、家庭用の冷凍室での実験では次のことが懸念されます。
まず、水と熱湯を同時に入れると
熱湯の影響で冷凍室が温まる。NHKのホームページでは、2度上昇したとあります。
しかし、2度上昇するということは、水の温度にも影響を与えるわけですから、これは実験にならないといえるでしょう。
家庭用の冷凍室では実験は不可能でしょう、多分ですが。
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鱗舟玉貝さん (ブログ主)
2008-07-26 08:27:44
コメント有難うございます。
あの9日の番組は不思議でしたね。何時もとは全く違っていた。
これまでの放送と正反対の行動ですね。
あの番組は実生活にある科学の不思議を再現して懇切丁寧に解明、解説するので定評があったのに今回はゼロです。
何しろ『現代科学では未解明な、ムペンバ効果』ですから。
実はあの番組で私が一番不愉快だったのは、氷が出来たか出来なかったかではなく、NHKが一切の科学的説明を拒否したことです。
実はムペンバ効果について色々な学説(仮説)が、正しいか、間違っているかはともかく今までに出されていますが、放送では一切其のことには一言も触れていません。
『未解明』の一言で押し通した。
オカルトや奇術や超能力や宗教の奇跡の話では、原因が判らなくとも結果だけ成功すれば成功と呼べるが、科学での論文や研究では解明、解説無しでは誰からも信用されません。
今回の放送は、科学番組ではなく、神秘的な超常現象番組に近い番組内容でした。

確かに、日本国中の人が熱湯を冷凍庫に入れている姿は、海外から見れば神秘的な超常現象と見えるでしょうね。

鱗舟玉貝さん。
タイトルも名前も無い不真面目コメントは削除する原則を作りたいと思いますので、次回のコメント投稿時には、面倒でしょうが忘れずタイトルの記入を御願します。
何卒良好なブログ環境の維持の為、御協力のほど,御願い致します。

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カークさん (ブログ主)
2008-07-26 08:36:51
コメント有難うございます。
このムペンバ効果の話は、家庭用冷蔵庫の熱感知システムが、冷蔵庫としての使用例では全く予定外の熱湯を入れることで誤作動するオーバーシュートではないかとの説が一番有力ですね。
しかし再現性は限りなく低いらしいですよ。
成功した人は、 だから非常に幸運に恵まれたのでしょううね、宝くじが当たった様なものでしょうか。?

不思議な事に、これに関連してブログ記事を書いている科学系の人の方が、一般人より信用している人は多い傾向があるようです。(ただしみんな再現には失敗している)
原因は一般科学雑誌の載っていた1977年論文がネタらしいが、科学者が権威に弱いでは笑えませんね。情け無い話です。

機械に悪いうえに電力の浪費するムペンバ効果の実験を全国で大勢が試しているはずです。
省エネなどと言われずとも、予め荒熱を取って冷やしてから冷凍庫に入れるくらいは今までの日本人なら誰でもやっていた。
NHKも今回、省エネと真逆な事をしてくれたものですね
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Unknown (なない)
2008-07-27 18:04:54
未解明はないってことを証明できますか?
証明もしないで未解明はないと言い切っている。
非科学的で根拠に乏しすぎる。
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未解明の意味は (ブログ主)
2008-07-28 09:31:47
正しいか、間違っているかはともかく、学説が何もない状態を指して『未解明』と呼んでいます。

何かの科学的な現象が有ったとします。
科学者が認める『ある特定の物理的な現象』に対して、其の当事者の科学者さんが、何も考えなかった状態が『未解明』でしょうね。
だから其の状態は無いんですよ。
科学者が何も考えられなかったとしたら、そもそも最初の『ある特定の物理的現象』も、当然考えられ無いはずです。
未解明が有るのは超能力とか超常現象とかには当てはまりますが科学には当てはまりません。
其れに、あるものは証明は可能ですが、無い事を証明することは難しい。
無いモノの証明はほとんど不可能に近い難物ですよ。
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いちおう実験しましたが (×第二迷信)
2008-07-28 20:10:52
 「お湯を凍らせる実験」の第一弾の結果を、
TBで入れておきました。

