トムとジェリーのアニメですかね?ねこが夢中になってみています。
むかし、ネコ好きで、家にネコをたくさん飼っている資料画家の家に絵の受け取りに行ったことがあります。先生は、もうずいぶん前に亡くなってしまいましたが、私が30代の頃です。
奥さんに逃げられ、子どもにも去られ、一人暮らしをしている60過ぎの男の先生でした。資料画は、ものすごく丁寧で緻密な絵を描く先生でしたが、自分が納得しないとなかなか渡してくれないのです。
だれがみても、もう十分素晴らしい完成した絵でも、自分が納得しないとダメなのです。
その先生のお宅に、原稿渡しが迫っている絵をなんとしても、渡してもらおうと、いさんで伺いました。
世渡りの不器用な先生だったので、家はおんぼろでした。そして、ネコがたくさん家にいました。しかも、去勢、避妊をしていないので、オスが家の中のあちこちに尿をひっかけるので、家の中はすざましい匂いがしていて、伺って、家に入ったのですが、鼻が曲がりそうで、すぐにでも逃げ出したいくらいでした。
しかし、なんとしても今日、このときに絵を渡してもらおうと、必死に、絵をほめ、素晴らしい!などと叫び、はやく絵をもらって、家を後にしたいとあせりました。
必死に説得したかいがあって、なんとか無事に絵をもらって帰ることができましたが、あのオスネコのスプレーの匂いが鼻についてしまい、しばらくは、思い出すたびに、「おえっ!」となるくらいでした。
オスは発情期、縄張に、すごい匂いのする尿をひっかけて回ります。ほかのオスへの縄張宣言の警告とメスへのアピールのためです。
話には聞いていましたが、こんなにくさいものかと驚いた記憶が残っています。その先生は亡くなりましたが、人のよい、職人肌で頑固な、今時珍しい先生でした。図鑑でその先生の絵を見ると、素晴らしい絵だなとおもうと同時に、オスネコのスプレーの匂いがよみがえってきます。
いまは、オスネコの去勢は、子猫の時からするのが当たり前みたいですから、あのすごい匂いを嗅いだことのある人は、きわめて少なくなっているでしょうね。とにかく一度嗅いだら忘れられません。