ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ハリーとトント

2009年02月11日 | ネタバレなし批評篇
元大学教授のハリー(アート・カーニー)は老猫トントとNYのアパートで一人暮らし。区画整理のため立ち退きを要求されたハリーがトントと共に子供たちの家を転々とするロード・ムービーだ。老人が一人旅をする映画には、『ストレイト・ストーリー』や『世界最速のインディアン』などなぜか秀作が多いが、都会の隅に追いやられる老人の悲哀を描いた本作品は、主人公を熱演したアート・カーニーが見事アカデミー主演男優賞に輝いている。

NY、シカゴ、ラスベガス、ロス・アンゼルス。トントの気紛れな行動のおかげで、猫の肩をもつハリーじいさんは行く先々でトラブルを起こす。しかし、このハリーがそんじょそこらの暴走老人と異なるのは、自分が「気難しい堅物老人」であることをちゃんと自覚し、子供たちとの同居を自ら固辞している謙虚さにこそあるのだろう。猫のことではムキになるものの、それ以外はまるで無欲なこの老人に対して、観客はつい好意の目で見つめてしまうのだ。

NYで孤独死した身寄りのない友人の遺体を確認するハリー。意を決して会いに行った昔の恋人はすでにボケていてハリーを覚えていない。そして、最愛の相棒との悲しい別れ・・・。友人を失い続け、子供たちとも同居できない孤独な老人は、カルフォルニアの砂浜の美しい夕焼を見ながら何を思ったのだろう。妻や子供たち、そして愛猫トントと共有した幸せな時間の思い出は、老い先長くないこの老人に残された人生を満たしてくれるのだろうか。おそらく聞いたところで、自分のような若造には理解できるはずもない。

ハリーとトント
監督 ポール・マザースキー(1974年)
〔オススメ度 

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