ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ダイアナの選択

2009年07月28日 | ネタバレなし批評篇
コロンバイン高校銃乱射事件がモチーフになっているガス・バン・サント監督『エレファント』の後日談とでもいえばよいのだろうか。ライフルを構えた男子高校生に「どちらを殺せばいい?」と女子トイレで詰め寄られるダイアナ(エヴァン・レイチェル・ウッド)とモーリーン(エヴァ・アムリ)。当然どちらかが死に、どちらかが生き残ることになるのだが、決定的なシーンを見せないまま、映画は突如事件から15年後のダイアナの結婚生活を切り替わる。

ドンデン返し系心理サスペンスと聞いていたので、映画の結末はほとんどネタバレ状態で見ていたのだが、それでも十分に楽しめる質の高い作品だ。多くの方が指摘しているとおり、意外な結末にいたる伏線の張り方が非常に緻密かつ用意周到なので、(凡百のミステリーとはちがって)衝撃のラストシーンを見せられた後でもむしろ納得感があるのだ。映画は、ダイアナとモーリーンの高校生活と、哲学科教授の夫と娘がいるダイアナの結婚生活が交互に繰り返される構成になっている。

どちらかといえば貧乳な高校時代のダイアナが巨乳熟女(ユマ・サーマン)に大変身?していたり、学校では問題児だったダイアナが15年後に美術の先生におさまっている設定もどことなく不自然。インテリでやさしそうな夫とかわいらしい娘に恵まれたダイアナの結婚生活は、そう、あまりにも理想的で完璧すぎるのである。まるで誰かが頭の中で想像したようなわざとらしさを観客が感じるように、監督のヴァディム・パールマンが注意深くカメラを回している様子がうかがえる。

フローズン・ヨーグルトを食べながら文句をたれる娘のエマや、「雨の中の散歩が好き」とモーリーンに語り、他人の家にしのびこんではプールに飛び込むダイアナ。夫がダイアナにプレゼントする赤い華のペンダントまでもが伏線となり、ラストの衝撃的な結末へと集束していくシナリオは近年まれにみる完成度の高さ。「すべての可能性を集めれば○○の自分さえ創造することが可能」という教授の言葉にインスパイアされたダイアナがみた○○○○は、あまりにも残酷で美しい。

ダイアナの選択
監督 ヴァディム・パールマン(2007年)
〔オススメ度 

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