ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ほえる犬は噛まない

2021年07月20日 | ネタバレなし批評篇


私はボン・ジュノの映画があまり好きではない、むしろ嫌いである。しかしその才能が確かなことを、本長編デビュー作で確認することができるだろう。残酷シーンをまんま写し出すホラー気質と卓越したコメディ・センスが同居した作風は、(世代は違うものの)ランティモスに近いのではないか。

まだ無名だった頃の(はるにちょっと似ている)ペ・ドゥナを準主役に起用、正義のヒロインに憧れるドンくさいマンション管理室の事務員ヒョンナムを演じさせている。身重の奥さんに頭が上がらない犬嫌い大学準教授ユンジュのピンチを救うというシナリオだ。

一つ分かりにくいのが、『フランダースの犬』とつけられた原題の意図である。ルール上マンション内で飼ってはいけないことになっている子犬をつごう3匹登場させているが、パトラッシュらしき大型犬がまったく見当たらないのである。

ヒントはペドゥナ演じるヒョンナムが着ていた黄色のパーカー。ここ一番で気合が入るとフードを頭に被るその姿、なんとなく(ジャミラ星人ではなく)あのパトラッシュに見えてきませんか?アンゲロプロスを思わせる黄色い雨合羽隊を、まさかあんなシーンに使うとは。ボン・ジュノの演出力が並み大抵ではない証拠だろう。

結局TVワイドショーのインタビューもバッサリカットされ、只のプー太郎にもどってしまったヒョンナム。そのヒョンナム=パトラッシュをネロのように道連れにしたおかげでめでたく教授になれたユンジュの“カーテン”コールにこたえたはいいものの、山道で遭難してしまうドジなパトラッシュなのであった。

ほえる犬は噛まない
監督 ボン・ジュノ(2000年)
[オススメ度 ]




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