朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第110回 太宰治「お伽草紙」前編
2013年03月22日
美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに100万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第110回は太宰治の「お伽草紙」だ。
◇
こんにちは、今回ご紹介するお話は誰もが知っている昔話をシニカルな視点で描く「太宰版再話文学」。太宰治さんの「お伽草紙」です。
鎌倉時代以降に発展した挿絵入りのお話の一群を「御伽草子(おとぎぞうし)」と呼びますが、この作品はそういった昔話の中から特に有名な4作品を題材に取り上げて再話したもので、1945年に発表されました。しかし、さすがは太宰治さんと言うべきか普通の再話にはとどまらず、おとぎ話に現実的な視点を取り入れたシュールな世界観を構築しています。
太平洋戦争末期、空襲警報が毎日のように鳴っていた時代。作家の「父」は、避難した防空壕で子供をあやすために昔話を語って聞かせる一方、その内容に新しい視点を付加した別の物語を考えていました。その内容とは……。
「瘤取り」
有名な民話「こぶとりじいさん」を題材としたお話です。原作は片側の頬に大きなコブをもった、良いおじいさんと欲張りなおじいさんの物語で、「瘤(こぶ)取り」でもその大筋は変わっていないのですが、良いおじいさんのコブに対する思い入れと、欲張りなおじいさんが原作では特に悪いことをした様子がないという点にフォーカスすることで、一味違う読後感を生み出しています。
「浦島さん」
以前当コーナーでもご紹介させていただいた「浦島太郎」を題材としたお話です。
旧家の長男である浦島さんは、風流を愛し品行方正を是としていましたが、半面、妹からは「冒険心がない」と批判されていました。そんな人ですから、数日前に助けた亀が竜宮城に招待したいと言っても、当然簡単に背中に乗ったりするようなことはありません。亀の口の悪さも手伝って、丁々発止のやり取りが展開されることになるのですが……。
次回は残りの2作品「カチカチ山」と「舌切雀」についてお話をしたいと思いますので、よろしくお願いしますね。
※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。