文中で中国のことをシナという侮蔑語で呼んでいる著者はかなりの反中派である。別の著作物では中国共産党によってNHKが支配されているという警鐘もならしており、筆者が根っからのシナ嫌いであることは間違いないが、鳩山政権がすりよろうとしている中国がなぜ危険な存在なのかについての言及は、本書の中では残念ながらふれられていない。かといって自民党の親米路線を支持しているわけでもなく、むしろ日本は(中国と敵対する)東南アジア、台湾、モンゴル、チベットなどと仲良くしろと説く(資源もあるでよ)。
経済政策に関しては、ちまたにあふれる悲観論とは真逆の楽観論に座しており、サブプライム・ローン問題で負った傷はアメリカほど深くないので日本経済はしばらく安泰、むしろこの時期に政府紙幣をバンバン発行して景気のテコ入れをはかるべきという、反マネタリズム的な処方箋をすすめているようだ。アメリカ衰退の根本原因が製造業の弱体化にあることを問題視して、金融などという虚業ではなくコツコツと農業などの一次産業にいそしむ人が将来有望らしい。世界金融恐慌を的中させた著者のいうことだから信じてやってみるのも一興かと思われる(俺はヤダ)。
全体的に、物知り老人から世間知らずの若者に向けられた応援歌のような文章になっていて、かつて藤井昇の本名で過激な暴露本を次々と発表していた頃の舌鋒の鋭さは感じられない。アメリカも中国も信じられず悟りの境地に達した?著者が、旧海軍旗をバックに袴姿で「どーんとこい!」とポーズをとっている表紙などを見ると、ああこの人も結局こっちの方に行っちゃたんだ、という感想を持たざるをえない。詩や俳句もたしなむという著者の時代錯誤的な本書の演出が、どうも気になってしょうがないのである(何かあぶなくない?)。
あっと驚くような目新しいことも書かれていない本書の中で、他人が書いた各種暴露本を筆者なりに批評した巻末付録に、個人的にはもっとも興味を引かれた。不景気をいいことにいたずらに恐怖心を煽るこれらの本を書いた人物がどういう立場にいる人なのかが簡単に解説されているので、GWにでも買って読んでみようかと思っている読者にとっては、下手なアマゾンの素人レヴューよりよっぽど参考になるだろう。ちなみにフード・コンサルタントとの対談コーナーは、もうちっとましな相手を用意できなかったのかと出版社をなじりたくなるほど話がかみ合っていないので、読み飛ばしてもOKだ(松本和彦って誰?)。
どんと来い!大恐慌
著者 藤井 厳喜(ジョルダンブックス)
〔オススメ度 〕
経済政策に関しては、ちまたにあふれる悲観論とは真逆の楽観論に座しており、サブプライム・ローン問題で負った傷はアメリカほど深くないので日本経済はしばらく安泰、むしろこの時期に政府紙幣をバンバン発行して景気のテコ入れをはかるべきという、反マネタリズム的な処方箋をすすめているようだ。アメリカ衰退の根本原因が製造業の弱体化にあることを問題視して、金融などという虚業ではなくコツコツと農業などの一次産業にいそしむ人が将来有望らしい。世界金融恐慌を的中させた著者のいうことだから信じてやってみるのも一興かと思われる(俺はヤダ)。
全体的に、物知り老人から世間知らずの若者に向けられた応援歌のような文章になっていて、かつて藤井昇の本名で過激な暴露本を次々と発表していた頃の舌鋒の鋭さは感じられない。アメリカも中国も信じられず悟りの境地に達した?著者が、旧海軍旗をバックに袴姿で「どーんとこい!」とポーズをとっている表紙などを見ると、ああこの人も結局こっちの方に行っちゃたんだ、という感想を持たざるをえない。詩や俳句もたしなむという著者の時代錯誤的な本書の演出が、どうも気になってしょうがないのである(何かあぶなくない?)。
あっと驚くような目新しいことも書かれていない本書の中で、他人が書いた各種暴露本を筆者なりに批評した巻末付録に、個人的にはもっとも興味を引かれた。不景気をいいことにいたずらに恐怖心を煽るこれらの本を書いた人物がどういう立場にいる人なのかが簡単に解説されているので、GWにでも買って読んでみようかと思っている読者にとっては、下手なアマゾンの素人レヴューよりよっぽど参考になるだろう。ちなみにフード・コンサルタントとの対談コーナーは、もうちっとましな相手を用意できなかったのかと出版社をなじりたくなるほど話がかみ合っていないので、読み飛ばしてもOKだ(松本和彦って誰?)。
どんと来い!大恐慌
著者 藤井 厳喜(ジョルダンブックス)
〔オススメ度 〕