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動物には不安がない、なぜなら自分がいずれ死ななければならない存在であることを認識していないから、という人がいる。トロフィー・ハンティングといわれる、管理されたアフリカ某所の狩猟ファームで、🐃や🦓、🦒さんたちを金を払ってハンティングする金持ちファミリーや老人夫婦、そのファームを管理するオーナー夫婦へのインタビューを見ていると、“死”に対する理解が意外と深いことが伺える。
こういう映画を作ると動物愛護者たちから必ず発せられるであろう短絡的なクレームも既に折り込み済で、本作の狙いは別にあることが最後に語られるのである。ライフルで仕留めた🦓や🦒の腹をさいてわざわざ剥製にしなくても、なんて思ったりもしたのだが、その肉はファームで働いている黒人スタッフたちの食料にもちゃんとなっているのである。🐖や🐮の死肉を毎日のように食らってる我々と何ら変わらないではないか、ザイドルはそう問いかけるのだ。
「人間が増えすぎたこと、これが一番の問題なのだ」パラダイス3部作の中でもふれられていたこの人口過剰問題が、地球温暖化やコロナ禍の原因だと指摘する科学者は多い。人権侵害に抵触するこの問題にふれることは長年タブー視されてきたものの、動物虐待の仮面をかぶったエコロジストのオーナーに「地球上から人間がいなくなれば、世界はもっと良くなるだろう」とコメントさせ、地球が抱えている最重要課題に我々の目を向けさせようとしているのである。
話はちょっと横道にそれるのだが、ウクライナ侵攻以前のロシア経済は割りと上手くいっていて、侵攻しなければならないやむにやまれぬ事情が別にあったわけではなかったらしいのである。プーチンの権力欲じゃねえの、と簡単にかたずけることも可能だが、この状況は第一次大戦時のドイツととても良く似ているそうなのだ。それを指摘したフランス人人口学者エマニュエル・トッド曰く、人口が増えすぎると人は無意識のうちに死を求める、というのだ。
黒人スタッフに腹を裂かれ首をちょんぎられた🦒さんの死顔が、意外なほど安らかに見えたのは気のせいだろうか。おそらくザイドルは本作を通じて、生に固執するばかりでなく、不可避である死を受け入れる選択肢を我々ホモサピエンスに示そうとしたのではないだろうか。世界人口100億を突破しそうなくらい人であふれかえったこの地球で、手っ取り早く人口を減らせる最も効率的な手段=戦争という選択肢を。
サファリ
監督 ウルリッヒ・ザイドル(2016年)
オススメ度[
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