ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

バーン・アフター・リーディング

2010年03月05日 | ネタバレ批評篇
前作『ノー・カントリー』が非常に重たい作品だったせいか、今回は軽いノリが魅力のコメディ・タッチな群像劇に仕上がっている。しかしそこはコーエン兄弟、そんじょそこらのおバカ映画とはちょいと違って、監視社会(あるいはCIAそのもの)を痛烈に皮肉ったテーマにそってきちんと作られているため、巷でいわれているほどの駄作とはなっていない。

冒頭クレジットに名を連ねている俳優陣の面子がこれまた凄い。ブラピ、フランシス・マクドーマンド、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、ティルダ・スウィントン・・・・・・。日本ではイマイチぱっとしなかった本作も、本国アメリカではコーエン兄弟作品中最高の興行成績をあげているという。アカデミー賞効果とこの豪華な俳優陣のラインナップがおそらくものを言ったのだろう。

CIA分析官を首になったアル中男オズボーン・コックス(マルコヴィッチ)が落としたDVDをネタにゆすりをかけるスポーツ・インストラクターの筋肉ばかチャド(ブラピ)と美容整形マニアのリンダ・リッキ(マクドマンド)。オズボーンの友人で元財務省の役人ハリー(クルーニー)は、(既婚者でありながら)オズボーンの妻ケイティ(ティルダ)や、出会い系サイトで知り合った女たち(含むリンダ)と密会を繰り返しているSEX依存症だ。

この後物語は勘違いが勘違いを生んで悲劇的な方向へと2転3転していくのだが、その事件の顛末をこっそり監視して冷静に上司に報告しているCIA職員の視点に注目すると、この映画をさらに楽しむことができるだろう。映画冒頭と最後に映し出されるグーグル・アースのような人工衛星映像は、大量の無駄金をつっこんで全知全能の神と同じ視点から愚かな人間社会を無言で見おろしているのである。

自分が誰かに監視されていると思い込み次第に常軌を逸っしていく人々と、大量の人員と金を投入して浮気調査と何ら変らない監視を続ける無能なCIAマンたち。キラ星のごとくスター軍団をわざわざ集めてみせたのも、「こんなに高額のギャラを払って、こんなにくだらない映画(監視社会)をつくっちゃいました」という、ユダヤ人監督らしい不毛な監視社会に対する自虐的なメッセージなのかもしれない。

バーン・アフター・リーディング
監督 ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン(2008年)
〔オススメ度 

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