 まあ、「100mと150mのハンデ付きの競争で、ゴール前10mでは並んでいた」という事実は確認できました。
 「カップの底」だけでいえば、「お湯」のほうが先に凍っています。 

 内容について、ご質問などあれば、コメント欄に。
(さいきんは大丈夫なようですが、もし、楽天に拒否されたら、gooの別ブログも作ったので、そちらに)

 実験内容などに関しての質問、確認などについては、「なぜ私が答える義務があるのだ?」などという反応はしませんので。
 (ただし、根拠も示さず「ウソだ…」と言われたら、現場にいなかった皆さんに「実況」をお見せすることは不可能ですので、不毛の論議として削除します。)
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ご苦労さまでした (ブログ主)
2008-07-28 20:28:29
大変お手数をかけたようです。
この話は冷水より温度の高い熱湯は冷えるのが早いので、温度差(例えば100度と20度と五倍)程には時間差が大きくなく、零度になった時点では可也接近しているので、冷蔵庫の冷却装置の位置とか、冷却能力の偏在の方が影響が大きくなる事が原因らしいですよ。
専門家によると、測定は色々な測定が出来ない家庭では無理とのこと。

『確率的にしか起きない上に、繰り返し精密な実験が必要なので、演示実験の材料としては不適と考える。また、水の冷却過程の研究には役だっても、家庭での実用性は無いに等しいわけで、水の相転移や過冷却状態に興味のある研究者や技術者以外の一般の人に、ためしてガッテンのような番組で紹介するような話ではなかったのではないか。前提条件があまりにも入り組んでいる現象は、テレビで紹介する材料には不向きだろう。』

だから厳密に測定できない家庭用冷蔵庫では、再現は不可能に近いらしいです。お疲れ様でした。
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再現はできなかった (実験しました)
2008-07-29 16:33:54
あ・る・研・究・論・文・によると、
70グラムの水で実験したところ、
20℃の場合は凍り始めるまでに100分かかるのに対し、100℃の場合は30分で凍り始めたとされています---NHK HP

出所も明示せず、論文でいってるから合点しろと?
これならためしてガッテンでなく論文でガッテンだ。

または大学教授がいってるからガッテンか?

お湯から凍らしたら三倍も早く凍るは絶対ウソ。
なぜここだけ論文からの引用になるのか?

■実際にやってみました。

ポリプロピレンの製氷皿の四隅にお湯、水を交互に入れて2ドアの冷凍庫で40分後に取り出してできている氷の量を調べた。4回試行。結果は右奥、左奥、右前、左前の順で早く凍り、お湯であるか水であるかよりも場所による差の方が大きかった。youtubeにアップされてる実験は単にたまたまお湯を冷える場所に置いたからではないか?まさかNHKの十回やったという実験は置き場所は変えていないということはないですよね???
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コメント有難う御座います (ブログ主)
2008-07-29 17:40:32
NHKはあの番組で『氷を作る裏技』として熱湯を冷蔵庫に入れる事を推奨しています。
誰でもが無条件で成功するから裏技のはずで、成功する人や、失敗する人や結果が判らない人などが、色々と出て来るようでは話に成りません。

このような不正確な番組内容に対してNHK似抗議して反省してもらいたいものです。
疑問点を列挙して2回、メールを送ったのですが着信のメールが返って来ただけで返答も釈明も何もなし。
沢山のメールが来ればNHKも無視する訳にはいかなくなります。
実験結果をメールで送るべきですね。
或いはNHK視聴者コールセンター(0570-066-066 )に知らせるべきです。
視聴者コールセンターに電話して、NHKためしてガッテンの番組責任者(プロデューサー)の田付氏に直に40分程話をして確認していますが、この人はデスクの人で科学的な知識や実践は殆んど知らないようです。
『科学的に未解明なムペンバ効果』では反科学か超能力の話と同程度である事ぐらいは理解してくれましたが、間違いを認めるまでには至っていません。
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