医者に向く人と向かない人っていると思う。 外科なんて色々な症状の患者を診るわけだけど、中には爆発に巻き込まれて顔とか身体が異形になった人まで気持ち悪がらずに治さなければならない。 普通はぐちゃぐちゃになって原型をとどめていないものを見たら卒倒する。 その根底には異形になっても『私たちと同じ人間である』という強い精神があるのかもしれない。 それはそうなのだが、実際異形の者を見ると同じ人間とは思えなくなってしまうものだ。 何か別の気持ち悪い生き物のようなゾンビとか怪物に思う人の方が圧倒的に多いはずだ。 ただ、もし自分がその患者と同じ立場にあったとしたら、どうだろうか? 早く治してほしい!と心から願うはずだ。 そう願う中で、周りの人たちが自分のことを気持ち悪がって避けていたら悲しくなる。 人間の原型をとどめていなくても『人間』なのだ。 だから治してあげなければならない。 元の状態には完全には戻らなくても、人並みに生活ができる状態まで治してあげなければならないのだ。 そういう考えが医者としての心の基盤になっているのかもしれない。