ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

オッペンハイマー 上 原爆の父と呼ばれた男の栄光と悲劇

2023年09月07日 | 映画評じゃないけど篇


「お前、わざわざ台湾行って映画見てきたんだろ、どうだった?」
「弾丸ツアーだったんで....疲れてたのかなぁ」
「まさか」
「爆沈💤す」
「バッカじゃねえの、もったいねぇ」
「まあ一種のイベントっつうか。彼女は喜んでたんでよしとします」
「彼女なんて言ってた」
「なんか打ちのめされたって言ってましたよ。飛行機の中でもずっと寝てたし」
「へぇー、あのノーランだけにどうせ難解なんだろ?」
「多分...でも先輩、確かピューリッツァー賞受賞の原作本は読んだんですよね」
「それがさぁ読みにくいったらありゃしねぇの。なんか翻訳も下手くそでさ、内容がすぅっと頭に入ってこないんよ」
「やっぱ爆沈💤すか?」
「お前と一緒にすな、ちゃんと読了したよ」
「オッピーって天才だったんでしょ」
「理系と文系の両刀使いやね」
「大谷みたいっすね」
「上手いね、その通りだよ。資本論3巻を3日で読みきったらしいよ、バケモンだろ」
「SLAMDUNKならいけそうっすけどね」
「漫画と一緒ににすな。でもスポーツ全般と物理の実験、計算は苦手だったらしいよ」
「俺と逆っすね」
「お前、暗算だけは得意だよな、割勘の時の計算とか」
「へへ、彼女はそれが気に入らないらしいんですけどね」
「女にはけっこうモテたらしいよ、オッピーは。外に愛人とか複数つくったりして」
「へぇー、だから奥さん役じゃない女優さんが脱いでたのかぁ」
「お前そういうシーンだけは逃さないよね」
「へへ、でも実際女を口説く暇なんかあったんすかね」
「軍に監視されながらの原爆開発だろ。たまに息ぬきでもしなきゃやってられなかったんじゃね」
「監視?」
「アメリカ共産党を通じてソ連に情報をながしてるって疑惑がオッピーにずっとかけられてたんだよ」
「あの裁判シーンって?」
「原子力保安委員会の公聴会だろ。オッピーを吊し上げるための」
「で、結局オッピーはアカだったんすか?」
「本の中ではシロってことになってたよ。あと日本に落とすことも軍から知らされてなかったらしい」
「本当っすかね」
「まあ伝記ものだからな、オッピーの名誉に傷がつくような記述はさけたんだろうね。表現が時折すごくまどろっこしくなるんだよ、オッピーは悪くないって」
「彼女いわく、日本のどこに落とすかって会議がけっこう下衆だったとか」
「それなんだけど原作本にはそれらしい記述がないんだよ。ノーランがあえて突っ込んだとしか思えない」
「なぜなんすかね」
「俺はまだ映画見てないからわからんけど、軍部のいやらしさを誇張したかったんじゃないかな。原爆開発の苦労も知らず漁夫の利だけ得ようとする」
「ふーん。映画監督と原爆開発者の姿をどこかで重ねてたんすかね」
「お前時々鋭いこと言うよな。劇中のナレーションも語り部は常に“わたし”だったんだろ」
「多分...」
「お前、もしかして映画開始と同時に💤かよ」
「我世界の破壊神となれり」
「トリニティ実験のハイライトシーンはちゃんと見てたんだ」
「後で彼女に聞いたんすよ」
「ユダヤ教の聖典タルムードからじゃなく、ヒンズー経の経典ギーダからの引用ってとこがミソなんだよ」
「?」
「オッピーの中にユダヤ人コンプレックスがあったんだよ、多分かなり強く」
「オッピーってジューだったんすか?」
「両親ともにね。黒色の縮れ毛をパイプハットで隠してただろ」
「確かに」
「だから余計アメリカのために何か役に立つことをしたかったじゃないかな。でもオッピーが愛した以上にアメリカはオッピーを愛してくれなかった。アインシュタインの請け売りだけどな」
「スキャンダルでスターダムから引きずり下ろすの大好きっすからね、アメリカって」
「そんなアメリカ競争社会に馴染もうとするんだけど、時折博愛的なユダヤ人富裕層の特質が顔をのぞかせる複雑な人間性だったらしいよ」
「アインシュタインとは真逆ですね」
「内心アメリカの政治家なんてナチスとおんなじと思っていたからな、博士は。相対性と相補性の違いかな」
「なんすか、それ」
「アインシュタインがボーアの量子論を頑なに否定していたことは知ってるよな。すべての粒子がお互い補完しあって宇宙は成り立っている。アインシュタインの相対性に対抗してしてボーアはそれを“相補性理論”と名付けたのさ」
「???」
「一国だけが原爆を独占保有するのではなく、すべての情報を開示し合って核を世界全体で管理していくことを提唱したのは、ボーアが最初で、ボーアを神と崇めるオッピーはその具体策を示そうとしたんだ」
「でもなんとなく、上手くいかなそうな気がしますね、その管理方法」
「北朝鮮がいい例だろ。その相互の不信感が軍拡に繋がることをオッピーちゃんと預言していたよ」
「もしかしたらオッピーは新たな人類の救世主になろうとしたんじゃ?」
「名前の頭に付いている“J”ってもしかしたら......」
(二人揃って)
「Jesus!!!」

オッペンハイマー 上
原爆の父と呼ばれた男の栄光と悲劇
著者 カイ・バード、
   マーティン・シャーウィン
   (PHP研究所)
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