ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

SWALLOW/スワロウ

2022年06月22日 | ネタバレなし批評篇

へイリー・ベネットって確か、本作品で製作総指揮にクレジットされているジョー・ライトの奥さんだよね。ホラー映画ってふれこみで映画を見たけど、これホラーじゃなくて、ちゃんとしたフェミニズム・ムービー。今まで割と保守的な映画を撮り続けてきたライトだけに、この映画のメガフォンをとることに抵抗があったのかも。なんてたって女性の妊娠中絶を促している作品だから。

資産家のボンボンに見そめられ、販売員をしていた普通の女の子が大豪邸の奥様に。会社経営のイロハを息子に伝えることしか頭にない仕事中毒の舅と、赤ちゃんがお腹にできてあれこれと干渉してくる姑に囲まれ、嫁さんのストレスはいよいよMAXに。出身を小バカにするような言い方にカチンときても、グっと我慢して怒りを飲み込んでいるうちに、正真正銘の異食症に罹患してしまうである。

初めはビー玉、お次は📌....当然飲み込んだ異物は下の穴から排泄されるわけで、💩と🩸にそまった異物を(キレイに洗ってから)、まるで戦利品のように化粧台の上に並べていく嫁さん。本当は嫌で嫌でたまらないけれどぐっと我慢してswallowしたのよ、私えらいでしょ。ってな心境なのだこの嫁さん。この後嫁さんの異常行動に気づいた家族が、嫁さんに心理カウンセリングを強制、そこで嫁さんの出生にまつわるある秘密が暴露されるのだ。

ラストシーンの伏線にもなっているこの衝撃の真実。〈私は生まれて来るべき人間ではなかったのかもしれない〉玉の輿婚妻を完璧に演じていた嫁さんだったが、妊娠発覚とともにその疑念がいよいよ頭をもたげてくるのである。そして脱走。結局この嫁さんが求めていたのは、(宗教的理由には左右されない)実の両親たちによる〈ここにいてもいいよ〉という心からの承認だったのである。

そしてこの嫁さん、実の父から許しをもらったにも関わらず、この後とんでも行動にでるのである。それはつまり、のぞまれない子供への愛を拒否した女性の決意とみるべきなのだろうか。それとも、出産ロボットとしての役割からの女性の解放と考えるべきなのか。いずれにしても、赤ちゃんを生み育てることが女性の幸せと単純に考える時代は、とっくの昔に終わっているのかもしれない。

SWALLOW/スワロウ
監督 カルロ・ミラベラ・デイヴィス(2019年)
オススメ度[




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