ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ジュリア

2008年03月11日 | 誰も逆らえない巨匠篇
フレッド・ジンネマンは一貫して体制に反旗を翻す人物を描き続けた稀有な映画監督だ。この『ジュリア』という作品も、反体制運動家として有名なヴァネッサ・レッドグレープを起用し、ホロコーストからユダヤ人を救う活動家ジュリアを演じさせ、見事オスカー助演女優賞に導いた。そのジュリアと幼馴染である脚本家リリアン・ヘルマンを演じたジェーン・フォンダは、はっきりいって肩に力が入りすぎで一人空回りしている場面が多かったように思える。

なれないタバコを吸いまくり、創作に行き詰ると金切り声をあげてヒステリーを起こすリリアン。ジュリアとの同性愛を指摘した嫌味な知人を、手加減なしのビンタで張り倒す。虚実が一致するヴァネッサはともかく、こんなキレ系の役に社会派女優のジェーンを押し込んだキャスティングがとても?である。反ナチス運動のための資金を調達するくだりを評価する人が多いが、裏返せばそのシークエンス以外は見所に欠けるということだろう。

現実に取り込まれ、あるいは現実とある程度妥協しながら食いつないでいる我々にとって、ジンネマンのメッセージはあまりにも清冽すぎて口にはあいにくい。頭かくして尻かくさず。ヴァネッサにしてもジンネマンにしても、反体制派のわりにはしっかりとオスカーを受け取っている事実は見逃せない。どんなに明鏡止水なお題目を掲げたところで、欲のある人間がやることにほころびはかくせない。

監督フレッド・ジンネマン(1977年)
〔オススメ度 

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