牡丹の葉の先端が葉の輪郭と縫糸でつながり交差している。時にその先端部分が小さく丸く輪に表現し、一見風にそよぐ葉の風情を醸し出している。この表現は、これまで眺めてきた牡丹花の酷似(C-①、C-②)と同じように、北四国の牡丹古刺繍に見ることができる。衣裳側と太鼓台側では、どちらかと言えば、作品の厚みが肉厚とならない地歌舞伎衣裳の牡丹刺繍によく見られている。
ただ、この葉の先端の<つながり>や<小さな輪>は、他地方の地歌舞伎の古衣裳写真を注意深く眺めると、やはり同様な表現が確認できる。そのため、北四国の牡丹古刺繍の特徴とは言えないかも知れない。従って、ここでは北四国の衣裳側と太鼓台側に見られる牡丹刺繍の「葉の先端」部分の酷似に特化して眺めることとしたい。北四国の牡丹古刺繍に見られる葉先の特徴と、他地方の牡丹の葉先との関連を論及するには、余りにも比較する作品例が少ないため、現時点で<葉先の特徴を、四国側の特徴である>と論じて判断することは、残念ながら未だ適切ではないと思う。
<衣裳側>
・祇園座(獅子牡丹の打掛)‥牡丹の酷似(C-②)より再掲。多くの葉先に見られる。
・祇園座(獅子牡丹の俎帯)‥牡丹の酷似(C-②)より再掲
・祇園座(九尾の狐と雷震の四天)‥牡丹の酷似(C-②)より再掲。中央・右部分の葉先
・中山(立涌文の小忌衣)‥牡丹の酷似(C-①)より再掲。背中・中央部分の葉の先端
<太鼓台側>
・大長(獅噛と牡丹の下幕=明治初期の新居浜から伝来)‥牡丹の酷似(C-②)より再掲
・中西(獅子牡丹の幕)‥牡丹の酷似(C-②)より再掲
<他地方衣裳の葉先>
・群馬県富士見村・横室地区歌舞伎衣裳‥『特別展 江戸デザインの爆発 歌舞伎衣裳』‥牡丹の酷似(C-②)より再掲。裾部分の葉先に見られる。
・兵庫県 個人蔵の衣裳‥『特別展 江戸デザインの爆発 歌舞伎衣裳』図版28‥牡丹の酷似(C-①)より。
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(終)