きのふのことなり
笠間焼職人の福田実氏を尋ねる 氏は第五代義右門にして窯元「製陶ふくだ」の主人なり
世界最大の陶花瓶をつくりたる笠間焼第一の職人なりて当年七十四叟なるも矍鑠(かくしゃく)として意気高し
氏の「職人の心得」の中に次なるものあり
傷物や不完全なるものに愛着といとをしむ情をもつべし
それらが矛盾の追究 これ忘るることなく
己が識見の低きと技術の稚拙なるを恥じ入るを常とせよ
遡ること二十二年 つくばにて科学万国博覧会の開催を控へし頃のこととふ
いばらきパビリオンにて笠間焼を紹介せんがため福田氏のろくろを回す姿の撮影のときとふ
失敗作を割りて欠片の飛び散る画像を撮りたしとディレクターの言ふに福田氏 キッとディレクターを見やれば 吾 失敗作を割りたるためしなし 吾 作家に非ず 職人にあり 失敗作こそ己の戒めとして大切にすべきものを 割るとは如何! さなる場面の撮影を欲せば他を当たるべしと一喝するとふ
ディレクターのこれを聞きて福田氏の心意気に打たれれば 回すろくろが中から福田氏の顔の現れきたる画像に変更したるとふ
これが顛末を語る福田氏の眼より涙の流るるを見れば職人の意気ひしひしと予が胸に伝はりきたりていよいよ深く感じ入りたり
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/cd/d0357a2611c3ee2ed025df185099dc2b.jpg)
*画像:「製陶ふくだ」にて 2007.2.22 12:40撮影
上=世界最大の花瓶 手前10.7メートル 奥9.5メートル
下=5.4~10.7メートルの花瓶群の前に立つ第五代義右門福田実氏
*製陶ふくだは約230年前に信楽から来て開窯した園部善六の窯を初代義右門が寛政8年(1796)に買い受けたことに始まるとふ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/b5/826d345867bc87d52b89fbbeaf0913c4.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/30/c14ba8ade2eb6eede17b711572e36001.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/18/32a38331127c643647d1747c98b3ce8e.jpg)